来世の君へ__。

暁義経。

第1話 推しの謎の死

 2020年5月25日、今日は推しの声優神田拓也(かんだたくや)の誕生日だ。私の誕生日ではないのに、小さいホールケーキを買って帰った。家にいる時間が一番至福の時間だ。誰だってそうだろう。しかし私は、他の人と違う家に帰れば推しに会えるからだ。そう、私はオタクだ。でも、それは私しか知らない。会社では、バリバリ働くキャリアウーマンなのだ。外見からはかけ離れた、本当の私_。


 本当の私は、誰も知らない。知られたくない。知ったら、後悔するから。だから、私は、自分を隠す。


「ただいま。」


誰もいない家に、挨拶をした。帰ってくるはずもないのに。私は、簡単な料理をして、晩ご飯にした。推しが出ているアニメを見ながら。


「あ"あ〜早乙女くん(アニメキャラ)尊い〜。」


早乙女くんは、神田拓也くんが声優している。私が好きになるアニメのキャラクターには、ほとんど神田くんが担当していて本当に''尊い"。それしか言葉が出ない。


 ご飯を食べ終わりケーキを用意した。テレビをつけてみると思いがけないニュースが私の目に飛び込んだ。


「数々のアニメやナレーションで、幅広い役柄を演じた、人気声優の神田拓也さんが今日、自宅で亡くなられたことが分かりました。」


「え、。」


 信じられないニュースに只々、呆然し立ち尽くしていた。


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