利点10. 「省スペース」

 DEX極振り無課金ライト層小器用プレイヤーことStrawberryEater427は、全ステ均等振り無課金ライト層器用貧乏プレイヤーことImitationCat145を連れて、再び≪妖精郷≫を訪れていた。

 これが、【拳銃】普及計画の最終段階だと告げて。


「早速メタルフェアリーがうざいんですけど」

「ふふふ、落ち着きたまえピヨコくん。今回はそのメタルフェアリーへのリベンジ、そしてそれを以て、【拳銃】の可能性を世間に知らしめようというのだよ」

「この羽虫を叩き潰せるなら、是非もないです」


 メタルフェアリーはそこそこの高速で飛び回り、あらゆる魔法を無効化する特性を持つ。

 しかし、何より問題とされるのは、そのAIがプレイヤーを挑発することに向いており、常にプレイヤーの周囲を飛び回り、攻撃を受ければギリギリで躱して煽って来るという点だった。


「これまでの研究の結果として、【拳銃】のを活かすには、特別な技能や準備が必要なことがわかった。これはこれで活用できるが、大衆向けではないと言える」

「はぁ。まあそうですね。普通の人は【爆弾剣】を大量に用意したり、【投げナイフ】に当てて軌道を変えたりできませんし」

「故に、活用すべきはだ」


 そう告げて一度、言葉を切る。その間もメタルフェアリーは2人の耳元をニヤケ顔で飛び回っていた。

 ImitationCat145が剣を振り回すと、メタルフェアリーはこれ見よがしに紙一重で躱してみせた。


 それを横目にStrawberryEater427が取り出したのは2挺の【拳銃】、そして、握りの先に幅広の刃が付いた、1対1揃いの剣。


「【ジャマダハル】ですか?」

「その通り。ピヨコくん、君にはこの【ジャマダハル】と【拳銃】をそれぞれ両手に1つずつ装備し、戦ってもらう。【ジャマダハル】を振るいつつ、【拳銃】の反動で不規則に加速する変幻自在の剣術、その名も……」




  ―――ガン・カタール。




「シズナさん、【ジャマダハル】と【カタール】は全然別物ですよ。知ってるでしょ」

「ふふふ、語呂が良いのでね」


 StrawberryEater427の飄々とした態度にImitationCat145は小さく溜息をいたが、素直に【ジャマダハル】と、そして拳銃を両手に構えた。と言っても単に2種の武器を無理やり掴むのではなく、銃爪ひきがねいずれかの指がかかるようにはしなければならない。持ち方についてはしばらく悩んだが、最終的には収まりの良い所が見つかった。



 ImitationCat145はその日、≪妖精郷≫のメタルフェアリーを、一時的にとはいえ、絶滅させることに成功した。

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