第2話 どうすればモブじゃなくなりますか?

「ただいま…」

絶望感のなか家に帰宅するとそのまま

ベットにダイブした。

とにかく今は何も考えたくねぇと目を

閉じる。

やはり精神的に疲れたのか目を閉じると

すぐに睡魔に襲われそうにな…

「おぬし、起きるのじゃ!」

そうだよな。そんな簡単じゃねぇよな。

俺の人生。

「はぁ何か用か?」

「今から作戦会議をするのじゃ!」

「は?作戦会議?」

「うむ!

第一回おぬしがモブから脱出するためには

どうしたらいいのか。会議じゃ!」

だっせぇ名前と思いつつも

真面目な俺はしかたねぇと体を起こし

机に向かうと紙とボールペンを用意した。


まず現状況を整理するか。

俺は異世界転生で最強勇者ハーレム生活

ではなく現世でただのモブ。

主人公の男はおそらくこれからかなりモテる

→ハーレム生活。

そして解決するには

主人公と親しくし友達ポジションになる。

(棚ぼた的発想。)

主人公にこれからおこりうる恋愛フラグを

折る。

問題点

友達ポジションのやつはだいたい

当て馬的になるか

かなりの確率でいいやつで終わる。

果たしてフラグを折ることが

可能なのか。

ん。こんなもんだろ。

「して、棚ぼたとはなんじゃの?」

「あぁ、それはあいつと仲良くすれば

あいつに告白してくるやつが出てくるだろ?

そして告白をすれば必ずフラれるやつが

出てくる。

んでそのフラれた女子を慰めて自分のものに

しようってわけ。」

正直かなり情けないが

いまのところこれが一番いい作戦だ。

「ふーむ。なかなかずるいがいい案じゃの!

おぬし、やるではないか!」

「もとはといえば全部お前が

悪いんだけどな。」

異世界転生で最強の勇者になってさえいれば

こんな悲しいこと考えなくてもすんだのに。

「うぐっ。まっまぁそんなおぬしのために

わしも考えてきたぞ!」と

渡された紙にはでかでかとわしも

にんげんになってさぽーとする!と

書かれている。

「いや、却下。どうみても破滅フラグしか

見ぇねぇし。」

「なぬ!?一生懸命考えてきたのじゃぞ!」

はぁ…と深いため息をひとつ。

役立たずすぎてこいつ本当に神様なのか?

「ん?この香りはなんじゃ!?」

夕食の匂いに耳をピンとたて

キラキラとした目をこちらにむけている。

「まさか食べたいとか思ってないよな?」

「失礼な!わしは神じゃぞ!

そんなこと思うてないに…」

しかしその虚勢もむなしく

ぐうううというなさけない音が鳴り響いた。

「はぁ…ちょっと待ってろ。」

階段を降りお盆に夕飯をのせて扉を閉めると

おお!という小さな歓声があがった。

「なぁなぁ!これはなんじゃ?

「ん?あぁこれは芋のにっころがし。

食うか?」

食べるぞ!と大きく頷き子供のようにあーんと大きく開けている。

仕方ねぇなと箸でにっ転がしをつまみ

食べさせてやると目をキラキラと

輝かせなんとも美味しそうな表情を

浮かべている。

なんというか雛鳥に餌付けしている

親鳥の気分だ。

あまりに美味しそうにたべるので

俺も一口食べてみる。

なるほど、たしかに塩分の加減もホクホク感もちょうどいい。

「あぁ。確かにうまいな。」

じゃろ?あっこれも食べたいのじゃ!

と再び口をあーんと大きく開け

いまかいまかと待ち構えている姿に

妹がいたらこんな感じなのだろうなと

少しホッコリした気持ちになった。

そうしているとお腹がふくれたのか

「むー美味であった。」と

満足そうに微笑んでいる。

「いや、まったく会議すすんでないけどな。

というか全部俺一人の案だし」

「はっ…!」

しまったという顔で俺を見ると

なぜか尻尾でくるりと顔を覆った。

「とっとりあえずおぬしはその男と接触して

友達とやらになるのじゃぞ!

でっではサラバじゃ!」

リンという鈴の音がなり神様は食うだけ

食って姿を消した。

(また逃げたなあいつ。)

でもまぁちょっと癒されたかも。

ん?もしかして俺誤魔化されてるか?


「おはよー。元気か?」

「まぁそこそこだな。」

軽く返事をしつつ

問題はどうやって接触するかだ。

なにかきっかけでもあるといいんだが。

いきなり話しかけるのもおかしいしな。

「?主人あるじのほうばっかり見てるが

もしかしてお前そっち系か?」

「なわけあるか!」

つっこむのも嫌だがあいつ主人公あるじこうってどんなネーミングセンスだよ。

すると公!おはよ!と

なにやらコミュ力が高そうな茶髪の男が

後ろからギュッと抱きついている。

「お前朝から暑苦しい。」

「いいじゃーん。俺ら親友だし?」

親友だし。

シンユウダシ!?

おい!友達ポジいるんじゃーん!!!

まじで詰んだ。

ラノベだったらここで~完~と

なってもおかしくないぞ。

「おーい神様。」

「呼んだかの?」

「完全に終わった。」

「なんじゃ急に。」

「友達ポジはもう存在してたんだよ。」

「友達とは一人じゃなきゃダメなのもの

なのか?」

「んーゲームではそんなに出てこないけど

リアルでは別にいいんじゃねぇの?」

「じゃあ問題なかろう。おぬしは

二番目の友達になればよいのじゃ!」

「いや、俺が愛人みたいな台詞やめて?」

「わしは忙しいのじゃ!

そんなくだらないことで呼び出すでは

ない!

ではサラバじゃ!」

くそっやっぱりこいつは頼りにならねぇ。

とにかくなんとかして主人公に

話しかけなければ。

そんなとき、誰かこのプリント職員室まで

持っていってほしいんだけどという

鶴の一声ならぬ担任の一言が聞こえ

チャンスを逃すまいと

俺が持っていきますと手をあげ

すぐさまパッと主人公のほうに視線を

送った。

その願いが通じたのか主人は

俺もいきます。と手をあげたので

二人でプリントを職員室まで

持っていくことになった。

しかしコミュ症なのもたたり

会話をすることもなくただただ

沈黙した空気が流れる。

(気まずいな…)

なんとかこの状況を打破しようと

俺は必死に頭を動かしそして出した言葉は

「お前ってなんか趣味とかある?」

というまるでお見合いかのような質問

だった。

「趣味か?まぁ漫画とゲームだな。」

「おっ。どんな漫画読むんだ?」

「んーときめきランデブーとか?」

まさかの少女漫画。

「へっへぇーじゃあゲームは?」

「んー死神まつりとか?」

ホラゲーやったことねぇ!

とにかく必死で話題を探していると

ははっ。

お前いちいち表情変わりすぎだろ。

おもしれぇ。と笑ってくれた。

ただ笑われただけでこんなに嬉しかったのは

生まれてはじめてかも知れない。

嬉しくなった俺は話を続けようとしたが

前から歩いてきた女子にぶつかり

プリントが数枚下に落ちてしまった。

「あっ!すみません!」

「いえこちらこそ!すみません。

私の不注意です。」

プリントを拾いつつパチリと彼女と

目が合うと

その美しさに驚いた。

胸まである長いみつあみに

まるで雪のように白いはだ。

黒ぶち眼鏡で隠れてはいるが

パッチリとした二重で少し童顔なところが

またかわいい。

これは紛れもない美少女だ。

「おい、大丈夫か?」

「はっはい。あの。

ほんとにすみませんでした。」

「いや、怪我がなくてよかった。

ほらこれ落としたぞ。

ん?この本って…」

世界であった本当に怖い話。

正直本と見た目とのギャップもすごいが

おそらく女子高生が読む内容の本

ではない。

「これ俺も持ってる!かなり怖いよな。」

「!!本当ですか!私もこれ

何回も読んでて…!」

(えーー!!)

二人はまさかの共通話題に花を咲かせて

いる。

まずいこれもしかして

今フラグたってるんじゃないか?

なんとかして阻止しなければと無理やり

話題に乗っかってみることにした。

「たとえばどんな話があるんだ?」

「それはだな…」

「あっ待ってください!私から説明します!」

「いやいや、俺が」

「いえ、私が」

結局俺が私がの応酬。

作戦失敗。

というかお前ら相性バッチリすぎじゃね?

夫婦漫才かよ。

「あぁ。すみません!興奮してしまって

名前もまだでしたよね?

私楠木彩っていいます。」

「あー俺は主人。こっちは鈴木。

よろしくな。」

はい。お願いします。ではまた。と

ペコリと丁寧にお辞儀をして

彼女は去っていった

まさかこんなところでフラグがたつなんて。

恐ろしすぎるぞ主人公あるじこう

「?どうした」

「いや、別に。」

その後職員室にプリントを届けると

二人でしゃべりながら教室まで

帰った。どうやら仲良くなれたらしい。

そして話してみてわかったことがある。

それは主人公ちょっと変わってるが

めっちゃいいやつ。

顔はイケメンではないが清潔感があるし

背も高い。

なにより優しい。

やばい。これはモテるわ。

さすがは主人公ポジ。

授業が終わると、こう、一緒に帰ろー。と

初日に会ったボブヘアー美女

真野が主人公に話しかけている

正直めちゃめちゃ羨ましい。

俺も真野としゃべりたい。

すると主人がその視線に

気づいたのかこちらへ近づき

鈴木、お前も一緒に帰るか?と

まさかの提案をしてきた。

しかし真野は獲物を狙う鷹のように

キッと眼光鋭くこちらを睨んでいる。

美女がゆえその表情はものすごく

恐い。

真野の眼光に負け、いや俺はいいかな…と

やんわり断ると主人は残念そうな表情を

浮かべ

そうか?じゃあまた今度な。と踵を返し

真野の元へ帰っていった。

真野は教室を出るまでずっと俺を

睨んでいる。

その様子を見ていていたモブ友

田中はなにか面白いものでも見たかのように

にやにやとこちらに近づいてきた。

「いやぁ災難だったなぁ。

真野ってかわいけどさ性格悪いって

噂で主人ぐらいしか友達いないん

じゃね?」

まっドンマイ。とポンと肩をたたかれると

俺らも帰ろうぜーとのんきな口調で言われた

こいつはのんきでいいな。

所詮俺らモブ友だもんな。

モブはモブらしくってか。

なんか俺このままモブポジのまま人生

終了しそうだわ。うん。

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