聞いたかぎりでは状況じょうきょうは最悪。



第二次世界大戦時の終戦間近しゅうせんまじか

日本そのものだ。


こう言った場合、

敗残国はいざんこくの支配者がさきに考えるのは、

終戦時の自分の処遇しょぐうだ。


軍事裁判ぐんじさいばんで死刑になるのが、

ほぼ確定しているかぎり、

軍トップは敗けをみとめず、

狂った玉砕覚悟ぎょくさいかくごの戦争は泥沼化どろぬまかする。


そんな場面で呼ばれたのだ。


君がトップだと言われ喜ぶのは凡人ぼんじんである。


トカゲの尻尾切しっぽきりとしてのにえとして、

呼ばれたにぎないだろう。


だが、さらに気の違った俺に、

この状況は笑いが込み上げて止まらない。


なみみのやつなら死のフラグも、

俺にはチャンスにしか見えない。



「わかった。

 それで兵力はいくらだ?」


「はっ!

 こちらが2千、向こうが3万です」



はっはっは、ようやくもたらされた希望は、

兵力差15倍の絶望ぜつぼうだとはね。


始まったばかりで、

もう終わりのどんぞことは笑える。


とことん僕は呪われてるらしい。


くつがえしてるよ。


にえがお前らの支配者になってやる。



「やはり魔王様でも、

 この絶望的状況での打開だかいは、

 不可能ふかのうでしょうか?」


ひかえよゾルディア!

 王の御前ごぜんであるぞ」


「ですがこのような・・・

 なんと言いますか人間じみた王など・・・

 やはり失敗だったのでは・・・  」


ひかえよともうしたであろう!」


なるほど儀式ぎしきが失敗して、

世界で最弱の僕が呼び出されたと言うわけか。


なんて皮肉ひにくだ。


世界で最弱の僕が世界を救うか。


いや人間が敵なら世界をほろぼすになるのかな?



「面白い!

 世界を我が憎しみでたしてやろう」



つい出た言葉に希望を見いだす悪魔達。



陛下へいかでは我々われわれは・・・ 」


「問題ない。

 われすべ片付かたづけてやろう」



途端とたんあたりがざわつき始めた。

 


「まずはそなたの名を聞こう。

 答えよ」


かしずいたままの鬼がこたえる。


「はっ! 

 私は魔界八氏族まかいはちしぞくが1つ、

 鬼神ガルバナぞくおさアルカナです」


たばかるな。

 そちが、もと魔族の王であろう。

 我が召喚される前のな」


「はっ、そのようなつもりは。

 はいそうです魔王様」



その洞察どうさつにアルカナはあらたまってかしずいていた。



「そうかアルカナよ。

 それではまず、この辺りの地形と、

 こちらの戦力、物量を見たい。

 資料を用意せよ」



こうして僕の、

いや俺の異世界生活は始まった。

 

 

 

 

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