010:ヴァルキリーゲームズ ~女戦士達の地下闘技場~

【タイトル】

ヴァルキリーゲームズ ~女戦士達の地下闘技場~


【ジャンル】

現代ファンタジー、バトル、エロ


【概要】

地下闘技場で行われる、選手が女だけの裏の格闘大会。

そこでは、観客が『負けると思う方』に賭ける仕組みになっている。

試合に勝てば、自分に賭けられたお金を総取り。

しかし負ければ、自分に賭けた者達の手で弄ばれる。

強く、そして美しい女戦士ヴァルキリーだけが生き残れる、熱くてエロい美少女格闘アクション!


※抑え目ですが、性的描写が含まれています


【1話試作品】


観客たちの歓声が響く。

そこそこ広さがあるはずの地下室だが、熱狂ぶりは部屋全体に充満している。

声を荒げる男達が注目するのは、部屋の中央で戦う2人の美女だ。


町の地下に作られた、裏闘技場。

金網に囲まれた物々しいリングの上で、美しい女達が戦っている。


「気功狼!!」


長い黒髪を揺らして戦う一人が技を放つ。

一瞬にして対戦相手に詰め寄り、抜き手が放たれる。

少し腕に掠ったのを見て、対戦相手は一度距離を取った。

それを見て、技を放った女・瑠璃亜ルリアもいったん距離を取って構えなおす。


長い黒髪を揺らし、青いスポーツシャツとホットパンツという軽装。

すらりとしてるが確かに鍛え抜かれたことが分かる、ほどよい肉質の手足が惜しげむなく晒され、衆目を釘付けにする。

しなやかだが力強い動きは、煽情的でさえある。


この闘技場で現在、最も人気の女戦士ヴァルキリー

デビュー以来無敗を誇る圧倒的強者にして、最も男達に貢がれている圧倒的美女。

観客の男達から熱視線が注がれ続けている現チャンピオン・瑠璃亜ルリアは、勝負を決めに動いた。


「はあっ!!荒涼脚!!」


ステップで軽くリズムを崩してからの、突然の奇襲。

非常に低い体勢で詰め寄ってからの後ろ蹴り。

相手からすれば、突然視界から姿が消えるように見える奇襲技。

下と気付いた時にはもう遅い。

瑠璃亜の蹴りは、見事に相手の腹に突き刺さっていた。


「ぐほぉっ!」


対戦相手である大柄の女性・レイアはそのまま吹き飛ばされ、金網にぶつかった。

女騎士をイメージした装飾が施された黒のコスチュームは既にボロボロになっており、残るレオタードがより彼女の肉体を色っぽく彩らせる。

倒れ込みそうになるのをなんとか踏みとどまっている女騎士に、再び瑠璃亜が迫る。


「決まった……」


観客の誰かがつぶやいた。

その通り、瑠璃亜はふらついている相手に一気に詰め寄る。

壁際に追い込まれたレイアにもはや逃げ場はない。

瑠璃亜はトドメの技を放つ。


「凶迅破!!」

「がっ……!」


至近距離で同時に放たれた2発の掌底。

腹の左右からドスンと伝えられた衝撃は、レイアの全身に一瞬にして伝わる。

身体が機能不全になった、そう錯覚するほどの衝撃。

レイアは何も言うことも、何もすることも出来ず、そのまま倒れ込んだ。


「レイアがダウン!!カウント入ります!!」

「おおおおおおおっ!!!」


レフェリーの声が入り、観客たちの歓声が沸き上がる!


「3!」


膝をついてから3カウント以内に起き上がれなければ負け。

過酷な裏闘技場らしい、短い猶予時間。


「2!」


レイアは声を上げることはおろか、身動きすら出来ないようだ。

気を失っているのかもしれない。


「1!」


まったく動く素振りを見せない女騎士。

観客の目も期待に変わる。


「0!!

WINNER 瑠璃亜!!!」

「おおおおおおおおおおおっ!!!」


勝敗は決した。

期待した通りの結果か、あるいは逆に期待に反した結果か。

揺れすら感じるほどの歓声が闘技場内に響く。


無敵の女王、未だ健在。

この闘技場で、無敗を誇る瑠璃亜は今回も勝利。

彼女が地に伏す姿を見るのは、まだ先になりそうだ。




ヴァルキリーゲームズ。

それは、美しき女戦士達の戦い。


女性だけが選手になることができる、裏の格闘大会。

国の各地に密かに作られた闘技場には、多額の賞金を求めて美女達が集う。


そして、美しい女のもとには男が群がるのも世の常。

裏社会の格闘大会にも関わらず、こうして観客たちが多数集まる。

衆人環視の中、女戦士ヴァルキリー達はリングの上で見せつけるのだ。

己の技を。あるいは己の肉体を。



叫ぶ男達に混じって、1人の少女が観客席で試合を見ていた。

未だ学生の身分である少女・真樹マキ

先ほど、瑠璃亜が決めに行ったことを確信し、思わずつぶやいてしまった当人である。


真樹の視線は、ずっと瑠璃亜に向けられている。

憧れの女性であり、目指す目標であり、最も超えるべき壁。

彼女にとって、この裏闘技場にやってきた目的なのだから。


「よぅ、試合は楽しめたか」


真樹の隣に、黒づくめの男がやってくる。

黒いスーツに黒いサングラス、実に怪しい服装だが真樹は特に気にした素振りは見せない。

彼がこの闘技場のスタッフであると知っているからだ。


「まぁね。今のままじゃ、実力差がありすぎる。

けどいつか、瑠璃亜さんに挑む。

その気持ちは改めて強くなったよ」

「そうかい。ま、若いのに向上心があるのはいいことだ」


怪しい身なりだがフランクに話す黒づくめ。

だが、サングラス越しにも分かる真剣な目をして真樹に問いかけた。


「そんで、この後も見ていくのかよ?」

「うん……それがせめてもの礼儀だと思うから」


そう言って、真樹はようやく視線をレイアの方に移した。

懸命に戦った、だが敗北した者。

その末路をちゃんと見届ける。

それが、端くれとはいえ一人の戦士としての礼儀だと、真樹は考えていた。


社会からほとんど黙認状態とはいえ、ここはれっきとした裏の闘技場。

人と金が集まるのには、それ相応の理由がある。

むしろ、ここからが本番。

観客たちが発する熱が、徐々に変わっているのを真樹は感じ取っていた。



「それではまず、勝者に賞金を!!」



リングに入った司会が、無駄に小奇麗な封筒を瑠璃亜に手渡す。

運営の設定した金額に加え、お金を合計した額が入っているはずだ。


「ちなみに、今回の瑠璃亜へのBETは、計420億レン!!

中には100億以上賭けたお客もいるようだ!

相変わらず大人気だなぁ瑠璃亜!

これからもその美貌と強さは健在でいてくれよ!!」

「うふふ、善処するわ」


賞金を受け取った瑠璃亜は、大人な微笑みを返す。

そして観客席にも顔を向け、自らに期待した観客達に手を振っていく。

さすが、表ではトップモデルとしての顔を持つ瑠璃亜だ。

立ち姿だけでなく、仕草の一つ一つまでが美しい。

闘技場中の者達にしっかりと存在感を示した彼女は、そのまま優雅に翻しリングを降りていった。




そして、残された敗者に観客たちの視線が向けられる。




「ぐへへ……」



観客の男達の顔が、下品に笑う。

まぁ当然だ。

さっきまで戦いに熱狂していた彼らにしてみれば、本当のお楽しみはこれからなのだから。



「さて……それでは、敗者:レイア。どうぞ、リング中央へ!」

「くっ……」


悔しさと屈辱…それらが混じった顔をして司会者を睨みながら、それでもレイアは言われた通り中央に来る。

その表情はカメラを通して、闘技場内の壁にかかった大型スクリーンにしっかりと映されていた。

この場にいる全員に、しっかりと顔を見られている。



「では、係の者が案内しますので少々お待ちください。

ちなみに今回のレイアへのBETは、合計280億レン

ほうほう、こっちも1番賭けた人は100億を賭けている!

いやぁ、1回100億ってのはなかなか無いもんだぜ!

さすがウチのナンバー2、今回は負けちまったがまだまだ頑張ってもらうぜ!」


司会者が盛り上げる中、黒づくめの男達に連れられて、観客だった男達が10人入ってくる。


今回、レイアの方に賭けていた者達。

その中でも、賭けた金額が多い10人だ。


レイアとて、ここでは人気選手。

あの観客たちも、1億以上賭けている人がほとんどだろう。

金持ちに気に入られるだけの実績と美貌が、彼女にはある。


「くっ……このアタシを好きにしようとしたって、そうはいかないわよ!

絶対、アンタらに屈したりしないんだから!」

「むっほっほ、いいですなぁ、分かっておる」


せめてもの抵抗として睨みつけるレイアだが、それさえも男達にとっては喜ばしい物。

悔しさに満ちた表情というのは、これから始めることについて程よいスパイスになる。

最も金額を賭けていた、身なりの良い紳士は満足そうに哂う。


「とはいえ、ペナルティタイムは1時間しかありませんからな。では、さっそく……」


100億もの大金を賭けた紳士が、レイアの背後に回る。

そして……


「うひゃああっ!!」


思いっきり胸を揉んだ。

あまりにも堂々とした鷲掴みだった。

びっくりして思わず尻もちをついてしまうレイア。


「くっ……はな……ひゃあ!!」


そんな彼女へ、リングに上がった男達の手が伸びていく。


胸へ、腕へ、脚へ、尻へ。

ためらいのなく伸びる男達の手。


「はうっ、あぁっ!!」


男達に身体を触られるたび、レイアは甘い声を上げる。

そんな彼女の様子を楽しむように、徐々にヒートアップしていく男達。

今度はその手が、彼女のコスチュームに掛かった。

まるで獲物から素材を剥ぎ取るかのように、コスチュームも徐々に剥き取られていく。


「うあああっ!」


己の肉体が晒されていく恥辱に、たまらず声を上げるレイア。



だが、抵抗は許されない。


ここは、そういうゲームの場所だから。



「あああっ!!!」



男達の手がレイアの柔肌に触れ、また声を上げる。

彼女が身体を弄ばれていく様子を、観客達は金網越しに見つめていた。

リング上の光景はスクリーンにもしっかりと映されているから、席の都合で見えにくい者達も文句は言わない。

レイアが乱されていく姿は、闘技場中の者達に見られていくのだった。



そんなレイアの姿を、真樹は観客席でじっと眺めていた。

まだ年若い彼女にとって目の前の光景はさすがに気恥ずかしく、少し顔を赤らめている。

だが、別に敗者レイアを助けようという気持ちはないし、下衆な男達に対する怒りなんてものは感じない。


ここはそういう場所。

あのリングに立つというのは、これを受け入れることと同義なのだ。

レイアとて、そのことを十二分に分かってて、その上でチャンピオンとの戦いに挑んだのだ。

ここで男達に抗議をするのは、真剣勝負に挑んだ彼女に対して失礼だ。


だから真樹はじっと、男達に囲まれたレイアを眺める。

あれは、自分にも起こり得ることなのだと再認識しながら。



「さすがくっころのレイア。完璧だな」


真樹の横にいた黒服がが唸る。

顔を赤らめたまま、真樹も頷く。

彼女のファンからつけられた、あんまりな通称だが、それに見合う光景が繰り広げられていた。


何せレイアの選手としての、女戦士ヴァルキリーとしての正式な肩書が黒騎士ブラックナイトである。

やられざまも女騎士。

決して屈しないと決意しながらも虚しく弄ばれる、そんな光景をちゃんと演じている。

負けた時のパフォーマンスさえ、選手として、女戦士ヴァルキリーの仕事の一環なのだから。




この闘技場では、観客は『負けると思う方』にお金を賭ける。

いや、負けて欲しいと思う方といった方が正しいか。


試合に勝てば、自分に賭けられた金額は全額自分のものとなる。

観客たちの『負けて欲しい』という悪魔の期待に打ち勝った報酬ということだ。


そして試合に負ければ……

皆が見ている前で、弄ばれる。

ペナルティタイムと呼ばれるコレが、このゲームの一つの目玉でもあった。


敗者の身に触れることが出来るのは、賭けた金額が大きい者達。

金額が上位の者達が、ペナルティタイム一杯の間、好き放題に出来る。


触り放題、揉み放題。

キスし放題、舐め放題。

カメラでビデオで撮り放題。

場合によってはその先も……


今回はレギュレーションで、上位10名が一時間好き放題となっている。

これから一時間、レイアは観客たちが見ている前で10人の男達に弄ばれ続ける。


敗北した女戦士ヴァルキリーは、己を味わおうとする観客達に手を出すことは許されない。

それは、選手生命を一発で断たれるほどの禁じ手だ。

一流の武闘家が一般客に、ましてや己に投資してくる者を殴るなど言語道断。

敗者は屈辱に塗れながら、男達の手を受け入れるしかない。

それが、このペナルティタイムの絶対のルールだ。


観客は好みの女戦士ヴァルキリーに金を賭ける。

屈強かつ美麗な女戦士達が淫らに溺れる姿を期待して。

あわよくば自分の手で汚すことを期待して。


本来であれば手出しできないような、強くて美しい女戦士。

それを好き放題に出来る権利が得られる。

屈辱に塗れながら、一切に手出しをしてこず従順な身になる女に手を出し放題になる。

そこに大金を出す価値を感じる男達は、確かにいるのだ。



一方、女戦士ヴァルキリーは試合に勝つことで賞金を得る。

だが、強いだけではこの闘技場では大した金額は稼げない。


闘技場から支給されるファイトマネーは微々たるもの。

ここで大金を稼ぐには、自分に対して観客達に賭けさせる必要がある。


すなわち、観客たちが『手を出したい』と思うような美しい女。

普通であれば決して手が出せないような、汚れ知らずの強く美しい高嶺の花。

あるいは、負けた時さえ観客を喜ばせることが出来る魅惑的な華。

それが、ここで稼ぐために最も必要な力。



この闘技場では、強く、そして美しい者が生き残る。

それが、ヴァルキリーゲームズと呼ばれる、女だけの地下闘技場の総称だ。


理不尽なルールに支配されたこの空間だが、不思議とこのゲームに集まる女もいるのである。

己の武を試したい者や、一攫千金を狙う者、あるいは色んな意味で刺激を求める者が。






「さて、一応最終確認だが。

本当に、君も参戦するのかね?」


今日の興業が終わり、観客がいなくなった闘技場にて。

隣に座る黒服の男が、真樹に対して確認する。

これを承認すれば、彼が自分のマネージャーとなる予定だ。



勝てば大金と栄誉、負ければ恥辱。

ある意味これでもかというほど、実に分かりやすいシチュエーション。


人気選手ともなれば、1試合で数十億単位の金額が動くことも珍しいことではない。

賞金の多額さ故にこのゲームに挑もうとする者は多いが、このペナルティを知らずに挑もうとする者も多い。

その点、ここの闘技場は本契約前にきちんと見せつけるのだから良心的な方だろう。

この光景を見せられて、女戦士ヴァルキリーになることを諦める人もそこそこいるのも事実。


真樹とて、たやすく負けるつもりはないが、敗北すれば綺麗な身体ではいられない。

そのことは十二分に理解した。



だがそれでも。


「あの瑠璃亜さんに勝つためにも、家の道場の再興のためにも。

ヴァルキリーゲームズ、挑ませてもらいます!」

「そうかい。ま、頑張りな」



真樹は自分から、この闘技場に挑むことを望んだ。

決意に満ちた表情で、無人になったリングを見つめる。

己の夢、あるいは野望ともいえるものを秘めて。



また一人、女戦士ヴァルキリーが誕生した瞬間だった。


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ネタ帳 ~書き殴り黒歴史ノート~ 田戸崎 エミリオ @emilioFL

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