第15話
マヤは榛色の瞳を上げ、口を開いた。
「...私の情報が、必要ですか?
黒髪メイドの言葉に、レイナルドはミルを回す手を止め、
「あなたの異界の記憶に引っ掛かったの?」
「おそらく...「必要ないのよ、マヤ。」...」
口を開き、続けようとした黒髪メイドを遮り、クラリスが、のんびりと言う。
自らに集まった視線に、にっこりと笑顔で応える。
「言ったでしょう?
力はそれにふさわしい時に使うもの。
こんな些細な
「ですが...ジャルダンでは、姫様に不当な言葉を投げつけられました。
あのような事が次の順番でも起きるのであれば...」
「...あれば?」
レイナルドが言葉を継ぐと...
「我慢できなくなるかもしれません!」
魔技タブレットを持っていない方の拳を握りしめ、黒髪メイドは言い放つ。
「あのジャルダンの
今、思い出しても腹が立ちますよ!
冷静にお役目を果たした自分を誉めてやりたい!」
「...それほどにか...」
いつものバリトンより一段低い声が答える。
「よし。
次の順番には、私が付こう。
大事な
静かに怒りを滾らせるライオネル。
そんなライオネルの腕を軽く叩き、マヤに『ありがとう』と微笑みかけ、レイナルド、テラへと順に視線を送る。
「ねえ、マヤ。
私がベールで顔を隠して見せないのは、何のためだったかしら?
言葉を多く与えないのは、何のためだったかしら?
王族の中から多くの伴侶候補が与えられるのは、何のためだったかしら?
ね、サージェ先生?」
「その通りですわ、姫様。
竜皇女の伴侶、という立場に魅力を感じる者は多いでしょう。
ですが、本来竜紋は、娘を思う母の気遣い。
娘を愛し、娘が愛する伴侶に巡り会えるように、という竜女神様の願いが現れたものです。
コリエペタル五国の王族に多く現れるのは、今までの竜皇女の伴侶、つまり、竜皇女が愛した者に繋がる血筋のため。」
レイナルドが続きを引き受ける。
「コリエペタル五国の初代達はみな、竜女神の娘に全身全霊をかけて愛を捧げたらしいね。
時が流れ時代が移っても、その思いは彼らの末裔に引き継がれている。
だから、どんなに薄まっていても、資格のあるものには竜紋が現れる。
...でも、もしかすると、姫様の想いにふさわしい者ならば、血が無くとも竜紋は表れるのかもね。
たまたま、今までは初代からの血筋から伴侶が選ばれてきたけど。」
「もしかすると、そうかもしれませんわ。
どちらにしろ、伴侶を選ぶのは私。
そのために、ちょうどよく舞台を整えてくれる者があるのなら、使わない手はないわ。
あれくらいのこと、そんなに怒ることはないのよ、マヤ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます