16 常闇と光の街

 生存報告。生きてますよー。最近またちょくちょく書き始めてますが、まともに連載再開できるのはいつになるやら……。

 続いて修正報告です。実はちょっと前からぽつぽつ修正してたのですが、リーレさんが余りにも薄すぎたのと、違和感があったこと、そして設定の都合上、キャラ変しまして、敬語キャラになりました。

 この作品を読んでくださっている皆様に感謝を。

 では、本編をどうぞ。


===


 数日後、セイルとリーレはモーナトの街に着いた。

 門でギルド証を提示し、リーレの身分請け負いの手続きを済ませ、街の中へと入った。

「これは……」

 リーレが戸惑いの声を上げる。

 なぜなら、そこは夜であったからだ。彼らが街に入ったのは午後六時頃。日没はしていたものの、まだ辺りは明るかったはずなのだ。だというのに、この街は既に夜の帳が下りている。魔光灯の明かりと家々に灯るランプだけが、そこにある光だった。

 上を見上げても、そこに星は無い。いや、一つだけ、あった。雲に隠れていた月が顔を覗かせる。欠けているところの無いそれは、赤い、赤い月だった。

「ようこそ、常夜の街モーナトへ」

 唖然としていたリーレに、門番がそう言った。


§


 セイル達はその後、リュックザイテの街で泊まっていた宿と同じ系列の宿をとった。

 これほどの設備でチェーン経営しているとか、この宿はホントに何なんだ、と思いながらも、使い勝手は非常に良いため、セイルは結局ここを選んだ。

 数日間の移動を終えて部屋に着き、ようやくセイル達は一息つくことができた。

「この街は、一体どうなっているのですか?」

 部屋に着き、荷物を下ろすなりすぐに、リーレはセイルへと質問を投げかけた。

「門番に言われたように、ここモーナトは常夜の街とも言われている。理由を言う必要は無いだろうが」

 装備を解き、ソファにどっかりと腰を下ろして寛ぎながらセイルは話を続けた。

「この街は一日中暗闇に閉ざされている。もっとずっと南の方へ行けば、極夜という似たような現象が起きることもあるらしいが、それとは全くの別物だ。極夜は自然現象だが、こちらは呪いによって引き起こされているんだそうだ」

「呪い……?」

「まあそれについては俺もそこまで詳しくない。どうせこの街にはしばらく居る予定だ。知りたければ自分で調べろ」

 セイルはそうぶっきらぼうに言って、ソファに横になった。

「疲れたから俺は寝る。ここなら太陽は届かないから好きにしろ。まあ逆に吸血鬼はうじゃうじゃいるし、聖盾聖騎士団アイギス第三聖隊も常駐しているがな」

 それだけ言い切ると、すぐにセイルは寝息を立て始めた。

 それを見て、リーレは

(この男、無防備すぎやしませんか。もしくは、私をすでに信頼しているとか?)

などと思ったのだが、

「俺が無防備なのは、たとえ寝込みを襲われようとお前に負けない自信があるからだ。自惚れるな」

 と思考を読んだかのようにセイルが言い放った。

(起きていたのですか……)


§


 その後リーレは宿から出て、行くあてもなく街を歩いていた。

 上を見上げれば、またも月が雲に隠れようとしていた。

(あれ、さっきは赤かった筈では……?)

 しかしその色は、くすんだ綠色をしていた。視線を動かせば、先程の赤い月はまた別の場所にあった。

(月が、二つ……?)

 本当にここは呪いによって外界とは隔離された場所なんだと実感しながら、リーレは夜にしては明るく、活気のある街を歩いた。

 街の様子が夜だとしても活気づいているのは、偏にこの街の『常闇』という特殊性にあった。

 光源が無いため、この土地で豊富に産出される魔鉱石などを用いた魔光灯などが開発され、夜でも十分な光量を手にすることができた。

 また、この街にとっては昼も夜も同じのため、規則正しい生活とは無縁の者が多い。眠くなったら寝て、起きたらそこが朝という生活の者も少なくない。そのため、街に人の姿が全く見つからないという状況はほとんど無いのだった。

 そんな通常では中々珍しい夜の街の姿を、リーレは興味深そうに眺めていた。ちなみに、不死族アンデッド特有の闇の魔力はセイルが改造した魔導具によって遮られていた。これでは余程敏感な者でないと気付くことはできないだろう。そう、同族である吸血鬼さえ。

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