第31話

「じゃあ、おやすみ...」

「はい〜おやすみなさーい。」

「おやすみ。」

夜の10時。山上が増えたが、特に何もなく3人とも早めに寝ることにした。

ちなみに部屋は、小牧は俺はいつもの部屋で、山上はもう一つの空き部屋である俺の部屋の隣だ。


...流石にこいつは俺のベッドに入ってきたりはしないだろう...。


今日は一日中外に出ていたため疲労がたまっている。慣れない女装なんてさせられたから尚更だ...。あれは二度とやりたくない。


疲労が溜まってたからか俺はすぐ眠りにつけた。



***



「...きて?...起きて、神野くん...」

俺の意識が覚醒したのはまだ辺りが暗い頃だった。

声からしてわかるが、隣に寝そべっているのは案の定小牧であった。

毎日このくだりなので最近では耐性がつき、あまり驚かなくなった。

それでも自分が寝ているベッドにこんな美少女がいたらそりゃ正常なオスなら誰だって緊張、興奮などは覚えても仕方がない。

俺は声を最小限に抑えて言う。

「...!...何で毎度俺のベッドで寝てるんだよ...。勘弁してくれ、今日は山上もあるんだぞ?バレたら面倒だ...。」

なんせ山上が寝ているのは隣なのだ。本当に山上が寝ているかどうかはわからないが仮に起きていたとしたら声が聞こえるのはまずい。

「今日は夜這いに来たわけじゃないの。ただ...一緒に寝たくて...ダメ?」

小牧はそう言いながら俺の手をその綺麗な手で優しく包み込む。

だが俺は冷静さを保ちながら返した。

「夜這いに来たわけじゃないって...結局添い寝はするんだろ?いつもと変わらねえよ。部屋に戻ってくれ。」

俺だって男だ。このまま小牧を抱きしめて寝たいかといわれれば。寝たいですと答えたい。が、それは自称ひねくれ紳士である俺のモットーに反する。

「あら、そう...」

小牧はそう言って俺のタオルケットに潜り込んだ。

「...!何してんだお前!戻れ...!」

俺は眠気で動かない体に対抗できず、タオルケットの中で俺の胸に顔を埋めて俺の体をホールドする小牧を引き剝がさなかった。

代わりに何故かはわからないが無性に小牧を抱きしめたくなる...。

どうしたのだろうか、俺は。

確かにそりゃ誰だってこんな可愛い美少女は抱きしめたくなるが、何かが違う。性欲というわけではなさそうだ。何故なら仮に性欲が小牧を抱きしめろといって我慢できないようならとっくに俺はこいつのことを襲っているからだ。

だとすればなんだ...?

俺の思考はそこで眠気に遮られ、かわりに無意識に動かした腕が山上の手入れの効いたサラサラの髪の毛を撫でた。

反対の手も無意識に動き、小牧の体に腕を回した。

「...!!」

小牧が激しく肩を揺らした。

動揺しているのだろう。今まで布団に潜り込んでも、俺が起きた状態ならば一度たりとも俺はこいつに手を出していないからだ。

だが今回に限っては本当に無意識なのだ。仕方がない。と思いながら俺は無理に小牧を引き離そうとはしなかった。

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