第30話
「神野くん!次はスカートを少しめくりながら...いいわ!そのまま!そのまま止まりなさい!!」
現在俺の家の中はカオスと化していた。
ゴスロリファッションの女装をしながらスカートを捲り上がる俺、
それを今までで一番興奮したように写真を撮りまくる小牧。
顔をほんのり赤くして無言でシャッターを切る山上。
どうやら俺は可愛くなってしまったらしい。俺から言わせれば世の中の男の娘的な存在などあり得ないと思っていたが決してそんなことはなかった。
写真を見たが、そこに写っていたのはただのゴスロリを身に纏う美少女だった。
おそるべし、現代の化粧の力。
30分くらいの撮影会が続き、ようやく小牧が口を開いた。
「ふぅ...とりあえずはこんなものでいいわね...帰ったらパソコンにバックアップしないと...」
「俺の黒歴史を永久保存するな!!あととりあえずって何だよ!もう終わりだよ!?何枚撮る気!?」
俺は溜息を吐き、服を脱ごうと服に手をかけた。
が、山上が俺の手を止めた。
「なんだよ...もう撮影会は終わりだよ?これ以上俺の尊厳を減らして何が楽しいの?」
「何いってるんですか?先輩!これからが本番ですよ〜?」
「山上さんのいう通りね、本来の罰ゲームはその格好で街中を歩くことなのだから。」
2人の小悪魔が俺の両手を掴み怪しい笑みを浮かべた。
***
「ふんふふんふふ〜ん」
山上が軽い足取りで俺の腕を掴みながら歩く。
「どうしたの?柊ちゃん?」
「柊ちゃんって言うな。なあ、これでどこ行くんだよ?もう帰ろうぜ?」
両サイドの小牧、山上に対して言う。
もうかれこれ20分は歩いている。先程から商店街の人たちがこちらを見つめている。
そりゃそうだ、もともと2人の美少女がいるのにさらにそこに今時ではなかなかレアなゴスロリファッションを身につけた長身の美少女(現代技術で改造済みの男)がいるのだから。まあ確かに現代のメイクで美少女化してるとはいえ俺の身長は175cm。女子にしては長身の美少女にゴスロリとか違和感が半端じゃない。
こんな奴居たら俺、絶対二度見するもん...。
「さあ!これから柊ちゃん先輩の洋服を選びに行きましょう!」
「...!!異議なし。早く行くわよ。」
「小牧さん?なんかお前キャラぶれすぎだろ!!いや、流石に他の服は着ないぞ!?いやだーーー!!!」
その後は柊ちゃんのドキドキ☆女装デートが日が暮れるまで続くのであった...。
***
「酷い目にあった...」
現時刻は9時、あの後めちゃめちゃ女装のまま外を出歩き、何故か俺がナンパされたり服屋でファッションショーが行われたりと大変だった。
俺は帰宅後、2人の間を抜けて即風呂に直行し、顔の化粧を全て洗い流した。
ゴスロリは...洗濯して山上に返すか...。
「あー、酷い目にあった...。」
風呂から上がってリビングに行くと、何やら小牧と山上が揉めていた。
「もう9時よ?冗談を言ってないで帰りなさい?柊ちゃ...神野くんはもうお風呂に入ってしまったから外には行けないわ。」
「だから!私が帰るなら小牧先輩も帰るべきでしょう?それとも小牧先輩はここに泊まる気ですか!?」
小牧の最初の言い間違えは無視した。
どうやら小牧が帰らないからなのか、揉めているようだ。
「おーい、2人とも〜どうした?」
俺はソファでばちばちと視線を合わせる二人に声をかける。
「あ!先輩!ちょうどよかった!私、今日ここに泊まって行きます!」
「は?」
「だから言ってるでしょう?神野くんの迷惑よ。帰りなさい。」
「むぅ...じゃあ小牧先輩はいつ帰るんですか!?」
「帰らないわよ。」
おっと...この人ふつうにいっちゃいましたね。
「お、おい、山上?落ち着け、小牧のこの言葉はお前が帰るまで帰らないって意味でだな...そうだよな?小牧。」
俺はこいつに知られると色々と面倒なのでまだ引き返せると小牧に訂正を求めた。
が、
「いいえ、そのままの意味よ。今日は、ていうよりもう毎日ね。私、ここに住んでいるようなものだから、帰らないわよ。」
普通に俺たちのこの休みの期間のことを暴露した。
「う、うそ...」
「本当よ?何なら証拠の写真もあるわ。」
「写真?」
俺はふと疑問に思う。何故ならこいつと同居を始めてから一度たりとも写真なんて撮ってない。強いて言うなら今日の女装撮影会だが、あれは同居している証拠のような写真にはならないだろう。それでも写真があるとするならばそれは俺の意識がない時、すなわち...
「えぇぇぇぇ!?」
山上が声を上げて写真を間近で眺める。
俺も横からその写真を覗く、
半裸で恥じらいながらも俺のベッドで自撮りポーズをする小牧、
それを抱き枕のように抱き寄せる俺、
間違いない。これはここ数日俺が寝ている間に撮影されたものだろう。
こいつ!!俺が寝てる間に1回脱いで自撮りしてから服着て俺のこと起こしたのか!?どんだけ俺寝つき良いんだよ!?
そこで俺は山上の視線に気がつく。
こちらをゴミを見るかのような目で見ている。
「いや、また山上。俺は何もしてない!よく見ろ、俺の顔を!しっかり寝てるだろ!!これは冤罪だ!」
俺は山上に弁明する。
「...// あんなことして、冤罪なんて...神野くん、酷いわ...!あんなに貪るように私を求めてきたというのに...!」
小牧は芝居掛かった表情で自分の体を抱きしめ頰を朱色に染めた。求めたって!寝相だからしょうがないだろうが!!
「お前!ずるいぞ!俺は何もしてないのに!!」
小牧を睨みつけるが、小牧は顔を色っぽく赤くする一方だ。チキショウ。
山上をもう一度見る。こちらも羞恥なのか、はたまた怒りなのかはわからないが、とにかく顔を赤く染めていた。
「今決心がつきました!やっぱり今日は泊まっていきます!!2人にやましいことがないなら私が泊まっても問題ないですよね!?」
俺はため息を吐いた...何なんだよこいつらは。
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