第16話

俺が本気出すと決めてから3日が経った。


「で、これがホテルに入っていった写真だな。すげぇなこいつ、少なくとも5人以上は取っ替え引っ替えヤリまくりの完全なるヤリ○んだったわ」


俺はあくまでも山上の依頼のため片桐(フルネームは片桐康平)の身元調査をした。


そうすると、出るわ出るわ一日に1度ホテルに行っては毎日違う女とやっていた。実際にやってるところを見た訳ではないが毎日違う女とラブホに入った時点で完全にヤ○チンであることはわかった。


俺の完璧なる証拠写真や情報に山上は苦笑い。小牧はため息を吐いた。


「あなた、これはストーカーというのよ? 」


「先輩。流石にこれはちょっと、引きます…」


完全に批判の嵐だった。


「いや、まあ確かに途中から俺も何やってんだろ俺…みたいな感じにはなったけど…」


「で? これをどうする気? まさか本人に直接これを持って行くわけじゃないでしょうね? 」


「先輩。私はあくまで告白をされて断っても大丈夫なようにして欲しいだけですよ?流石にこの情報を全部本人に見せたら…」


「いや、何もこの写真とか情報を本人に見せるわけじゃない。ここからが本番だ」


「まだ続きがあるのね…」


うんざりと言わんばかりに小牧はため息を吐いた。


そんなに溜息吐いたら幸せが逃げてくぞ? まああれ嘘らしいけど。


「まあ退学とかにはならないようにするから大丈夫だ」


「それは退学すれすれのことをやるということかしら? 」


「いや、違う。おい、山上俺をそんなゴミを見るような目で見るな」


さっきから山上は口数は少ないが明らかに現代社会のゴミを見るかのような目をしている。


「流石にこれはやばくないですか? 」


「なあに、大丈夫だ。あくまで俺は点火するだけだ。あとは相手が勝手に自爆してその綾ちゃん? が片桐を軽蔑して、そのままお前が告白を断れば綺麗に片桐の噂も事実化して片桐だけが今までの悪事? を贖罪して俺たちには後腐れなく終わりだ」


「本当に、あなたの作戦。決して片桐くんを落とすこと自体に何も悪気を感じさせないのがタチ悪いわね…」


「まあ、任せますけど…あんまりやりすぎな

いで下さいよ? 」


「おう」


それだけ言うと山上は去っていった。



山上を見送ったあと小牧は山上が完全に去るのを待ってから口を開いた。


「それで? 何で彼女に対してここまでするのかしら? 」


表情は一切変えず、それどころかこちらの顔すら見ずにずっと山上が出ていったドアを見つめている。


「いや、別に。依頼だからだよ」


「普通の人はメリットのないお願いでここまで犯罪すれすれのことはやらないわよ? 」


と至って自然と俺を詰めてくる。小牧の表情は未だ山上を見送ったときの顔のままで全く表情が読めない。


「それは普通の人の話だろ。俺はどちらかというとおかしな人間な方に入る。人の全てを知り尽くすなんて不可能だ。だから知らなくていい。俺はこの依頼を最後までやり通すと決めただけだ」


「山上さんのこと、好きなの? 」


小牧はついにこちらを向き、不安そうな声で言った。


「いや、別に。まあ、ただ俺、年下には甘いからな…」


「まあ木の上の猫を助けられなくて不安がっている幼女を助けるくらいだものね」


「ああ、まあ、そうかもしれんな…」


と俺はなんとも歯切れの悪い声で言う。


「そう。じゃあこの依頼が終わったらご褒美に先輩って呼んであげようかしら? 」


小牧はからかうようにそう言ってこちらの袖を掴んできた。


そろそろ俺もこいつのからかいに慣れた。俺もそろそろ仕返しをしてやりたい。


「そりゃ光栄だ。じゃあ頑張らないとな」


小牧はその言葉に驚いたような顔をしたがやがて恥ずかしくなったのか俺の肩に顔を埋めてきた。

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