第2話  精神病院に入院ですか?

社長が医師からの診断書に目を通す。


いちべつした社長から

「まぁ、2、3日休養すれば良いでしょう。」


えっ?自分の耳を疑う。

働いていいの?

さっきまでの涙も忘れてしまう。

医師からは、もう働くことは出来ないほど、病んでいると言われたのに…。

あー、そういう会社だったな。

まぁ、それで、私がどうなってもいいんだな。この社長は。


でも、そのために、仕事でミスが発生したら如何するつもりなんだろう。

人命に関わるのに。

会社の体質に呆れ、万が一の時の責任の所在を考える。


とりあえず、うなづく。



その晩、社長の奥さんから電話が入る。

新興宗教?みたいな場所に行くように、奥さんに指示される。


翌日、指定されたマンションの一室に行く。


「病は気から」


と諭される。

心ひとつで、病気は克服出来ると。癌さえも、心ひとつだと。

癌で親を亡くしている私には、聞き捨てならない内容に、論破する。

結論として、話し合いは平行線ですね。とサジを投げられてしまった。

イヤ、私の勝ちだから!


たぶん、此処を訪ねて来る人は、弱り切った心のヨリドコロを求めて来るのかもしれないが、、、

申し訳ないけど、私、心弱くないので!


それでも、仁丹大の砂糖菓子を4粒渡されて、1万円を要求される。紹介してくれた奥さんの顔が浮かび、しぶしぶ丸く収めた。


帰宅後、奥さんから電話がある。

あの砂糖菓子を舐めさえすれば、もう大丈夫だから、明日から働けとの内容。

つくづく社長夫婦に関わり合うのは、危険だと感じるが、目先の収入に窮地する私は、今を生きる術を知らない弱者なのかもしれない。


あたかも、奥さんの言葉を信じた

フリをして、相槌を打つ。

あー、こうやって人知れず、私は、殺されてしまうのかと感じる。


なんとか打開策を考えなくては。



翌日。

また頭の中で、ワシャワシャとどぶねずみが走り回っている。

今度は、ふらつきながら、自力で病院に行く。

子供達を残して本当に死んでしまう訳にもいかない。

借金したとしても、健康にさえなれば大丈夫。まだまだ頑張れる!


腹を決めて、医師に診断書の効力がなかったと、職場の現実を伝える。


「入院しましょう。」


医師が、私を救ってくださる最後の手段として、考えてくださったと感じる。



更に、医師が息子に電話してくださる。社会人になっている息子に全てを一任してもらうようにと。

入院を理由に会社を退職し、早急に入院手続きをする。


で、入院に必要な物を一式背負って、紹介された病院へ。


あれっ?



何にもない白い部屋。

カーテンがない代わりに、鉄格子。

部屋の外から施錠される狭い独房。

首つり防止で、コード的な物禁止。

もちろんテレビも無い。

携帯電話も没収。


白い空間を一日中見て過ごすのか。

健康な人でも気が狂うでしょ。


リアル精神病院ですかーー

リアル怖いんですけど。。ははは…。

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