第27話 イケメン+男前=天野君

夜。

里奈に小暮夫人から協力要請のあった案件を説明する。


「沖縄だってさ」

「仕事で行けるのはいいね」

「だから仕事の後に何泊かできたらいいな」


仕事の予定+2泊くらいかな。


「さすがに長期間過ぎじゃない?」

「だからさ、家族も呼んであげたらどうかな。会社の福利厚生だよ。最近は仕事も順調だしね。里奈が仕事しだしてから効率がすごく上がってるから依頼をこなす数が去年と全然違うんだよ。大口の仕事もこなしているしね」

「さすがに福利厚生は悪いよ。年末の沖縄って高そうだよ」

「全然大丈夫だよ。仕事をしっかりと終わらせて、最終日に合流する感じで。それで合流後に2泊3日くらいの予定でどう?」


里奈も家族を連れて行ってあげたい気持ちはあるみたい。


「家族サービスだよ。ほら、仕事で遅くなったりしてもご両親はちゃんとフォローしてくれるでしょ?そのお返しだよ。まずはご両親に相談してみたら?お父さんも有給とか必要かもしれないし。まだ9月だから前もって準備すれば大丈夫じゃない?」

「一応聞いてみるよ」


里奈は電話を切って親に相談しに行った。




翌日。

里奈と昨日の沖縄の話の続きをした。


「お金は私のバイト代で十分まかなえるよね。私がお金出すよ。旅行自体は大丈夫そう。というか妹が勝手に盛り上がってる」

「福利厚生でいいのに。ほら、会社でもあるでしょ?保養所とかに泊まれるシステム」

「ネットで旅行代金みたら1人15万位からだったよ。うちは3人いるから45万かかるんだよ?」

「別にその位いいんじゃないかな。僕は過去に家族旅行でもっと出してる。しかも母親が言い出して旅行代を出すことになった。うちの母も昔は除霊でかなり稼いでいるはずなのに。里奈だって今までのバイト代がトータル100万は超えるでしょ?全部使っちゃった?」

「バイト代は全部貯金しているよ。だから余裕はあるんだけどね。家族を旅行に連れて行ってあげたい気持ちはあるんだよ。でも家族の旅行費を出してもらうのはやっぱり悪いよ」


どうやら旅行費用を僕が全部負担するのがイヤみたい。


「だったら福利厚生で70%補助で、残りの30%は里奈のバイト代から差し引きでどう?」


それならば自分の負担をもう少し上げてくれと里奈は言うが、最終的な話し合いで7:3の割合に決まった。

よし、これで1週間近く里奈と旅行ができるぜ!しかも家族公認!!


「おーい。月宮、沢木さん。来週末のテーマパークはどうだ、行けそうか?」

「僕は無理かなぁ。ゴメンね」

「私は大丈夫だとは思うけど。忍は無理なのかぁ」

「おいおい、月宮が来ないから沢木さんも参加しないってのは止めてくれよ。上原さんとか楽しみにしてるんだぜ」


僕は無理じゃないけど無理です。

今回のイベントはパスです。里奈とデートだったら行くけど。


「しょうがねーな。まぁ、月宮は次回参加でよろしく。沢木さんはあとで予定をグループチャットで確認しておいてくれよな」


本田君は今回も燃えているようだ。




放課後。

今日は特に予定もないし商店街で甘いものでも買って帰るか。

駅前の商店街に寄ってプリンを購入。ここのプリンは家族みんなが大好きなので少し多めに購入した。

買い物をすまして自宅に戻ろうとした時に通りの向こうから学生の集団がやってきた。同じ学校の制服だな。

あ、天野君のグループだ。彼らはファストフード入っていった。

実に高校生らしい放課後だな。友達とファーストフードに行くとか。

残念ながら僕にはあまり縁がないようだ。さぁ、帰るか。


「月宮君!」


名前を呼ばれ振り返るとそこには先ほどの天野君がいた。


「ゴメン、ちょっと話がしたくて呼び止めた」

「僕に話ですか?」

「うん、ちょっとね」

「あの、生菓子持ってるんです。長くなければ要件があれば聞きますが」


プリンの保冷材はそんなに長く持たないから。


「ああ、単刀直入に。月宮君は沢木さんとお付き合いするつもりなのかな?」

「突然ですね。付き合う付き合わないはわかりません。僕が求めても彼女が求めなければ意味がないですから」

「それはそうだな。現に俺の気持ちは一方通行になってるから」

「でも、それは僕に言ってもしょうがないですよね。僕は天野君の邪魔はしていませんし、里奈に恋愛を強要もしていないですし」

「わかっている。僕もね薄々わかっているんだよ。彼女の気持ちはこれっぽっちも俺に向いてないって。でも諦めきれないんだよ。好きになっちゃったからね」


僕に言ってもしょうがない。里奈に気持ちを伝えればいい。


「もちろん俺も月宮君の邪魔はしない。いや、アプローチしてるんだから邪魔になるのか!?まぁ、とにかく卑怯な真似はしないよ。俺は正々堂々と気持ちを伝えたいから。それが無理だとしても」

「男前なセリフです。でも僕が彼女を掻っ攫うかもしれませんが恨まないでくださいね」

「ああ、望むところだ」


天野君は手を差し出してきた。握手?僕も手を差し出して天野君の手を握る。

”それじゃまた”と言って天野君は戻って行った。

天野君は男前だと思う。顔も性格も。めちゃくちゃ主人公キャラじゃん!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心霊とか吊り橋効果抜群だろう @250mg

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ