JUST ANOTHER BUGGY STORY

夢美瑠瑠

JUST ANOTHER BUGGY STORY



 わたしは、富呂・久羅麻(プロ・グラマ)といって、中学生の女の子なのですが、RUBY(ルビー)というプログラミング言語で、プログラミングをするのが趣味なのです。

 RUBYは日本人が開発したプログラミング言語としては最初にJIS規格に承認されたという、秀逸な来歴があって、何よりも「楽しく」プログラミングをできるように、というコンセプトで設計されているそうです。

 プログラミングをしていると、本当に楽しくて、私は最初はババ抜きとかのカードゲームや、サイコロを振って街中を周遊するゲーム、そういうものを作っていたのですが、だんだんに進歩してきて、架空の世界の、架空の金融市場で電子マネーをトレードしたり、そうしてその金融市場がクラッシュして戦争が起きるとか、そういうシミュレーションをして、壮大な?ゲーム世界を作成したりするようになってきたのです。

 そうするとだんだんに発想がふくらんで凝ってきて、どれだけの資金でどういう兵器を開発できるかとか、経済やら政治やらと戦争や戦略の関係についてネットで勉強したりして、色々な国の、色々な政治体制とか政治家とかもゲーム内に登場させて、複雑なパワーゲームやマネーゲームの網の目を構築したり、地域紛争で小国を滅ぼしたり、その国の伝統のある王家の系譜を詳細に仮構してシャレですが、ポエティックなレクイエム曲を作ったりして、全体のゲームのシナリオの樹形は千変万化に拡がっていって、私だけのそういう架空世界はどんどん精緻に、リアルになっていくのです。

 未来にこういう技術が発明されて、それが戦争にどういう風に応用されるとか、天変地異で突発的な災害が起きて貿易立国の島国が滅ぶとか、スパイ組織の暗躍で超大国の枢要な指導者が暗殺されるとか、それで世界全体のパワーのバランスとかがどう変わっていくかなあ?とか?そうしたイマジネーションの豊富な発想も織り込みたいとか、いろんなアイデアが私の脳内にはてんこ盛りで、wそうしたアイデアもゲームに生かしていきたいのですが、私は基本的に自分以外の他人が嫌いなのでw、ネットワークゲームみたいにはする予定はありません。

 あくまでもワンアンドオンリーの自分だけの世界の中に、完結した世界観?みたいなものを創造していきたくて、最後には自分のパーソナリティーを忠実に再現した大文字のクリエイターの「女神」を降臨させて、それが「大破壊神」でもあって、長ぜりふを喋らせた挙句に、盛大にこの架空世界を滅亡させる、そういうシナリオも面白いかな?とか思っています。


… …


 プログラミングをしていると、必然的に「バグ」というのができてきます。

 要するにプログラミング言語というのは論理の骨格なので、どこかに論理的な破綻があると正常に機能しない。人間だから、そうした破綻を往々にして見過ごしていて、部分的なそうした間違いを「バグ」⇒「虫」と、称するわけです。その日も私は作った波動砲という兵器の炸裂する部分の、アルゴリズムがどこかおかしいというので、「バグ」を探していました。

 十数個もバグを「駆除」したのですが、まだちゃんと動かない。

 「どこがおかしいんだろう…?」と悩む感じになってきました。

 わからないままにブラインドタッチでしばらくキーボードを叩いていたのです。…

 「あれ!?」

 と、なんということでしょう、画面の上に「ハンミョウ」のような極彩色の本物の昆虫の、ちょっと禍々しい感じのグラフィックが突然現れて、低い声音入りでこう喋るのです!

 「お嬢さん、年端もいかない小娘が世界を創造するなんて罰当たりなことはやめたほうがいいぜ。「ムシ」が良すぎるゲームだよ。虫食いだらけにしてやるからなーわはははは」

 

 …そうして私が苦心して積み上げてきた「リアルワールド」というゲームのプラグラムは全て壊されて水泡に帰してしまったのです…


 誰の仕業かは分かりません。

 アノニマスかしら?


… …


 こういうひどいことがあったのですが、私はめげずにプログラミングを続行しています。

 そうして今度は「宇宙」そのものを創造して、私がその神様になるというゲームを

作成中なのです…



<終>


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