第12話

モンスターは討伐され、村に続々と運ばれてくる。討伐が終わった後、冒険者たちが協力してモンスターを運び込んでいる。


冒険者達の雰囲気は明るい、2000を超えるモンスターを討伐して依頼は成功、報酬金も入る。明るくないわけがない。

ハクトが亜空間魔法でモンスターをギルドの換金所に運び込んで、これからモンスターを鑑定に入る


2000を超えるモンスターは、全て並べられ少し気持ち悪い印象を持つものも居るだろう


ここまで、するのに大分時間がかかっている。しかし、本来なら運び込むのに2日、3日かかるのでハクトのおかげで大分時間が短縮されている


「いやー。助かるね。」


「ほんと、ほんと」

「<ドラゴンスレイヤ->様様だな」

「今日ももう一体倒したらしいぜ」

「ドラゴン2匹はヤバいな」

「もう伝説クラスの魔法使いじゃないか?」


皆は、2体目のドラゴンを倒し亜空間魔法を持つ、ハクトの話で持ち切りだ


全員ギルドの近くで冒険者たちは、待機している。室内どちらかで待機中だ。

理由は、すぐに報酬を貰いたいからだ

途中で逃げた奴らもちゃっかり換金所にいる

ちなみに、ハクトは換金所でモンスターを亜空間から出しているので、ここにはいない



「全く、調子がいい奴らだ」


冒険者ギルドの外の壁に寄りかかり、リーゼンは、呆れながら冒険者たちを見ていた。マドウもリーゼンの隣でも腕を組んで壁に寄りかかっている


「今回の依頼は、参加者全員に報酬が配られるから仕方ない。」

「逃げたくせに、納得していない奴も居るぜ。かなりな」


リーゼンは目を向ける。マドウもつられるように向けると。


「ったく、図体はデカいくせに一目散に逃げやがって」

「あいつは何もしてないだろ。」

「あれは、ないな」


懸命に働いた者たちからすれば、ただ逃げただけの者たちと同じ報酬金は納得できないのだ

そこで、冒険者たちがざわめきだした。ハクトが換金所から帰ってきたのだ


「よっ、この村の英雄!」

「<ドラゴンスレイヤ->凄すぎるぜ」

「我らが<ドラゴンスレイヤ->は無敵だな」


拍手をしながら、ハクトを出迎える。ドラゴンを討伐したので当然の対応だ


「いや、、大したことじゃないですよ」


謙遜なのか、どうなのか分からないが、照れながら、他の冒険者達に出迎えられる


「いや、流石だ。<ドラゴンスレイヤ->」


先に逃げた、図体のデカい冒険者が腕を組む。


「ちょ、急に腕組まないでくださいよ、ザコルさん」


男はザコルと言うらしい。マドウもこの村の冒険者は大体名前は知っているが、彼は知らない


「お前知ってるか?あいつ」

「知らないな、、なんとなく顔は分かるが」


リーゼンがマドウに聞いた。顔は何となく分かるくらいしか印象がない


「最近、<ドラゴンスレイヤ->に絡んでるらしいぜ。つながりを持ちたいんだろうな」

「なるほどな、それであんな馴れ馴れしくしてるのか。」

「くだらないな。見ていて恥ずかしいぜ。」


周りも一部では、そのような反応が多いが<ドラゴンスレイヤ->がいるので何も言えない


ワイワイと騒ぐ冒険者達、騒がないのはほんの一部だ。特に騒いでいるものは、逃げた者たち。温度差はあるが騒ぐ奴らが多いので全体的にみると明るいものになるだろう

しかし、そこに怒声が響き渡った。


「おい、冒険者ども。名に騒いでんだ!」


村の住人達が数名が怒りの表情を向けていた。


「お前たちが、モンスターをしっかり倒さないから俺の家が壊れたんだ」

「そうだ!」

「どうしてくれるんだ!」


次々と文句を言う。確かに死者は出ていない。依頼は成功と言えるものだろう



しかし、村の一部が崩壊してしまっている。

被害は最小限には抑えられているものの、ないわけではない。



「弁償しろ!」


「そうだ!お前たちがしっかり、モンスターを抑えないからだ!」


村の住人達からの怒りの声。弁償何て出来るわけがない

誰も生活があるので、あまりしたくないだろう


「聞いたぞ!モンスターから逃げた奴も居るんだってな!」


村人の一人が言った。一部がギクリと額に汗をかく


「そんなんで、報酬何て貰いやがって!」

「誰だ。逃げたのは!出てこいそして、謝罪と弁償しろ!」


全員がザコルとその仲間たちを見た。準備もろくにせず結局の逃げた、誰も庇わない


「おい、おい、、俺たちを見るなよ、、」

「そうだ、、そうだ」

「俺たちは悪くない、、」

「お前たちも何か言えよ、、」


おどおどしながら、弁明を試みる。先ほどまで、一緒に騒いでいた者も確かに逃げたならしょうがないと距離を取り始めた

逃げた者の周りは、誰も居なくなりそこだけポッカリ穴が開いたようになった。


村の住人達がそこへ寄って行く。逃げた者たちは十数人。村人も十人ほど



「逃げたのか!お前たちは!」

「なんて奴らだ」

「弁償するんだろうな!」


どんどん、ヒートアップしていく。村人達


「いや、そんな義務はないぞ、、」

「そうだ。そんな義務は、、、」


ザコル達も、おどおどしだした。しかし、その中の一人がマドウを見た


「あっ、Sランク冒険者のマドウも逃げてたよな?確か、、」

「そうだ。アイツも同罪だ!」


今度はマドウにも視線が集まった。確かに、戦線から離脱したので、少し変な雰囲気になる

しかし、リーゼンがすぐに庇った


「おい、こいつは村を守ったんだぞ」


リーゼンが前に出て言うが、あまり効果は無い


「逃げ帰って、たまたま雑魚モンスターが居ただけだろ!」


ザコル達の一人が、そう言った。確かにそう取れなくもないとドンドン雰囲気が悪くなっていく。村人達もマドウを睨み始めた


「なあ?もしかして?」」

「逃げたんじゃね?」

「逃げた罪悪感で、村のモンスター倒したとか?」


周りでも、ひそひそとそんな話が聞こえてきた。


「おい、こいつがそんなことをする奴に見えるか!」


リーゼンは声を荒げて周りに、訴える。しかし、余り効果は無い。そこへ、一人の男が声を上げた



「少し、いいか?」



それは、マドウが助けた剣士だった。男はそのまま話し始めた


「彼は、一人で戦況を動かしていた。俺が怪我をした時も彼が助けてくれた。他にもいるんじゃないか?彼に助けられた人が?」


周りを見渡しながら言うと、確かにと何人か心当たりがある人がいるようだ


「彼は尽力したと思うのだが、皆はどう思う?私は彼は誰よりも懸命に働いたと思うが?」


確かに、、と空気が変わり始める。これは、不味いと感じたザコル達は再びマドウを言及する


「でも、それが龍から逃げていない証拠にはならないだろ?」

「そうだ。結局最後は命惜しさに、逃げたんだ。天道ハクトに龍を押し付けて!」


確かに一理あると、思う者が現れた。がやがやと誰もが考察を開始する。もしかして?逃げたのではと思う物は少なくないようだ、、、


「俺たちは、家の破壊と謝罪を弁償をしてもらいにを来てるんだ。早くしろ!こっちも生活があるんだ!」


埒が明かない議論に村人がイライラしだす。彼らにも生活があるから仕方ない


「そんなの、俺たちだって!」

「そうだ。そうだ」

「弁償なんて無理だ」


ザコル達も生活があるので、無理だと断る。マドウはずっと腕を組んで黙ったままだ


(これは、身から出た錆なのかもしれないな、、、、そう思われても仕方ない行動をした、、俺にも、、、、)


ザコル達の一人がそうだと声を上げた。


「マドウが払えばいいんじゃないか?あんな屋敷に住んでいるんだ!」


それに便乗し始める。


「そうだ。村人の家の弁償位できるだろ!」

「お前が全部背負え!」


責任をマドウ1人に押し付けて、自分たちだけ助かろうとする。流石にリーゼンはキレた


「おい!、、いい加減に!」


キレようとしたところ、マドウが手で制した。それでリーゼンが動きを止めた


「わかった。俺が全て弁償代をだそう。」

「おい!お前にする必要は、、」



「いい、こいつらが言うのも一理ある。そう取られてもしょうがない行動をした俺にも責任がないとは言い切れない」


リーゼンが止めようとするが、マドウは首を振った

マドウがそう言うと、村人達は落ち着き始めた


「、、弁償してくれるんだな?」

「ああ、明日の朝ギルドに集まってくれ。お前たちの家の具体的な破損などを一日を通して確認したい。だから、申し訳ないが、今日の所は帰ってくれないか?」


村人達は顔を見合わせ、それならと言った表情で納得をしたようで帰って行った


「良かったー」

「弁償何て無理だぜ」


あまり大きな声では言わないが、嬉しそうに笑っている。ザコル達。

リーゼンは拳を握る。


「あいつら、、」

「気にするな。アイツらにも生活はあるんだ。幸い俺は、そこまで支障はない」

「そういう問題じゃないだろ」

「仕方ないさ。人生上手くいかない事もある」


そこへ、先ほど皆の前でマドウを庇った剣士が歩いてきた


「すまない、俺が上手く説得できないから、、、」

「いや、あの時、俺を庇ってくれただけ感謝している。」

「そうか、、、良いのか?あんたは?」


自分の事のように悔しい表情でマドウを見てくる。この人は良い人なのだと、分かった。


「ああ、大丈夫だ。」

「何だったら俺も、、」

「俺も出すぜ。」


剣士とリーゼンは弁償代を出そうと、しているのだろうが軽く首を振る


「お前たちも、生活はあるだろう。無理はしなくていい」

「そ、そうか、、、、、、しかし、」

「そうだ。これじゃお前が余りに不憫だ。」



二人も今回の結果に納得いかないところはある。


「本当に大丈夫だ。今まで運が良すぎたのかもしれない。ほぼ何事もなく最高ランクの冒険者になったからな。」


フッと自嘲するように笑った。


「これくらい、トータルで考えてもおつりがくる。」

「、、すまない。」

「お前が一番頑張ったのにな、、こんな結果にしちまって面目ない」


二人は頭を下げる。深々と彼らは悪くない。決して、それでもこうして下げてくれるのが嬉しかった


「その気持ちだけでありがたい。頭を上げてくれ」

「ああ、分かった」

「っち。アイツらいつかぶっ潰してやる」


剣士の男は、頭を上げた。リーゼンはザコル達を睨みながら顔を上げる


「そう言えば、ちゃんと礼を言ってなかったな。あの時は助かった。礼を言わせてくれ。ありがとう。」


握手をしたいのか、手を差し出す。マドウも手を伸ばすながら口を開く。薄く笑いながら



「冒険者は助け合いだ。気にしなくていい、、、ライズ・イルペール」


マドウが自分の名前を知っていたことに驚く。まさかSランク冒険者の彼が知っているとは思わなかった


「知ってもらえていたとは、驚きだ。俺なんかを、、」

「知っているさ。Bランク冒険者で剣士。そして左利きの事もな、、


そこまで知られているとは、驚きを通り越して笑いが込み上げてきた


「おいおい、何でそんなに知ってるんだ?」


笑いながら、答えるライズ。


「前に依頼をしてる時に見てな。その時印象に残ったんだ。剣の振り方で熟練者と言うことは分かった」

「流石だな、、」


ライズは少し、尊敬と言うよりすごさの一つを垣間見て信じられないと言った感じだ。



「こいつは、冒険者の顔は大体覚えてるぜ。まあ、ここまで特徴を覚えてる奴はこの村では数人しか居ないから。それはあんたの実力があるってことだな。」

「そうか。Sランクに覚えらているとは光栄だな。」


少し嬉しそうに、笑った。マドウもつられるように笑う


「俺なんて、まだまださ。」

「そんなことはないぜ」

「ああ、アンタはこの村の英雄だ。俺たちが忘れない」


リーゼンと、ライズ2人が褒めてもらえてうれしくなった。心が軽くなる

そこへ。


「みなさーん、報酬金を払いますから並んでください」


ミナミがギルド内から出てきた。それを聞くと冒険者たちは浮足立つ

ドンドン列に並ぶ。マドウ達も並んでもらった。

大体500000エーテルだ。こんなにもらえるのは普通は珍しいので皆笑顔を浮かべる


「おお、こんなに!」

「やったぜ」

「いやー儲けたね!」






しかし、ギルド内は貯蓄が大分減ったのでしばらくは、低賃金依頼が増えそうな感じがする


「うわーギルド内のお金大分無くなったんじゃない?」

「これからは、報酬金とか下げないとね」

「依頼受けてくれるかな?」



ギルド職員も大変そうだ。マドウはそれを眺めた後屋敷に帰る為、歩き出した

そこへ、リーゼンとライズが来た。マドウは歩みを止める


「おい、マドウ。何かあれば俺たちを頼れよ」

「アンタには恩がある。何でも言ってくれ」


心強い。ただそう思った


「ああ、頼りにさせてもらう」


そう言うと家に向かって再び歩き出した。



2人と別れると足取りが重くなった。夕日に照らされながら、1人帰って行く。

周りでは、村人達がようやく落ち着きを取り戻し、本来の明るさが戻っていた


「ただいま、、」


屋敷について、ドアを開ける。心なしかドアまで重いようなそんな気がした



「お帰りなさいませ」


リリィが出迎えてくれた。


「今日は、トレーニング休みでいいか?」

「ええ、今日くらいはいいでしょう」


今日はどうにも、こうにもやる気になれなかった。

腕で体が上がる気がしない。


「そうか、、じゃあ、夕食に、、」

「分かりました。でもその前に、そこに膝立ちになってください」

「なんで?」

「早くしてください」


ゆわれるがまま、膝たちになる。

靴を脱いで廊下に膝をつく。

リリィはゆっくり近づき、マドウをそのまま抱きしめた。


膝たちなので、リリィの胸に押し付けられる


「お、おい」

「じっとしててください」


されるがまま、抱きしめられる。少しするとリリィはこちらに聞いてきた


「何か、あったんですね?」


マドウは先ほどのやり取りを思い出した。何が正解なのかわからなかった


「見てたのか?」

「いいえ」

「じゃあ、、、聞いたのか?、、」

「いいえ」


すべて否定された。じゃあ、何で知ってるんだ?


「勘か?」

「それは、、、まあ、そんな感じです」

「いい勘、してるな、」



彼女は、ずっと抱きしめた。


「一番は、ご主人様の顔ですよ。主の顔がいつもとは違いすぎますから、すぐわかりました」

「、、、そうかよ。」

「だから、今日だけは、優しくしてあげますよ。」


リリィはしばらく、マドウを抱きつけた。

マドウには、支えてくれる人がいる。それを、再認識した




















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