第11話

「おや、気づかれましたか。この距離で、しかもあんな戦乱中にこれは参りました。」


白衣の老人。痩せていて、腕も細い弱弱しい印象を持つだろう。老人は先ほどからずっと観察していた


まずは、龍を討伐した男の観察に来たのだが、、、それよりも目を引く者がいた。剣先が見えない。それだけでなく視野の広さ。情報処理。

全てがずば抜けている。


「これは、良くない。ここの近くの研究所は捨てたほうが良さそうだ」


男はそう言いながら、余裕そうに笑っていた。


「龍のサンプルは、貴方達にあげましょう。」


老人はそのまま、戦乱の起きている場所に背中を向けて去って行った。




黒い何かが近づいてくる。そこにいる全員が気付き慌てだす。


「おい、何だ?」

「デカい、かなりあるぞ」


数人が声に出して、恐怖する。声を出さずにいるものを背筋を凍らせた。


「おい、、あれって」


全員がそれを分かってしまった。


「龍だ。。。」


誰かが呟いた。それは、龍。先日ハクトが討伐したよりも、デカい。


「あんなの、無理だー」

「俺も、、」

「逃げろー」


逃げ出す者が現れた。楽観的に考えていたもの中心に

図体のデカい男とその周りでワイワイやっていた奴らだ。

鋭い爪、黒い鱗、大きな翼に、全てを薙ぎ払うのではないかとも思える尻尾。


これに恐怖しない者はいないだろう。


我先にと逃げ出す。龍はそこまで迫っている。そして、逃げ出す者が現れたせいで境界線の守護が崩れる。



「馬鹿野郎。逃げるな!」


リーゼンが声を荒げるが、聞かない。むりやりでも連れ戻したいが目の前のモンスターを放置はできない。


「くそ、」


大剣を振り回し、オークを斬る。しかし、横からモンスターが先に行く。

村に行かせるわけには行かない


「まて、こらあああ」


大剣で横のも斬る。血しぶきが上がり絶命する。しかし、収まらない。

どんどん、先へ行かれる


「不味い。村が、、」


龍が迫っている。均衡が崩れたことで、怪我をする者もあらわれた。


重症数名。軽傷はかなりいる。


龍がこちらに飛んでくる。もうすぐ、到達だ。こちらに、突進してくる、龍に風の光線が当たる


「<エアロブラスター>」


龍に魔法をハクトがあてた。それにより、龍が地面に落ちる。


「僕が、、あれを倒します。」


誰かに言うことなく、ハクトが呟いた。龍を倒した実績があるので行けるかもしれないが状況は単純ではない


村に向かったモンスター。怪我を負った。冒険者はどうするのか?

戦況は悪い以外に言えなかった







一人の男がわき腹から血を流していた。痛々しい表情で手で押さえる

近くにオークがこん棒を持って、こちらに向かってくる


「クソ。来い、、」


片手で剣を持ち、傷口を抑えながら戦う。こちらに向かってこん棒を振り回す。

先ずは避けながら後ろに下がる。もはや周りは見えなかった。


ただ、このオークを何とかしなければという使命感だけ。剣でオークのこん棒と打ち合う。最初は拮抗してたが、徐々に差が出始めた

オークがこん棒をこちらに叩き落す


剣でガードするが傷口に響き力負け、剣があらぬ方向に飛んでいく

手で押さえながら、うずくまる。上にはこん棒を振り上げたオーク。

死。を意識した。


しかし、こん棒を振り上げたままオークの首が飛んだ

そのあと、すかさずマドウが彼の傷治療をする。彼の傷口に手を当て淡い光で傷を治療する



「すまない。、、」


苦し気に呟くが、大丈夫だとマドウは首を振った。治療しながらマドウが口を開いた


「この後、俺は村に行ったモンスターを狩らなければならない。

ドラゴンは<ドラゴンスレイヤ->が何とかするだろう。お前たちはあと少し此処に居るモンスターを何とかしてくれ。」


「わかった。」


既に治療を終えマドウは離れた。治療された男は周りを見て愕然とした。戦況が回復していた。

重症者はいない。僅かな傷を抱える者はいるが、大分持ち直していた


「あの戦況を一人で持ち直させたのか。。」



規格外。という言葉が浮かんだ。最近は<ドラゴンスレイヤ->の方が、強いだのと言われているが、先ほどまで何体モンスターはいた?

殆ど消えている。あの男は最初から、ずっと戦況を一人で回していた。


手薄な守りを見つけたら、カバー。モンスターに傷を与えられたものが居れば治療しながら、モンスターを処理

自身の陣地は絶対にモンスターを通さず、それでも他のカバーをし続ける。


ハッキリ言えば、地味。しかし、それを出来るかと言われたら間違いなく無理だろう。




「負けてられねええ」


男は剣を拾う。そして、再び戦い始めた




(町に向かっているが、一足遅い)


猛スピードで村に向かいながら、モンスターを狩る。時には逃げて此処にいる冒険者がモンスターに襲われそうだったので助けながら


文句は言いたいが、今はそれどころではない。


他の逃げてきた。冒険者を追い抜く。彼らはマドウに気づくことは無い。


何か風が吹いたと思うだけ



マドウは村に誰よりも早く走った。




マドウの屋敷。

リリィは一人、本を読んでいた。基本的に屋敷の仕事は、すぐに終わらせてしまうので暇なのだ。


文字を読みながら、次のページをめくろうと手を伸ばすとめくらずに、止まった


(何か来てる、、かなりの数、、、)


本を閉じ、屋敷から出る。

やはり何かが来ていると、感じ向かった


(ご主人様がいるのに、群れを逃した?、何かトラブルでもあったのかもしれませんね、、、)



リリィは走り出した。村はすでにモンスターが複数来ている。


ハウンド

オオカミの様な見た目の肉食モンスター

それが、村に入り込んだ。


「モンスターだああ!」


一部の外にいる。村人が声を上げる。家にいるものは怯えて出てこれない。

尻もちを搗きただ襲われるのを待つだけになってしまう。

ハウンドが口からよだれを出して、襲い掛かる。


「うああああああ」


男が叫ぶ声を抑えきれない。しかし、次の瞬間ハウンドに飛び蹴りをするメイドと言う奇妙な光景だった。


「早く逃げてください。死にますよ」


男はメイドであるリリィに一礼すると、すぐに去って行った。

街のいたるところで、モンスターが現れている。


けが人も出ているはずだ。村の一部が崩壊している


(とりあえず、村を守らないと、、)



リリィは村のため動き始めようとした時


「リリィ。」


「ご主人様!」


マドウが村に到着した。すぐに動き出さなければならない。簡潔に指示を出す。


「事情は後で言う。とりあえず、村の人達を守れ。」


「分かりました。」


そのまま、すぐに二人は別れた。マドウは住民の家の屋根を走りモンスターを見つけては、排除していた。


村は僅かに被害を受けていた。しかし

幸いなことに、モンスターの数はそこまで多くない。確実に仕留めて行けば、被害は最小限に抑えられる。


屋根の上を走りながら、マドウは村を見回る。


「お母さん。をいじめるな!」


村の一角、小さな家の前で怪我をしている母親を庇っている子供を見つけた。

オークが子供にこん棒を振り上げる、子供は木の棒で立ち向かおうとするが

このままでは、死んでしまう


オークに一瞬で近づき、蹴りをかます。数メートル吹っ飛ばして子供見えないところで切った


子供は呆けて足から力が抜け、その場で膝が折れる。しかし、すぐに母が怪我をしているので寄り添う


「お母さん!」


背中から血を流している、母親。泣きながら呼びかける。

母親は意識はあるようで子供を抱き寄せた


「おかあさん、おかああさあん!」


「大丈夫だ。」


モンスターを討伐して、一瞬で戻ってきたマドウが母親の背中に治癒の魔法をかける。

<ヒール>

マイナーな魔法ではある

だが、魔力があるなら誰でもできるというわけではない。

淡い光で、背中を治療すると母親は眠りについてしまった


「おかあさん!」


心配した子供が叫ぶ。死んでしまったのではないかと、不安になってしまった


「、大丈夫。寝ているだけだ。」


「本当?」


「ああ、本当だ。」


マドウは笑いながら、子供の頭を撫で安心させようとする。

涙で顔が濡れているが少し笑顔が戻った


「俺はもう行く。お母さんは、お前がしっかり守れ。」


撫でた後すぐに立ち上がり、そのまま跳躍して再び村の為に見回りをした




その頃、


「喰らえええええ<インフェルノ>。」


「グウウうアア」


ドラゴンの号音が響き渡る。元のクロがさらに、焼かれて黒くなっていた。ハクトは倒したのを見ると一息ついた。


インフェルノ


炎の上級魔法だ。獄炎の波とも呼べる。基本魔法の火力は最高峰の魔法である

決着は、あっさりしたものだ。ただ、ハクトは上級魔法をひたすらに連発してドラゴンにダメージを与えた。


そして、最後のインフェルノでドラゴンを焼いた。



これだけだ。十分凄いもではあるが、、


周りでは、すでにモンスターは殆ど討伐されていた。つまり、これで何とか

片は着いた、ということになる



「ううおおお、倒したー」


「あとは、雑魚だけだな。」


他の冒険者も、やる気が上がり一気に仕留める。

この後数分後。

完全にモンスターは討伐され、依頼は無事達成された。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る