第10回 艦隊これくしょん-艦これ-(PC)

「暁の水平線に勝利を刻みなさい!」


 そんなキャッチコピーと共に登場したブラウザゲーム。私は当初、ネットゲームは苦手としておりました。MMORPG系もいくつかやったのですがそのいずれもが長続きせず、アカウントも放置されたまま。そんな私が長年にわたってハマり、今でもそのコンテンツで楽しませてもらっているのがこのゲームです。


 舞台は海。かつての日本海軍が保有していた駆逐艦、巡洋艦、戦艦、空母などが擬人化し、艦娘かんむすとして戦う彼女たちをプレイヤーは提督として率い、運用していくゲームとなっています。


■設定のあやふやさ

 このゲームの特徴として珍しいのが、「明確なストーリーを持たない」ということです。多くのゲームでは前史や神話などが関わるのですが、このゲームには一切それがない。深海棲艦しんかいせいかんと呼ばれる存在が海に跋扈し、その支配と戦うこと以外は一切不明です。今にして思えばこのあやふやなストーリーこそがプレイヤーたちに想像を働かせ、火をつけた一因ではないかとも思います。

 艦娘という存在はどういう存在なのか。メインで活躍するキャラクターにすら明確な設定が作られていません。あくまで旧日本海軍の船と同じ名前を持ち、そのデザインや発言に艦艇としての経歴が関わるというだけ。その為に様々な考察、解釈が作られ一人一人プレイヤーごとに世界設定もキャラ設定も完全に違うと言えるでしょう。


 曰く、艦娘は巨大である。曰く、艦娘は元人間である。曰く、艦娘は船の魂が実体化したものである等々。提督に至ってもプレイヤー=提督の分身というだけでなく、提督像も人によって違います。ある人は青年、ある人は若い女性。ある人は少年少女、ある人は老人。場合によっては人ですらない。そんな提督たちがあちこちで生み出されています。その為、二次創作があふれかえり、それぞれの鎮守府の日常がバリエーション豊かに描かれることになりました。

 この辺はアニメにも影響したと言えます。普通ならば提督=観ている自分たちと重ねる場合もありましたが「うちはうち、よそはよその鎮守府」と完全に切り離して観ていた覚えがあります。


■作り込まれた細部

 あやふやな設定の反面、そのデザインや海域、イベントの背景など多くの部分が細かく作り込まれています。例えばイベントのモデルになった戦いに関わった艦娘を艦隊に組み込むと特定のルートで進撃できるなど、かつての歴史で戦った再現あるいはリベンジを狙うことができます。この辺りは史実を戦略に組み込むと言うこれまでのゲームになかった取り組みができていたと思います。

 そのため歴史を学ぶ機会が増え、昔は複雑で苦手だった近代史から戦時中に至るまでの流れをかなり調べることになりました。お陰で今はこの辺りは艦娘を通じてかなりの知識を得ることができたと思います。


■個性豊かな艦娘

 かつての艦艇たちが元になったキャラということもあり、その数も膨大です。そしてその性格も皆違い、それぞれ魅力的な個性を発揮しています。まあ一部の艦娘に偏った人気があるのも事実ですが、基本的にどの艦娘にも人気があります。一時期おーぷんスレに入り浸っていた経験があるのですが、その頃からどの艦娘もいわゆる「嫁」認定されていない艦娘はいなかったほどです。

 そもそもこのゲームではいわゆる「こいつさえ育てていれば勝てる」というキャラクターが存在せず、レアリティも強さにそこまで関わるものではありません。先にも挙げた通りシナリオに史実も関わるために万遍なく育てる必要が出てきます。かつての戦争で艦隊を編成していたメンバーで固めるもよし。姉妹艦たちで編成するもよし。強者になると普通は戦力になりえない艦艇ですら艦隊に組み込んで攻略する方もいました。

 誰もが自分なりの楽しみ方を見出すことのできる自由度。それがこのゲームの魅力でもあります。

 ちなみに私のお気に入りは金剛、榛名、大鳳、衣笠、矢矧、響、長波、鈴谷、瑞鶴、神通、霞、磯風、嵐、陽炎、夕立、朝潮、満潮、荒潮……ええ、多すぎます(笑)

 同人関係に触れているとその人の愛が伝わってきますのですっかり染められてしまうことは多いですね。


■基本的に課金要らず

 ブラウザゲームとなればやはり問題になるのは課金。しかしこのゲーム、まったくと言っていいほどに課金が不要です。修理・建造ドックを増やしたりの増設やレベル上限を突破するための「ケッコンカッコカリ」を行うための指輪を購入するには多少の出費は必要となりますが、それ以外はほぼ必要なし。

 よくあるのが課金をしてガシャを回すことでレアリティも高く戦力になるキャラを手に入れると言ったものがありますが、このゲームでは集めた資材(燃料・弾薬・鉄鋼・ボーキサイト)を特定の割合で注ぎ込んで建造することで一隻の艦艇を得ることができます。これがいわゆるガチャに当たるでしょう。ですがこれらの資材は艦隊運用(出撃・修理など)でも必要となるため、濫用することは控える必要があります。さらに、課金して資材を一気に得るよりも時間をかけて遠征をおこなった方が資材はたまるし経験値も手に入るしといいことずくめ。「課金する方が損」と言えるほどのゲームです。

 歴代のプレイヤーの中には大量の資源を必要とするイベントにおいて全ての資源をゼロにしてから挑むと言う縛りプレイを行う猛者もいました。(しかもちゃんと攻略しています)

 大和や武蔵を建造するような大型艦建造の際の大量の資源消費という沼も存在しますが、そもそもこのゲームは強いキャラを引けたからと言って、基本的に艦隊の効率的な運用ができなければ詰みます。凄い人は本当にスペックの低い艦だけで攻略するので、完全に愛だけで戦っていると言えます。


■まとめ

 七周年を迎え、今でもコンテンツとして大規模な存在と言える艦これ。ある年のエイプリルフールでは数多くの企業のサイトがこのゲームのパロディを行うほどに与えた影響は大きい物でした。このゲームを始めた人の中には戦闘機を実際に作っていた技術者がいたなんて話もあります。

 戦争関係は触れること自体がタブー視されてしまうようなところがありますが、一般とは違った入り口から戦争に触れ、当時を考察する機会、当時の戦っていた方々のことを想う機会を得ることができました。このゲームを始めたお陰で新たに知ったことも多いですからね。

 戦争を盲目的に否定するのではなく、かと言って肯定するわけでもなく、自分なりに当時のことを調べ、考えることはとても大事ではないかと思いました。


 最近はシステムが少々複雑になり過ぎてしまっていますが、歴史好きも、キャラを愛でるためでも、どんどん深みにはまっていくゲームだと言えるでしょう。

 

■余談

 実を言うとこのゲームを始めるまで私は創作関係から離れていました。艦これをやることで史実との絡みや深い作り込み、キャラクターにすっかり魅せられ、二次創作を通じて創作に復帰しています。ある意味、私が現在創作を続けていられるのもこのゲームのお陰であると言えるでしょう。

 今は少し離れていますが、またどこかで復帰したいですね。


 今回はこの辺で。

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