第8話 居場所

食堂で昼食を終えた一同は、談話室へ戻った。

誰かと食事をするなんて数年ぶりだった。

マリウスは嬉しさのあまり口元が緩んだ。


「…もうバレちゃったけど、パーティーの準備するからちょっと外ぶらぶらしといて!!!」


席に着くなり、マリウスは部屋から追い出されてしまった。


「…まいったな。」


特にすることもないので、クリムゾン本部を探検することにした。


********************


…しまった。迷ってしまった。

マリウスはそばにあったベンチに腰掛けた。

訪れて数日しか経っていない、学校の何倍もある建物だ。迷うのは必然だったのかもしれない。


時刻は16時。そろそろ戻らないと。

せっかく準備してくれたのに遅れるのは失礼だ。マリウスは慌てて立って小走りで進んだ。


(誰かいないかな…?)


手当り次第走り回って数分。

誰かに道を尋ねられればいいのだが。

キョロキョロ辺りを見回すと_______________

ハドリアヌスが喫煙所でタバコを吸っていた。


マリウスに気がついたのか、ハドリアヌスはタバコを灰皿に捨てて外に出てきた。


「よぉ、元気かクソガキ?」


サングラスをかけ直しながら、ハドリアヌスは笑いながら言った。


「…はい。怪我も治りました。」


「へっ…そうかい。なら、頑張って訓練して強くなってくれたまえ。くん?」


そう言ってハドリアヌスは去っていった。


使えなくても即潰すからな?


ハドリアヌスの言葉が頭に浮かび、マリウスは唾を飲み込んだ。


「…あ、道聞くの忘れた。」


色々積み重なりマリウスは肩を落とした。


********************


結局なんだかんだで談話室に帰れたのは、それから30分後だった。

扉を開けて中に入ると同時に、耳を突き刺す破裂音が相次いでした。


「マリウスくん!!!!!!!ご入隊おめでとーーーーーーう!!!!」


カエデがそう叫ぶと、ユースケとクレーエも続いて言った。


「よろしくな!大丈夫!お前ならモテるって!」


「…よろしくな。」


そんな中、ロキは


「ケーキはまだか?さっさと食わせろ。」


と、駄々をこねていた。


「ロキさん、主役はマリウスくんですからね?」


カエデは呆れながらクラッカーのテープを集めている。今になって火薬の匂いが鼻にきた。


結局ケーキのほとんどはロキが食べてしまったり、

クレーエがめちゃくちゃ酒に弱かったり、ユースケが泣き上戸だったりと、カエデが実は大食いだったりと、とても混沌としていた。


(…こういうのも案外悪くないかもな。)


いつも、1人だった。

こんな風にパーティーをするなんて、いつぶりだろう。

マリウスはバレないように目の縁を拭った。

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