第6話 御手並み拝見
ロキが驚きのあまり後ろに倒れ、積み上げられた本が雪崩のごとく崩れてから数分。
生還したロキは、ずれた眼鏡をかけなおしながら席に座った。
「なんでまたそんな大物がうちの隊に…」
席に着くなりロキは髪をかき乱した。
やっぱり誰に言ってもこのような反応なのか。
「確かにあのピエロ野郎ををあんな豪快に吹き飛ばしてて強いなぁとは思ったけど…まさかそこまでとはね…」
カエデはハンカチで汗を拭った。
いつものニコニコは消えていた。
「………。」
クレーエは黙っていたが、いつもよりも少し目を見開いていた。
「…てめぇ絶対モテるだろ。」
ユースケは、なんかよくわからない。
「でもまだ僕もよくわかってないんです…。能力の使い方とかもまだ何もわからなくて…。」
マリウスは慌てて付け足した。
何も出来ないのに強いと勘違いされても困る。
「今日は休日なのだがな…。そういうことなら、実践形式の訓練でもするか。戦っているうちに能力がつかめるかもしれん。」
ロキはブツブツと文句を言いながら席を立った。
(5番隊ってもしかしてカエデさん以外かなりの面倒くさがりなんじゃ…)
マリウスは思わず頭に浮かんだ言葉を慌てて消した。
「ついてこい。パーティの準備なんぞその後でもいいだろう。」
「ちょっとロキさん!!!せっかくサプライズしようと思ったのに!!!!!!」
カエデはカエルみたいなふくれっ面でワーワーと叫んだ。
うん。訂正しよう。
カエデさん以外陰キ(割愛)
********************
案内されたのは、第2訓練室という場所だった。
無機質な白い空間と映画館のように席がずらりと並んでいる空間が、分厚いガラスで区切られてるという構造だ。
マリウスは席のない方に案内された。
他の隊員はバラバラになって席に座っている。
最前列の中央で見ているロキは、そこに固定されているマイクでマリウスに話しかけた。
「ということで、今からうちの隊員と戦ってもらう。最初はカエデだ。カエデ、準備を。」
そう言うなり、ロキは読書に戻ってしまった。
「まってください…稽古をつけてもらうのはありがたいんですけど、まだ怪我の方が治ってなくて…」
マリウスは申し訳なさそうに目を逸らしてそう言った。
「面倒なやつだな…ほれ。」
ロキは羽根ペンを取り出して空間に何かを書くと、マリウスの体は正常に戻っていた。
「あ、ありがとうございます…。」
どうやったのかは知らないが、ロキが治してくれたようだ。これも血液型の能力だろうか?
というかこんなことが出来るなら最初から使って欲しかった。
マリウスがそんなことを考えていると、カエデが中に入ってきた。
「じゃあよろしくね!手加減なんてしないぞぉ〜」
カエデは拳を交互に突き出す動作をした。
相変わらず陽気だ。
「はいじゃあいくぞー。構えてー…」
ロキの合図で、両者は構えた。
ケンカなんてした事がないマリウスは、マンガでみた記憶を頼りにそれっぽいポーズをとった。
カエデはというと、足を少し開いて腰を落とし、右手は顔の前、左手は腰の当たりに構えていた。
さすが副隊長を務めるだけあって、構えの姿勢だけで威圧感がある。
カエデの顔から笑顔は消え、すっかり本気モードだ。
「はじめー」
本から目を離さずにロキがそう告げた途端、カエデの右拳がマリウスの腹にめり込んだ。
「ぐはっ………!!!」
マリウスは気がつくと壁に激突していた。
肺にあった空気が一気に吐き出され、胸が締め付けられるように苦しくなった。
「ごめんね〜。折角入隊してくれたのにこんなことしちゃって」
カエデはいつものようにニコニコと笑ったが、マリウスには般若の面のように見えていた。
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