規格外の新星現る

第5話 新天地

クリムゾンに半ば強制的に入れられて2日たった。

2日間とも健康診断や体力測定などをして過ごしたため、マリウスが軍に顔を出すのは今日が初めてだ。なれない軍服姿でひたすら歩く。


マリウスがアントニヌスに連れていかれたのは、体育館のような場所だった。

どうやら朝礼のようなものをするらしく、そこには100人ほどの隊員が待機していた。

カエデやクレーエもその中にいる。


「全員注目!!!!!!!!!!!!」


アントニヌスが耳の裂けるような大声でこういったかと思うと、これまた耳の裂けるような大声で隊員達が返事をした。


「今日から東部地区担当部隊に入るマリウスだ!!!期待の新人だからビシバシ鍛えてやってくれ!!!」


がっはっは、とアントニヌスは大笑いしてその場を去っていった。


(余計なこと言わないでくれよ…)


隊員達の視線が少し鋭くなった。

だが学校のような汚物を見るような視線とは少し違い、今は注意深く観察しているようだった。

マリウスはそのまま指示されたカエデとクレーエが所属する第5番隊へと向かった。


「やぁ、マリウスくん!元気かい?」


カエデはほほえみながら囁いた。

マリウスは思わずドキッとして顔を赤らめた。


「げ、元気です。この前はありがとうございました。」


「なぁに、いいのいいの!これからよろしくね〜。」


カエデは陽気にそう答えて再び前を向いたかと思うと、


「解散!!!!!!!!」


また耳の裂けるような大声。

司令官が叫んだ。

続いて耳の裂けるような大声で隊員達が返事。


あと数日したら鼓膜が破けるんじゃないか?

マリウスは耳の痛みを我慢しながらそんなことを考えていた。


朝礼が終わったあと、マリウスは5番隊の談話室に案内された。大きな木製の机にものが散乱し、至る所に本が目線の高さまで積み上げられている。


「汚いところだけど…ささ、座って〜」


カエデは相変わらずニヤニヤしている。

マリウスは言われた通りに席に着いた。ギシリと椅子がなる。


「改めて自己紹介するね〜。私はカエデ!キミの1つ上の18歳!+β型の全身強化系オールラウンダーだよ〜。この5番隊の副隊長だから、困ったことがあったらお姉さんに頼るんだぞっ☆」


カエデは得意げに言った。

そこから続いて隊員達の自己紹介が始まった。


「…クレーエだ。歳は20、+γ型の形態変化系だ。よろしく。」


壁によりかかりながら、クレーエは気だるそうに言った。この男、いつも疲れているような印象だ。


次はクレーエの前の席に座っている茶髪天然パーマの男性が口を開いた。


「俺はユースケ。28歳の+β型。脚力強化系スプリンターだ。彼女が欲しいんだ。女の子を紹介しろ。これは上司命令だ。」


ユースケと名乗った彼は冗談めいたことを真剣な表情で聞いてきた。


(失礼だけど、めんどくさいタイプだな…)

マリウスは曖昧な返事をしながら愛想笑いをした。


「それで、隊長が_______________あれ?」


カエデは部屋を見回しながら誰かを探しているみたいだ。しばらくして本の森から誰かが出てきた。


そこにはツンツンとした紫髪が特徴的な、目の大きい少年がいた。


「やぁ少年私は5番隊隊長のロキだ31歳で魔力特化系ウィッチのγ型だこの度は人員不足の5番隊に入隊してくれて感謝する以上だ私は読書に戻るとする。」


ロキと名乗った少年はものすごく早口で話したあと、再び本の森へと帰っていった。

というか明らかに小学生くらいなのに31歳って、どういうことだ。


「ごめんね〜。隊長がこれだから、どんどん人数が減っちゃってピンチだったんだよね〜。そんな所に現れたのが、救世主マリウス君という事なのさ!」


カエデは異様に高いテンションでそう言うと、何故かハイタッチを求めてきた。

マリウスは困りながらもとりあえずハイタッチをすると、うぃ〜という謎の言葉を発しながらカエデは嬉しそうに席に戻った。


「それじゃあ、マリウスくんも自己紹介してよ!」


ユースケがそう言うと、マリウスは背筋を正して緊張しながらも話し始めた。


「ま、マリウスと申します。年齢は17歳です。血液型は…+α型のはずだったんですが、どうやら後天性能力開花?の-γ型みたいです…これからどうぞよろしくお願いします!」


話し終えて恐る恐る目を開けると、全員の表情が凍りついていた。


…どういうことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る