回顧-2

 中級職となったウォルフとレベッカのレベルがふた桁に達しようかというころには、俺の火力不足が深刻になってきた。

 【黒魔道士】もレベル15(初級マスターレベル)に達していたが、しょせんは初級魔法までしか使えないクラスだ。


 本来ならこの時点で中級職の【魔導師】を選択できるはずなのだが、クラスチェンジを司るアーティファクト『祝福のオーブ』にはそれが表示されなかった。


「都市伝説だと思ってたんだけど」


【赤魔道士】をレベル15(初級マスターレベル)まで上げると、他の初級職から中級職にクラスチェンジができない。

 そんな噂があった。


 ここで俺は、ミリアムさんの言葉を思い出す。

 だが、もう手遅れだ。


「ごめんなさいレオン、私たちのせいで……」


 そして、【赤魔道士】には上級職はおろか、中級職すら存在しない。

 でもこの時点ではまだ後悔はなかった。

 少なくとも、最初のころの俺は、パーティーの主力として活躍できていたのだ。


 あのころは、本当に楽しかったな。


「火力不足を補いましょう」


 俺たちはメンバー募集をかけてエルフの【魔導師】ロイドを仲間に加え、俺は回復や支援を強化するため【白魔道士】にクラスチェンジした。


 その時点で俺が狼牙剣乱に加入して、3年が経っていた。


「もう少し、装備を強化したいわね」

「そのためには金が要るな」

「ならば【斥候】を加えてはどうか?」


 ロイドの加入で俺たちはさらに強くなったが、レベルに対して装備が貧弱なことが問題になってきた。


 このころには俺たちもそこそこ名が売れていたので、募集をかければ何人もの応募があった。

 そこで、まだ駆け出しに毛が生えた程度だが、将来性に期待できそうな若いドワーフの【斥候】チェルシーを仲間に入れた。


 しばらくレベリングを行い、チェルシーはすぐに中級職の【密偵】にクラスチェンジした。


 それまで諦めていた宝箱の罠を外せるようになり、パーティーの装備は充実し始め、俺たちはどんどん強くなっていった。


「レオンはやっぱり【赤魔道士】が似合うわよ」


 チェルシーが加入して半年が経つころ、【白魔道士】をレベル15(初級マスターレベル)まで上げた俺は、【赤魔道士】に戻った。

 このころには初級魔法などほとんど役には立たず、支援や回復はポーションなどのアイテムを使うことが多くなっていた。

 そうなると、身体能力に優れた【赤魔道士】のほうが、なにかと動き回れて便利だったのだ。


「私たちも、いよいよ上級職ね」


 さらに半年――俺が加入して5年――が経ち、俺も20歳になったとき、俺以外のメンバーは全員が上級職にクラスチェンジしていた。


 【聖騎士】ウォルフ、【天弓士】レベッカ、【大魔道】ロイド、そして【暗殺者】チェルシー。


「ねぇレオン、そろそろウチにいるのがつらくなってきたんじゃない?」


 このころから、レベッカの俺に対する当たりが少しキツくなってきたように思う。

 それでもあと少しでBランクというところだったので、俺はなんとか食らいついた。

 そしてほどなく、【赤魔道士】がレベル20(初級リミットレベル)に達したとき、祝福のオーブに新たなクラスが表示された。


 ――【賢者】と。

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