〜奪われた神様〜

核兵器を放つ事を言い放たれた

それから数時間もしない間にテレビ全国で

「浄化の光が放たれた」

と言うフレーズとともに核兵器の発射の映像が流れた


テレビの情報では核兵器の浄化は早い所で、数十分後と発表された

白命に協力していたテレビ局の人全員はほとんど諦めモードであった

それでも白命は諦める事はなかった


発表とともに諦めかれたテレビ局の人に、核兵器が放たれたことを伝える

その状況でその核兵器をどうにかするために協力するように言った

もちろん暗示を使ったからテレビ局の人は全員二つ返事で応じてくれた


時間はもう無い、一つ目の核兵器が落ちるまでは後10分を切っていた

それでもテレビ局の人たちの迅速な対応のお陰で、白命は全国に生中継出来る環境を整えた


それと同時に白命は仮面をつけテレビの画面の向こう側に思いを伝えるように叫んだ

「私の名はテロ、核兵器は人の罪そのもの、それでは浄化などできるはずもない

これは我の名を語る悪しきリスト教団の叛逆である


私はそれを止めてみせる

罪なき者が死なないように

私はこう願い伝えよう


私の言葉は全てが真実になる

故に人を陥れる心を持つ者が放つ

浄化の名の核兵器よその存在ごと消滅し

それを放つものに天の裁きを与える


私の言葉は皆も知ってる筈だ

私の言葉による暗示で核兵器も、悪しきリスト教団の全ても全てを無に返す」


それはタイムラグを挟んで全国に流れた

それとほぼ同時に核兵器消滅の映像と、リスト教団の一部信者の集団死が発表された

「やったのか」

そう呟きながら白命は画面を見ていた

何度も繰り返されるその画像と発表に

苦笑いをこぼしながらホッとした気持ちで胸をなでおろした

テレビ局の人もそれを見て胸をなでおろした


しかし次の瞬間映像が切り替わる

生中継ではないよくあるテレビ番組の放送

いわゆる録画された映像である

しかしそれはハッキングされたもので全国に流されたものだった


そしてその映像にはまたあの核兵器を放つように言い放ったテロが居た

そして彼はこう話し始める

「私になりすましたテロが、皆の心を先導し核兵器を消滅させる

その行いを見て私は気付かされた


核兵器では何も救えないのだと、だから私は彼の偽物のテロの事を心から信じてしまった


私の過ちを正してくれる素晴らしい人なのだと…しかし」

そう告げると同時に映像が変わった


そこにはさっきまで自分が流していた映像が流れていた

「私の言葉は皆も知ってる筈だ

私の言葉による暗示で核兵器も、悪しきリスト教団の全ても全てを無に返す・・・」

その最後の場面から放送は流れる

そしてその後、白命は目を疑った

そのテレビに映し出された白命はそれに続けるように、こう続けていた


「しかし、私ひとりの独断でリスト教団を裁くのは間違っているのではないだろうか

だから、その天罰はしばらく保留とする


また核兵器で悪しき心を持つリスト教団を裁こうとしたその心は素晴らしいと思う


だからこそ私は心を鬼にしてさっき言ったことを実行するためもう一度告げる


私の言葉による暗示で核兵器も、悪しきリスト教団の全ても全てを無に返す

そのために核兵器よ爆破して世界全てに、その罪を償う機会を与える毒を撒き散らす


毒ですぐに死ぬ事はない、その罪を数えながら苦しみ全てよ死という無に帰るがよい」

その瞬間別の映像が流れ始める

そこには死んだはずのリスト教団たちが起き上がる姿だった

そして白命は絶望するような映像を目にする

核兵器が消滅する映像が爆破して紫の煙をばら撒くような映像に変わっているのだ

また一部地域の映像が流れる

そこには苦しむ人々の声と姿が映し出されていた


それを見た民の怒りの声を撮影された映像が流れる

白命はその時、初めて自分が陥れられていることに気づいた

周りにいた協力者だったはずのテレビ局の人の目が、すでに別の人からの暗示を受けた目をしていたのだ


そう白命に協力してくれたように見せかけて、彼らはすでにリスト教団の一員として白命を陥れる駒であったのだ

その事実に白命が後ずさりするように倒れこむと同時にその映像は映し出される


そこにはあの偽物のテロが写っていた

そして彼は仮面に手をかけるとその仮面を外した

そこにはリスト教団の中で全てを指揮する幹部の1人が映し出されていた

そして彼はこう告げる

「皆のもの騙して申し訳ない

私はテロではなくリスト教団第1信者、幹部リストである

先に謝っておく皆を騙して申し訳ない

これには理由があったのです


さっき皆が見たようにテロの神様は全ての人をとても残酷な方法で殺そうとしていました

それは幼き未来ある子供も含めてです

私がテロの神様の様子の変化に気づいた時には、もうすでに狂乱し始めていたのです


愛するべき皆様を殺すなど望むことのない

あの、テロの神様があそこまで人を殺そうとするような事をしでかした

狂乱したテロの神様を私たちリスト教団は止める事を、いや、ましてやその変化に気づくことさえ出来なかった


私達はテロの神様の存在に依存していただけに過ぎなかったのです」

その目には大粒の涙を浮かべていた

それをとっさに隠すように袖で目を隠す

それはまるで人の情を揺り動かす同情を誘う光景でした

まさに暗示に使われる、心に共感した所で洗脳する方法と同じ、白命が初めて身につけた暗示の方法でした


まさか、、、

そう思った白命の感は当たりました

リスト教団は白命を陥れるためここまで計算していたのです

リスト教団のその同情を誘う暗示はまさに成功したも同然でしょう


そこにいるリスト教団所属のリストは

そのまま泣きそうな悲しい表情を浮かべながらも、それでも強い意志を持ちはっきりとこう告げた

「私は皆を愛したテロの神様の狂乱で民が死ぬのを見たくありません

だから…」

そう呟くとそこに控えていたであろうリスト教団幹部の一員が出てきました

そして、一同全員でこう告げる

「私達はテロの神様の過ちを正すため、テロの神様から貰ったこの〝テロの代理人〟の力を使い毒に今苦しむ全ての人を救います


たしかに私達1人ひとりの力ではテロの神様の力には勝てません

しかし私達テロの神様の信者であるリスト教団と、テロの神様が信じた皆様国民が、私達を信じる心でテロの神様の力を打ち消したいと思います


どうか私達に、あの優しかったテロの神様の為に力を貸してください」

それを告げると案の定、その洗脳に近い暗示は、最初に作り上げた基盤である白命の暗示と呼応するようにすぐにかかったのだった

白命はその目でその光景の一部始終を見ていた

白命の目の前ではその暗示にかかったテレビ局の人たちや町の人たちの映像が映っていた

「うぉぉぉぉ」

雄叫びをあげ世界を愛したそのテロの神様の為にと言う、大義名分を得た国民はそのリスト教団に踊らされるまま、彼らの意思に呼応するのだった

そしてその完全なテロの神様と対をなす力を手に入れたリスト教団はこう告げる

「皆さん、ありがとう

ならばこそ、みなのその心に答え

狂乱してしまったテロの神様に変わり私達リスト教団の名において

世界散らばりし毒よ消え去りて、毒に侵され苦しむ者に癒しよあれ」

その言葉はやはり白命が想像した通り真実となり苦しむ者を救った


確かに世界は救われた

しかし白命はこの時気付いていた

この結果がどうなるかを、あのおじいちゃんが残した「滅んだ世界の遺物 解読文書」がもたらす弊害に、載っていた最悪の結末を…


そして、その想像は当たってしまった

毒を癒したリスト教団はその結末通り事を運んだ

毒を癒したリスト教団の幹部たちは、その悲しみの表情を浮かべながらもこう強く叫んだ

「テロの神様は狂乱して人を消し去ろうとした

しかし私たちはテロの神様をどうしても救いたい、殺す事はしたくない

しかしその横暴は狂乱していたとしても許せるものではない


だから私達リスト教団は、彼から貰ったこの力をより良い方向に進めるため

国民全員に告げる


私達リスト教団幹部のと、それに力を貸し与えてくれた国民全員の信じる心の力を使い

今から言う事を真実にする

テロの神様が持つ力を無効になれ」

そして白命はその瞬間テロとして築き上げてきた力の全てが、自分の手のひらからこぼれ落ちていくのを感じた


そう、おじいちゃんが残した資料にあった、もっとも恐るべき事態である弊害

このテロの力と匹敵する力を持つものの出現と共に、テロの力を無効にしてしまうこと

そして、テロの力と匹敵する力を得たものが、実質そのテロがいた地位に成り替わる事であった


そうつまり、資料に記るされた最大の弊害とは〝神様の地位〟を奪われる事であったのだ

そして今その弊害が現実に起きてしまったのである

それに全てが終わったような感覚とともに、立っていた地面が崩れ落ちる感覚に見舞わられる白命は、その場に崩れ落ちるように倒れこんだ


その数秒の出来事は白命にとっては数時間にも感じられた

「ガシャン」

その絶望感を壊すようにその音は聞こえてきた

目の前にはリスト教団の一員が白命の周りを囲むように居た

手には拳銃などを持っている


その横でテレビからリスト教団の幹部達がこう叫んでいた

「狂乱したテロの神様を捉えよ、力を失ったとしても、彼はもと神様

もしかしたら、世界を道ずれに自滅するかもしれない

ただちにテロを捕縛するのです」


どうやらここにいるリスト教団は白命を捕まえにきたらしい

白命は抵抗する気力も起きなかった


結局、白命はそこにいるリスト教団の指示通り大人しく捕まったのだった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る