〜少年の声〜

テロを名乗った白命はネットで騒がれた“正義の名のテロ”通り、多くの犯罪者をさばいた。

それと同時にネットでは、正義の名のテロにネットで名乗るテロの名前と、行なっているテロの行為を掛け合わせ、讃え、恐怖した。




テロとして活動を始めた白命は次第に暴走を始めた。

テロリストとして確保しにきた全員を


「俺を捕まえようとした人間、殺そうとした人間は自害する」


という事をネットに上げる事で撃退してしまった。

それをたかが戯言だといった奴もいたが、彼らにも思い込みで深層心理に刻まれてしまった。

彼の言うことは真実になる

という暗示のせいで自害する結果となった。

その事実が、より白命のテロという存在の

“言うことは真実になる”という思い込みを深く刻み込んでいった。




そんな事をしていた白命はある日夢を見た。

あらゆるものが壊れ、あたりには多くの人が横たわっていた。


「なに、これ、、、」


ふと知り合いが横たわっているのを見つけ白命は近寄った。


「大丈夫」


そう問いかけ体を起こすと、彼の首はぽとりと落ちた。

それの顔がこちらを向いてなにかを語っているように見えた。まるでそれが


「お前のせいだ。お前のせいだ」


と言われているようで怖くなって逃げ出した。

白命はひたすら走ったがこの地獄からは抜け出せなかった。

ふと前に現れた光に白命は吸い込まれた。

吸い込まれた先は、あたりは上下左右、前も後ろも存在しないような、ただ真っ白な空間だった。


「ここはどこだ」


そう叫ぶと後ろから声が聞こえた


「こんにちは白命くん」


振り返るとそこには白髪の赤い目をした少年が立っていた。


「君は誰だ、さっきのはなんだ、ここはどこ」


白命はわからない事をその少年に問いかけた。


「一度に言われても困るよ」


と笑いながら少年はまず名前を名乗った。


「僕の名前はテロ。テロ・キング・リスト。よろしく」


そう聞いた時、白命は理解した。


「テロ。もしかして、君はあの研究資料に出てきた。テロの神様なのか」


そう聞き返すと


「そうだよ」


とテロはあっさり認めた。


「こんなことあるはずない。これは夢だ、そう夢なんだ」


そう言い張る白命にテロは近づき言った


「これは夢じゃないよ。現実さ」


白命は訳が分からなくなりパニックになった。




あれから少したち、白命は落ち着きを取り戻した。

白命はテロに聞いた。


「僕が、君と同じ事をしたから現れたのかい」


するとテロは


「そうだよ。君にこんなことは早くやめるように、お願いしにきたんだよ」


と答えた。

その言葉に白命は言った


「僕は使い方を間違えない。君とは違うから大丈夫だ」


それを聞いたテロは


「どうしても止める気はないんだね」


というと最後にこう言い残した。


「わかった。それなら一つ見せてあげる。僕の世界がどうなったかを」


そういうとテロは過去の世界で起きた悲惨な光景を見せた。

白命はそれを見ていた。見終わった後テロは


「僕はもうこれ以上言わない。さっき見た映像を元にあとは君が決めるといいよ」


と言い残しテロは消えた。


「待って」


と白命が呼びかけたが、気がついた時にはベットの上だった。


「あれは夢だったのか…」


そう呟き白命は起き上がると水を入れて飲んだ。

その時後ろの方から


「ヤメルンダ、ハヤク、コウカイスルゾ」


と声がした気がした。

白命は自分のしている事が本当に正しい事なのか、分からなくてなっていった。

ただ世界はそれでも白命の起こした

正義の名のテロをたたえ、次の犠牲を出せと言い始めていた。

白命はみんなの期待から


「俺は間違っていない。俺は間違えない。これは正しい事だ」


と言い聞かせるように、少年の声を忘れて、またテロを始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る