〜正義の名のテロ〜

研究資料を読み終えた白命はおじいちゃんがいないことに気づく。

どこいったんだろ。辺りを見渡してもおじいちゃんはいなかった。

仕方がないからファイルを置いて家を出るとおじいちゃんがいた


「読み終えたのかい」


という問いに


「うん」


とだけ答えた。

おじいちゃんはそれ以上は何も聞かなかった。




家に帰った白命はあの研究のことが忘れられなかった。

『あれ、もっとうまくやれば、今の世の中良くできるんじゃ…』

そう思ったが、まーそれがテロ行為と同じだということも分かっていた。

『国相手にテロを起こすほど自分はバカじゃない』

そう言い聞かせてこの想いは押し殺しておくのだった。




ある日、母が銀行強盗と出くわした。

母を含めた数名を人質に立てこもった犯人だったが、逃げ切れないとわかると人質を道連れに自爆した。

この日、白命は母を失った。

この悲しみをどうしよう。その心にぽっかりと空いた穴に白命は支配されていった。


白命はこの腐った世界を呪い、世界を正すことにした。

そう。あの研究を利用しよう。

白命は手始めに暗示を学んだ。

技術の発展した世界ではネットと言われる、一瞬で世界の全ての人に広めることができるものがあった。

白命は手始めに暗示を利用して父親に、自分の言うことを聞かせる動画を流した。

反応はイマイチだったが、人を操ったと言うことに食いつく奴も多かった。

一方でヤラセなどインチキだの罵倒するのが大半だったが、それでも白命は諦めず暗示をかけた。

初めは父から始まったが、少しずつ近所の人などと、その規模を拡大していった。

ネットではその多くの人を操った動画を見て、本当に操れるのではと騒ぎ始めていた。




白命が動画をアップしてから数日後、決行の時が来た。

白命は暗示をかけた全員を時間になったら、ある場所に集まるようにした。

白命が動画を始めネットを見る人をその広場近くに集めると彼はいった。


「私は王の力を持つ。私のいった言葉は真実となるだろう」


最初、その言葉は誰も信じなかった。

ただ次の言葉を聞いた時、みんなは耳を疑った。


「では私の合図とともに、この目の前の広間に数百名の人間を集めよう」


そういうと白命は動画に向かい言った。


「さぁ我の知り合いの人々よ、我の言葉に従い集まれ」


すると動画を見ていたネット人は驚いた。

白命の言葉と同時にその場にぞろぞろと人が集まりだしたのだ。

その異常な光景をみた一部のネット人は何かの間違いか、細工した動画だろうとその場に行った。

そしてカメラを回した。

しかし白命のいた所には、白命が出した動画と同じようにぞろぞろと人が集まっていた。

それをみた全てのネット人は驚き、そして言った


「彼は本物だ」


そう呟くと同時に、その動画と一緒に証拠映像としてその場に駆けつけた、ネット人によりその光景と白命の言葉は世界に広まった。

白命はそれを好機と観ると続けていった。


「私はネット上の名前をまだいってなかった。これからその名を言おう。よく聞いてくれ。

俺の名はテロ。これから俺はテロと名乗るよろしく」


その動画も一斉に世界に広がった。

彼は一躍有名になった。

そして彼はテロと同じ、全ての人間に思い込みの刻み込みを成功させた。

それもテロより早い数ヶ月間の出来事だった。




テロは初めにその地盤を固める為、多くのネットをあげた。

ネット同士の通信相手、テレビ、沢山のところで暗示を使った人を操る動画をあげた。

完全に彼が人を操れると地盤が出来た頃、彼は次の段階に進んだ。

彼はその暗示をやめ、次の段階のチャレンジを行なった。

結果は、、、成功した。

彼はテレビの全国放送で、ただ一言命令をして人を操った。

こうして彼は人の深層心理の影にまでその域を伸ばしたのだった。


彼はその盤石な基盤を元に活動を始めた。

初めに汚職や犯罪を犯したものへ向けて、ネットとテレビを使いいった。

その罪を自ら証明して、警察へ出頭せよ。

その日のうちに警察には犯罪者が溢れかえるほど集まった。




次に白命はテロを名乗りこう告げた。

これからは犯罪を行なったものはその場で自害する。

そうして世界は平和になる

その言葉通り世界では、犯罪が起こるたびその加害者は自殺した。

死んでいった加害者の家族はテロの行為に、彼はただのテロリストだ、人を殺す犯罪者だと言った。

それは国も認めた。

テロを名乗る彼を人々はテロリストとして噂した。

白命はこれを待ってましたと言わんばかりにこう告げた。


「私は言った。犯罪を犯したものが死ぬように。これは世界にとっての正義だ」


そういうとネットでは彼の行いを

“正義の名のテロ”としてたたえた。

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