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◆◆◆


「あら」「おや」


モガミとのイチャイチャタイムが終わり……一人で宿から出た直後、見飽きた美少女と鉢合わせる。

「楽しんでるかい妹ちゃん」

「まぁまぁよ、ギャルゲー主人公君」

「照れるなぁ」

「クズ野郎って皮肉な意味で言ったのよ、バカ兄貴」

腕を組み、ツンツンとどこか棘のある言い方をするユエちゃん。

「何だい藪からスティックに。君の愛する兄貴がクズでバカだと言うなら、その人格を形成したのは君を含めた家庭環境の所為だぜ」

「……否定出来ないわね。いや、それにしたって、あんたは反省するべきよ」

「なにを?」と首を傾げると、彼女は深く息を吐いて、

「さっきまでカサネと買い物したりブラブラしてたのよ。で、さっきあの子宿に忘れ物があるってんでここまで来て……そしたら『涙目になって』出てきてどっか行っちゃった」

「へぇ。それ、原因は聞いた?」

「聞ける空気じゃなかったわよ。でも、原因なんて百パーあんたにしかないでしょ」

「確かに。ふむ……状況から見るに、大方、モガミの喘ぎ声でも聞いちゃったんだろう」

「どうせマッサージかなんかってオチでしょ」

「御名答。伊達にギャルゲーマーじゃないね」

「正解しても嬉しくない」とユエちゃんは唇を尖らせ、

「ほんと、わかりやすいくらいにギャルゲー主人公してるわね」

「エロゲかもしれんぞ」

「どっちでもいい。で、あんたこれから『あの狐』のとこに行くんでしょう?」

「おう、モフモフしてくるぜ」

「ぁー……女とイチャついた後に別の女のとことか、どんな図太い神経してんだが。あんた、マジにハーレムルートなんて修羅進む気?」

迷いなく、僕は頷く。皆と一緒になれる道を、僕はずっと追い求めていたのだから。

「あのさぁ……ゲームとかじゃあ、さも綺麗に美しく皆仲良くって感じに描写されてるけど、そんなのあり得ないって分かるでしょ?」

「うん」

「誰も、幸せになれないわよ。周りも、その先の世代すら不幸になる」

「そりゃそうだ。だから、皆で『不幸に』なればいいんだよ。綺麗事なんてなく、美しくもなく、皆ギスリまくり上等でね。そんなんになっても、僕は皆を選びたいのさ」

「……分かってはいたけど、説得は無理そうね」

 ユエちゃんは肩を竦め、諦めたように首を振る。

「何年も僕の妹してりゃ、この流れも分かってた事でしょ」

「まぁ、ね。それに、あんたのそんな決断、ツムグは元より、どうせ父さんも母さんも否定しないんでしょうね。五色家でまともな倫理観持ってるの、私だけっていう」

「そりゃあユエちゃんは橋の下で拾われた子だから、五色のぶっ飛んだ思考回路持ち合わせてないのもしゃーない」

「ほんとにそんな気さえして来るわね」 僕の嘘に乾いた笑いを漏らす彼女。……うん、まぁ嘘だよ。一部、ね。

「はぁ。じゃあ私は、カサネとイナリの友人として、二人が『悪い神様』に愛想を尽かす展開を祈ってるわ」

「酷い妹だな」

ユエちゃんはクスリと笑って


「あ、今更だけど」「うん?」「トライデントの影響だけど、実は私も貴方を好きな世界線から来てたみたい」


え。

「ふふっ。なーんて、嘘。良い顔見れて満足よ」

ペロリ、舌を見せら、妹は去って行く。

それは本当に嘘か、真か。


真実は、彼女にしかわからない。今の僕にはわからない。

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