【5分小説】ガネシとラッタとビラロの物語

第15話 心の病

※ガネシとは、ヒンドゥー教のガネーシャをモチーフにした架空の生き物です。ねずみのラッタ♂と子猫のビラロ♀と一緒に地球でたくさんの経験を積んでいます。

「ビラロ、この世には心の病を持っている人たちがたくさんいるよね。その深刻さの度合いに違いはあるけれど、みんなが何かしら疲弊しているように見えるよ。ひとりひとりのこの心の闇を取り払うのは大変だよ」

「先天的に異常を持っている人たち、俗にサイコパス・ソシオパスと呼ばれる人たちから、エンパスやHSPと言われる心が繊細な人たち、鬱病や共依存といった後天的な異常。人間って本当に複雑よね。私も一度人間の邪悪さに心が引っ張られて立ち直れなくなった時があるの」

「あの時か」

「そう、あの時ラッタが洞窟に来てくれた時よ」

「あの時そういう事情があったのか。心臓に毛が生えてそうなビラロがどうしたのかと思ったぜ

「ビラロはとても苦しい思いをしたんだね」

「・・・そうね。エンパスやHSPの人たちみたいに心が綺麗な故、過度に人に共感したり、人の言動に過敏になったり、人の気持ちを考えすぎたりして心が潰されちゃう人たちは見ていても全然苦痛じゃないんだけれど、心が過剰に病んでいる恐ろしい人たちの心を見ちゃうと本当に厄介だったわ」

「ビラロ、ちょっとペースを落とせ。エンパスやエイチエスピーは推測すると、共感力が高くて恐らく献身的な人たちだな」

「そう、どちらも似たような性質なの。他人の経験や悩みをあたかも自分のことのように考えてしまって悩んだり、悪口や残酷な話、性格の悪い人といると具合が悪くなったり、人の考えていることや嘘、本音がなんとなくわかったりするのがエンパス。HSPというのも感性が過敏になって、いろんなことを気にしすぎちゃう人のことを言って、その特徴は今言ったような感じで一緒よ

「なるほどな。それで、心が過剰に病んでいる恐ろしい人たちってどんなやつらだ」

「・・・。思い出しただけでもまた私の心が病みそうなんだけど」

「そいつらが原因であの時病んだのか」

「そう、本当に恐ろしい人たちよ。エンパスとは真逆の性質を持っているの。どちらかというとエンパスは人のことを思いすぎて病む傾向にあるのだけれど、私が見た恐ろしい人たちは周りの人を病ませるわ。なぜかというと、その人たちは良心が異常に欠如していて人に全く共感をしないの。息を吐くように平気で当たり前のように嘘をついて、自分の行動に全く責任を取らない。そして人を傷つけることを平気で言うのに罪悪感が全くない。むしろ罪悪感を抱くどころか人のせいにするわ。自尊心が高くて自己中心的だからかしら。そして一番厄介なのは、一見普通に見えるし、話す内容も筋が通っているから表面的には普通の人もしくは魅力的に見えてしまうこともあるの」

「なんだそれ、ただのやばいやつじゃねぇか。みんな気付かないのか、そいつらが悪魔のようなやばいやつらだって」

「気付く前にみんなが病んでしまうわ。そういう人たちの行動や発する言葉に毎日少しずつ精神がえぐられてしまって、でも他のみんなとはうまくやっているから、もしかしたら自分だけがおかしいのかなと自分を疑ってしまう。そして毎日のように接していると気付いた時には心はボロボロよ。心が修復不能になってしまうわ」

「ビラロ、大変だったな。でも直接関わっていないのに見ているだけでそんなになっちまうのかよ。本当に恐ろしいやつらだな」

「そうね、本当に恐ろしいわ。また違う症状なんだけれど、共依存というのも恐ろしい。共依存というのはね、多くは恋愛で見られるんだけれど、それ以外でも日々の生活、仕事仲間でも起こり得るみたい。それぞれがその関係性に過剰に依存してる状態のことを共依存と言うの。これはもう二人だけの世界。周りの言うことなんて全く聞かない。二人で全てを話し合い、進めていき、お互いだけしか認めなくなって、お互いを褒め合い、お互いの傷を舐め合うの。二人からしたらすごく居心地が良いのかもしれないけれど、社会性がなくなるわよね。きっともう誰もその二人を相手しなくなってしまうわ」

「やっぱり人間て複雑だなぁ・・・。僕はみんなのことが大好きだから誰か特定の人に依存なんてしないよ。ビラロのことを病ませた原因を作った人たちも恐いけれど、無意識なんだよね・・・。ビラロ、ラッタ、もし僕がふたりの精神をえぐっていたら絶対に言ってね！」

「ガネシ、大丈夫だぜ！オイラの精神をえぐってくるのはビラロだからな！」

「そっくりそのままラッタにその言葉返すわ」