第11話 小五郎と沙穂の関係

協力という言葉はかなり不思議だ。

何がどう不思議かって言えば。

助けるという意味にも取れるしただ手伝うだけにも聞こえるから。

俺は.....協力をされる必要は無いと今まで考えていた。


だけど皆野はそのどっちも選択して俺を見てきた。

俺を助ける為だけに、だ。

その事に溜息混じりで皆野を見てそして空を見た。

そして休憩が終わり。

俺達は仕事に戻る。


それからその日は残業を少しして帰ったのだが.....。

明日、気を付けないといけない。

残業で時間が遅くなりそうだから、だ。

皆野と別れ、俺は帰宅する。

さて.....どう話したもんかな.....。



「お帰りなさい。.....どうしたんですか?何だか悩んだ顔.....」


「.....いや。何でも無い」


「.....それに何だか.....かなりフワフワしていますよ?」


正直の所。

昼に皆野にキスをされた事が.....かなり衝撃だ。

思いつつ.....ホワホワした感じで帰って来たらそう言われたので答える。

俺は、いかん、と思いながら首を振る。

そして沙穂に静かに笑んだ。


「.....大丈夫だ。沙穂。有難うな」


「.....そうですか?お仕事が忙しい訳じゃ無いですよね?」


「.....ああ。有難うな。忙しい訳じゃ無い」


言いながら室内に入ってから上着を脱ぐ。

それを直ぐに受け取ってから.....ハンガーに掛ける沙穂。

それも相当に手際の良い感じで、だ。

俺はその姿を見て沙穂に向いた。


「.....沙穂。皆野って覚えているか」


「.....皆野さんですか?はい。覚えていますよ。だって.....この前来ましたから」


「.....そうか。.....その皆野がな、俺達を助けると言っている。心から協力したいって言っているんだ」


「.....そうなんですか?」


驚く沙穂。

ああ、と俺はその顔に返事した。

それから、沙穂はどう思う?、と聞く。

何故、そう聞くかと言えば。

沙穂が嫌がったら意味が無いから、だ。


「.....私は嬉しいです。皆野さんは女性の方ですから。気軽に.....色々な相談が出来そうです。信頼が出来る人だと思っています」


「.....そうか。そう思ってくれているなら良かったよ」


「.....でもそれはそうと協力って.....もしかして.....追い詰められているんですか?小五郎さん。そうだったら.....相談して下さい」


「.....ああ。えっと、違うよ。.....俺達の日々に協力するって。そういう事だ」


成る程、と沙穂はニコッと笑みを浮かべる。

俺は.....その姿を和かに見つつスマホを見る。

着信が.....有った様だった。

それはあのクソ親から、だ。


「.....まさか」


「どうしたんですか?.....小五郎さん?」


「.....いや、すまない。沙穂。ちょっと電話してくる」


「.....あ、はい.....」


そして電話に出る。

あのクソ親め!

しかも一回しか電話して来てないとか.....!


どれだけ俺は沙穂の件を聞きたいと思っていたのか!

思いながら電話する。

すると.....電話が掛かった。

親父だと思うが、だ。


『.....小五郎か』


「.....ああ。俺だけど。アンタら.....どれだけ沙穂の件で聞きたいと思っていたか知ってんのか.....!」


『.....その件はすまなかった。実家が火事になったからな』


「知ってるよ。知っている。.....そんな事が聞きたいんじゃ無い。何で沙穂という人間が居るのか聞かせろ。何で女子高生がアンタらの家に居るんだ!」


俺は眉を顰めて話す。

ダンッと音を立ててドアを叩いた。

すると.....親父は俺に言葉を発する。


『良いか。よく聞け。羽鳥沙穂に関してだが。.....幼馴染だった子の親戚の子だ』


「.....は?.....は?!」


『.....伊藤香穂だったな。確かお前の幼馴染の名前は。.....沙穂は.....頼まれたから私達が預かったんだ』


「.....何だ.....と.....香穂の.....って。羽鳥なんて名前は初めて聞いたんだが.....」


俺の家が火事になってからお前に任せたのはそれが理由も有る。

そして.....俺としてはお前に借金を押し付けた事、今は俺は反省している。

反省の気持ちを言っても.....お前は満足はしないだろう。

ただこれだけは知っておいてほしい。

お前はやりたい様に動け。


と親父は他人事の様に言った。

キレそうなんだが。

ってか.....このクソ親父.....何でそんな重要な事を今頃.....!


「アンタらのせいでどんだけ.....沙穂に悲しい思いをさせたか.....!これだけは言わせてもらうぞ。.....これまで.....何で電話して来なかったんだ.....!」


『.....すまなかった。その件は。俺も母さんも忙しくてな。本当に.....すまない』


「.....すまなかった.....ってアンタ.....」


『.....頭を下げても電話じゃ分からないだろうから。本当にすまなかった.....と。俺からはそうとしか言えない。これ以上の言葉は無い』


この.....クソ親父。

真面目に.....文句が山程有るんだが.....。

頭に来るな本当に。

思いながらも.....俺はスーハーと息を整えた。

そして話し出す。


「.....これから先、沙穂をどうしたら良いんだ。.....アンタの思った以上に彼女は.....相当に傷付いているだが」


『.....沙穂は暫くお前に預かって欲しい。すまないが訳は今言えない』


「.....」


『.....俺達もそれなりに大変な時期を迎えている。分かって欲しいとは言わない。だけど.....こちらの事情も汲んで欲しい』


俺は頭に手を添えた。

それから.....盛大に溜息を吐く。

そんな真実が有るとは.....思いながら自室のドアを見る。

俺はドアに手を添えながら言葉を発した。


「沙穂は知っているのかこの事実は」


『.....知っている。お前にも言っただろ』


「.....あのな.....全然聞いてねぇよ」


『.....そうか』


じゃあ沙穂は.....話したく無いんだ。

お前には、だ、と俺に親父は話す。

俺は盛大に溜息をまた吐きながら頭を掻いた。

そして.....スマホを握る。


「何でアンタの家で沙穂を預かる事になったんだよ。.....つーかそれも話せねぇってか」


『.....色々事情は有る。だけど.....今は話せない。すまない』


「.....そればっかりか。非常に非常に.....困るんだが」


『ああ.....本当にすまないが』


親父がそう呟く様に言う。

そうしていると親父が、小五郎、と話し掛けてきた。

すると.....俺にこう言葉をかけてくる。

俺は驚く。


『.....すまなかった。.....本当に』


「.....!」


『.....切るぞ。火災の件で忙しくてな』


「.....クソッタレ.....」


そして電話は切れた。

俺は.....スマホを見ながら.....天を仰ぐ。

そんな事実が有るとは.....と思いながら、だ。


俺は何回目か分からない溜息を吐く。

そうしていると.....ドアが開いた。

そして.....俺を沙穂が見てくる。


「.....小五郎さん」


「.....どうした。沙穂」


「.....ごめんなさい。隠していて。.....ごめんなさい」


「.....衝撃的だけど.....大丈夫だよ。.....お前も大変だったな」


その様に話しながら.....スマホを見る。

そして.....天をまた仰いでから部屋に入るか、と沙穂に笑みを浮かべた。

沙穂は涙を流していた。


だがちょっと待ってくれ。

それ以上にマジに頭が混乱している。

落ち着かせたい.....。

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