最後のバトン

わたしはこの春パティシエールになりました。


何度か挫けそうになったこともあったけど

無事に就職しました。



ケーキ作りを毎日していると

焼き上がる頃には 今日の出来がわかる。


うん、今日は良い出来だ。

ホントは日によって ムラがあってはならないのだけどね


今日は初めてオーダーを任された

普通のケーキと 猫ちゃん、犬ちゃん用のケーキを1つずつ。

3つとも見た目は同じ様にして欲しいとのこと。

うーん  腕がなる。



出来上がって、お客様が取りに来られるって連絡があったけど

どうも、盲目の方らしい。


家からそんなに離れてないし

帰りにわたしが 届けよう



ケーキを届けにお客様のお宅へ

玄関開けて出てこられたのは 優しそうな方でした。


少しお客様とお話ししてると

ニャーニャー奥から聞こえきた。

どうやら急かされてるみたい


お客様からお礼をもらって 家に帰る。

少し残念





翌朝テレビで強盗未遂事件を知る。

近所だ。 怖い。




わたしは霊感が人よりはあるほう

家族もそうだから。


事件があってから

ちょくちょく真っ黒猫ちゃんをみる


別に見えるからといって

これという害はないけど。


ただ、何かしら用をとってつけて あの人のお宅へ行こうとすると

急に残業になったり

友達から呼び出される


わたし 実は呪われてる…?




2度目のケーキ依頼

早いわね。もう1年経つ


わたしは今年も 見た目は同じ

だけど違うケーキを3つ作った。


今日は残業だけど

少しの間抜けさせてもらって ケーキを届けた。

今年はニャーニャー聞こえないわね。

いないのかしら?






やっと残業が終わって 外に出たら雨だった。

夕方は降ってなかったのに ついてない。

わたしはお店の傘を借りて 家に帰る。


雨の日は通らないのだけど

わたしはこっちから帰らないと いけない気がして

ぬかるむ公園を通った。




公園抜けたら ワンちゃんが

足をひこずって来た。

盲導犬のようだ。


綺麗な色だったはずの毛は

血によってどす黒く 後ろ足は折れていた


慌てて 手当てをしようとしたら

ワンちゃん わたしの服を力無く引っ張る


わかったから

ついて行くからと、ワンちゃんの誘導する方へ行く

途中、ワンちゃんがなにか祈った感じがした。



しかし近所で盲導犬の話しは聞いたことない

あの人以外には。


わたしは嫌な予感がした




角を曲がると

人が倒れていた


あぁ あの人だ


わたしは傘を捨て 走った。



わたしは彼の様子を見る

意識はない

頭をうったようだ

脈ある 

生きてる!


わたしは救急車をよんだ


彼は助かる きっと。


だからお礼言わなきゃと

振り返ってワンちゃんを見た



ここからでも

死んでるとわかるほど

ひどい状態だった









タツヤさんが入院して

目覚めるまでには それなりの時間がかかった。


でも今日、ようやく包帯とるらしい

わたしも同席させてもらった。



最初、なんて声をかけてよいかわからず

先生とおじさんの話を聞く


包帯を取ると あぁ、タツヤさんだ

記憶のタツヤさんがそこにいた。


わたしは嬉しくて 涙が溢れて

今は何て言ったかなんて 覚えてないけど

タツヤさんに 声をかけた


視界が悪かったから 涙をふいた


そしたら タツヤさんが

わたしを見ていた。


タツヤさんの透き通る様な目を 見つめていると

わたしの体温が2度 上がった気がした。


いままで もしかして?

と思ったら やっぱりわたし

恋をしてたみたい


好きです タツヤさん





4人から 3人。

3人から 2人…

わたしも 流石にまだ長居出来ないから

タツヤさんに

また来ますね と伝えて

部屋を出た。




部屋を出て 少し歩くと

何故だか今 振り返らなければならない気がして

タツヤさんの病室を見た


そこにはタツヤさんに似た

優しそうな女性と

隣に勇敢だった ワンちゃんがいて

口にバトンをくわえてた。

女性に抱っこされてた 真っ黒い猫ちゃんは

少しふてくされてた…のかな?


ワンちゃんがバトンを持って来て

わたしが受け取ると

女性が丁寧におじきされて

わたしもおじぎして

顔を上げたら  居なかった






不思議なバトンのおはなし
















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