タツヤ (3)

僕は無気力になった


なにもすることができない




そばにいるマリーは心配してるみたいだけど。

それでもなにも出来ない

マリーはそんな僕のそばで ただじっとしてるだけ

たまに 何か言いたそにしてるけど。


分かってるんだよ。 僕も今のままでいいと思わないから

でもね。

なにも出来ないんだ。




しばらくは叔父さんも 頻繁に来てくれた。


ケーキ屋の女の子も 何度か来て

話し相手になってくれた。


病院に行って 睡眠導入剤を処方されて飲んだ。




季節が変わって桜が咲いた頃

薬もやめた僕は 最近夢を見ることが増えた


元気だった かぁさんと

クロとマリーで いろんな所を観光するんだ。

そのほとんどが 山や海で

僕はこの目で 見たことないけれど

キレイな砂浜で 楽しそうに

クロとマリーが走ってるのを 2人で日陰から眺める

そんな夢を。


ちょっと変わったというか

実際の記憶も夢になった


かぁさんが余命宣告されて

2日ばかりの帰宅。

その日は かぁさん

クロと長いこと話してたな


かぁさんがクロに

お願いとか 頼むねとか

言ってるのを聞いた僕は クロに無茶なこと言うなーって笑ったっけ


クロも飼い主の僕より かぁさんに忠実だったような気がする


いまは懐かしい思い出

2人には 夢でしか逢えない。






もうすぐあれから1年


ちゃんとした生活にも だいぶ近づいた



まぁ、マリーの世話焼きには困ったが。

僕はやっと元気になりました





今年もケーキ3つ

家で2人が食べた。


昔、母から聞いた

クロの始まりの場所へ 持って行こう



今日はあいにくの雨

2人でカッパを着よう


僕とマリーは公園を過ぎて

道を挟んだ 空き家に着いた


ここの隅が クロの始まり


ケーキが雨に濡れないように

少し奥に置いた。

また明日取りに来るから


僕は少し会話して

じゃあね 

と来た道を帰ろうとした。



マリーが突然

僕を突き飛ばす


僕は頭をコンクリートにうって

意識がなくなった













まず気がついたのは

いつもと違うベッドということ


そのうちここが病院だと分かった。

長い間眠ってたらしい


そして今日、先生は 頭の包帯を取るということで 叔父さんと女の子も同席させた。


女の子の声は

優しい音色で 僕はケーキ屋さんの人だと思った。

ケーキ屋さんに行ったら いつも聞いていたので覚えている


僕はびっくりして まぶたがひらいた



そこには美しい黒髪の女の子がいた


僕は初めて恋をした

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