第16話 修羅場、再び。

『美女四天王の一角、「西条瑠璃」その正体は信じられないものだった………!』


新聞部が発行している学校新聞には、デカデカとそう書かれていた。



「………なぁにこれぇ」


いやマジでなにこれ。

うっかり遊戯出ちゃったじゃん。


「それは昨日の出来事を元にして書いたものです」


「うわっ!!」


気配に気づかず、俺の横には七条さんがいた。

でも、以前のような元気ハツラツな七条さんはそこにはいなかった。


「…………大丈夫ですか?」


俺は無意識にそう、声をかけてしまった。


「……私は大丈夫です。……………ただ」


「ただ?」


七条さんは俯き、言葉を紡ぐのに躊躇う。


「ただ、今まで追っていた大スクープがなくなって

これからどうしようかな………と」


呆気にとられてしまった。

昨日の涙は嘘だったのではないのだろうか……


もしそうだとしたら演技の才能あると思う。マジで。


「元気そうですね。良かったです。」


「うーーーん」


「ど、どうしました……?」


七条さんはこちらをジロジロと見てくる。

そして数秒こちらを吟味した後、口を開く。


「決めた、あなたを他の美女四天王の囮に任命します。なにか大きなスクープがあったらあなたごと記事に載せるから♪」


「………………え?」


「拒否権はないわよ?」


「は、はぁ………」



これから、壮絶な戦いが始まるとは、彼女も、俺も、

まだ知らなかった────。






◇✧◇✧◇✧◇✧◇✧◇✧◇✧◇


(※小柳視点)





「ふふん♪ふふ♪ふふーふふん♪」


私はハレ晴れユ○イを口ずさみながら、階段を降る。


なんと!今日は!あの空くんから一緒に帰ろうとのお誘いを頂いたのですっ!!

これが平常心を保てるものですかっ!!??


否!!無理でござる!!


「菜緒里?今日はご機嫌だな?」


「あ、ら〜ん」


「お、おう……ど、どうしたんだ?」


「実はね!!今日ね!!空くんと一緒に帰るの!!

いやったああーー!うれし……うぐっ!」


「声!!声をもう少し抑えて!!」


蘭に口を抑えられました。


失態です……まさかこんなに気分が高揚するとは………


「す、すみません……」


「全く………いい?そんな具合だと、すぐに足元すくわれるよ?今あいつを狙ってるやつ一杯いるから……」


「わ、わかりました……ご忠告痛み入るでござる…」


「菜緒里、口調がおかしくなってる。」


「はっ……!

す、すみませんっ!空くんを待たせているのでここでドロンするでごさんすっ!」


まだ口調が治っていない小柳が昇降口の方まで走っていく。


「はぁ………大丈夫かな……あいつ?」



密かに小柳を心配している、双葉蘭であった。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







「………なんでここにいるんですか?」


「それはこっちのセリフよ?小柳さん」


互いに笑顔ながらも、静かに牽制し合っている同級生と先輩────


「あ、あの」


「「なに?」」


「いや、なんでもないです……」


そして、完全に空気になっている主人公おれ……


「あ、せ〜んぱ〜い!お待たせしたっス!

さぁ、早く一緒に帰りましょう!邪魔がいないうち………に」


更には、この怖い目で俺を見てくる後輩……


「千冬ちゃんまで……」


「これはどういう事かしら?空くん?」


「説明して下さい。先輩」


3人の視線が俺に集中砲火される。


………逃げたい。

今すぐにでも逃げ出して、異世界転生したい。

ついでに言えば俺TUEEEEしたい。


そんな願いは虚しく、崩れ去った。


「その………」


「「「早く」」」


「は、はひぃぃ!!」



これから、修羅場が始まる──────。

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モテなかった(過去形)俺のラブコメディ。 珈琲 @coohii

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