初日

 本格的な授業は明日からという事で、ロングホームルーム後、本日は解散との説明を受け、入学式は終了した。

 式では、無駄に長い校長の話に始まり、在校生代表だとか入学生代表だとかの話もあったが、正直どれも覚えていない。

 案内されるがまま本校舎二階に上り、一番奥の教室。一年六組へと向かうと、座席表が黒板に張り出されていた。


「うわ……一番前かよ」

「ははっ。苗字が『飯島』だと運が悪いとそうなるよね」

「そういう木戸も一番前じゃないか」

「おいやめろ。見ないようにしてたんだから」


 最初の座席は所謂『あいうえお』順で決めたらしく、残念ながらウチのクラスには『あ』から始まる苗字の人は居なかったようだ。

 廊下側一番先頭が俺の席となってしまった。

 因みに木戸は俺の隣の列。その先頭になっている。

 こればかりは運だから、同情はしよう。


 クラスの雰囲気は……良さそうだ。

 見るからに悪ぶってそうな奴が居ないので一安心。ぱっと見男女比も半々位だろう。既に数名の人達がグループがを作り会話に花を咲かせている。


「そういえば飯島は地元がこの辺じゃないんだっけ?」

「そうだな。だから友達作りも一からだよ」

 

 お互い席に着くと、早速木戸が話しかけて来てくれる。

 入学式前、木戸とは簡単な自己紹介を互いにして、少しではあるが雑談もした。

 その結果として分かった事は。


「何か前の二人かっこいいね」

「私席近いんだ〜 仲良くなれるといいな〜」


 ボソボソと後方から聞こえてくる、女子の声。

 小声で話そうとはしているみたいだが、盛り上がってしまったのか、あまり上手く小声にできていなかった。

 体育館でも木戸の容姿を褒めるような会話がチラホラと聞こえて来ていた。ついでに俺の事も。


「何か木戸と居ると俺までセットでイケメン扱いされるんだが?」

「いや、だからお前が普通にモテる容姿してるだけだって」

「俺は普通だよ。ただの田舎モンだからな」


 木戸はやっぱりイケメンだったという事。

 爽やかに整えられた短髪。

 一つ一つのパーツが良い為、悪い所が見つからない。それが現状の木戸への評価だ。

 何か普通にモデルとかアイドルやってそうなルックスである。

 それに比べると俺はハッピーセットの玩具でもバーガーでもなく……なんだろ。ジュースかな?

「はあ。イケメン許すまじ」

「それお前も許されないからな」


 出会って間もない俺がこんな風に軽口を言うのに、顔色変えずに笑ってくれるコイツは、本当にいい奴なんだと思う。

 まあ、許してくれそうだから、こんな事を言ってる訳だが。

 そうこうしていると担任と思しき、三十路前後の女性が教室に入って来て、ホームルームが始まる。

 

 配布物だとか、自己紹介だとか。そんな事をして、ホームルームも終わった。

 荷物をまとめ、席を離れる。

 木戸からは「また明日」と挨拶をして、今日の学校生活は終了だ。

 

 初日にしては上々の立ち上がりだろうと思う。

 里香と翔子は大丈夫かな?

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