検索結果 もしかして:地球外生命体の方がバカだったりする?

莉衣菜が子泣き爺を拷問器具みたいなのでグルングルンしてからはや1週間。今日も今日とて例の公園で市田 黎の訓練だ。花子さんに頼んで諸々の結界をはり、念の為メリーさんに待機してもらう。持ってくものは同じだから特に代わり映えもしない。はずだった。






















と言っておけばまぁそれっぽくなるだろうから言ってみたに近いところは無きにしも非ずだが、まぁあながち間違いでもないだろう。だって急に目の前にUFO降りてきたんだもん。

「なんで急に幼児退行してるんですか。緊急事態でしょうが」

と黎にツッコミをキメられ我に返る。我ながら我に返る方法が独特すぎると思うが、この話もそこそこに切り上げなければ。スマートウォッチ経由で花子さんに結界を強化させ万が一のことがあった場合に備えるほか捕縛も試みる。


今のところ強烈な光のせいで形の識別は出来ないが、よく聴くような火傷とかは無さそうだ。自分と彼女の立場というものもあって、莉衣菜に何かあってはまずい。念の為小型無線機だけ渡すと車に戻らせる。現在位置から駐車場を見ることは出来ないが、彼女は生身の人間ながら霊的能力を持っていてこちらが見えるのが何より好都合だ。いざとなれば俺と黎とメリーさんで彼女を逃がすくらいの時間は稼げるだろう。辞めたのは13の時でかれこれ15年近く使ってなかったし、最近も変な事(何故がコメディー寄りに流れがちだが)が頻発してるせいで出力しすぎない程度の力でカン戻してただけだしなぁ。


まぁいいや。たぶん、どうにでもなる。最大値がどの程度出るかがわからない分不安は残るが、元犬鳴としての力使わせてもらおうか。眼を閉じると、良くない礼の例として真っ先に挙げられる頭だけの礼のように頭を下げてから上げる。リミッターは外したからセーフティを外せば力は使える。さて、UFOはどう動く?


リミッターを外してからUFOを睨み付けて数分。段々と光が弱くなっていき本体が見えてくる。その姿を見た面々のリアクションは様々だった。今でも覚えてるのは莉衣菜の一言で、言い得て妙だけどインパクトが半端じゃなかったから紹介しよう。無線機のイヤホンから聞こえたセリフは

[黄金う○ち]

だった。悪気があった訳では無いので一応説明しておく。某むさしタワーの周辺にあるビルのモニュメントか何かで、縦向き設置の予定だったけど日照権やらを考慮した結果横倒し設置になり金色の絵の具と化したものがある。それが一部ではそう呼ばれてるとかいないとか……

「莉衣菜…… せめてもうちょっと言葉は選ぼうぜ…………」

[だって間違ってないじゃん。言ってる人はいるし]

「あのなぁ…… まぁいいや。こっち見えてるんだろ? 俺らは置いてっていい。ヤバかったら車で逃げろよ?」

[了解]


良くも悪くも力はあるし、俺含め覚悟は決まってるらしい。

「All weapons stay」

ロクなものは無いが無いよかマシ程度の、まがりなりにも武器と呼べるものはある。意味を成す気がしないが、戦闘能力の不正確化はしておいた方が可能性は上がるだろう。全ての装備に手を触れたまま1度格納する。メリーさんはナイフの柄を握ったまま腰の後ろに腕を回し、居合姿勢の変形型と言うべき構えをする。相手が怪異的・都市伝説的属性を持たない限りナイフそのものが通用しないこともありうるが、通用すると仮定すれば戦力としては最大だ。


警備会社に就職予定の黎は右脚に固定したホルダーに2段階伸長の特殊警棒をしまい、ヒップホルスターに通常BB弾の入ったGLOCK 17ベースのガスガンを入れる。現金輸送に関わる可能性も考慮して……と、こっち側の仕事の兼ね合いもあって訓練させている。ホルダー・ホルスター共に固定バンドを外した状態で装備されたGLOCKに手をかけ、抜き撃ち姿勢をとる。物理的中距離戦力としては頭1つ抜けていることになる。


自分はバイクグローブのようなプロテクターが付いたファイティンググローブとトレーニング用のバタフライナイフ1本のみ。切断能力を持たないバタフライナイフは打撃しか出来ないが、犬鳴の力を活かせば一般人とは比較にならない程のダメージ量を出すことが可能だ。悩みどころなのは、犬鳴の存在からすればそれは誤差の範疇に過ぎないこと。だから戦闘になれば手に持ちはするが防具のような使い方にしかならない。右足の爪先の横に左足の踵が来るよう足を出すと軽く上半身を前傾させる。両腕両脚に一瞬強い力をかけると血管が爆発的な浮き上がりを見せミミズのように蠢く。


犬鳴村には、他との交流を絶って以来近親交配で存続させてきた歴史がある。更に怪異化という属性が加わった事でホモ・サピエンスが持ちえない特性を持つことになり、犬鳴血族特有の戦闘姿勢が発生した。通常ホモ・サピエンス時には意味が無いが、犬鳴血族系ホモ・サピエンスになった今では重要になる姿勢だ。 物理的至近距離戦力としては最高火力だろう。


刺すような冷徹な眼で、あるいは獣のような獰猛な眼で見つめる先、UFOのドアが開きタラップが飛び出す。

「All weapons ready」

初動を素早くとるため、より力を入れる。ドアから漏れる白い光に黒い影が2つ写り込む。細めの体に逆涙型の大き目な頭。恐らくグレイと呼ばれるタイプの宇宙人だろう。細かな動きからだと何か話をしながらタラップを降りてきているようだ。

「莉衣菜。降りてきた宇宙人たちの話してること聞き取れるか? 似た音を出してくれればいい」

[試してみる。うーん……………………え?]

「どうした?」

[とりあえずさっき聞き取った会話の一部再現して話すね]


〈いやー。船内クソ暑くね〉

《そりゃそうだろ。あんな空気抵抗まみれの形になりでもすれば空力加熱も酷くなるわな》

〈だってさー。あんなに目立つように展示されてるだからさ。こっちだとアレが最適解かと思ったんだけどな〉

《なわけねぇだろ!!俺らの星と似通ってんだつったろ……》

[って感じみたい]

「はい?日本語喋ってん?」

[うん]

「わかった。ありがとう。メリーさん、黎、現状維持のまま待機。合図で攻撃開始して。ちょっと声掛けてくる」

とりあえず戦闘能力維持のままタラップを降りてきたグレイらしき宇宙人……もといグレイに近付く。



「こんばんはー。見た感じこの星の生物ではなさそうな見た目してるみたいですけど、どちら出身ですか?」

〈うわぁ!!ビックリした!!〉

《大袈裟すぎだよ。失礼しました。この星の人ですね。えーっと、私たちはあなた方はの名前でいうとM78星雲、『光の国』なんて呼ばれ方をされてる所から来ました。赤と銀中心でも巨大でもなくてすみません》

○ルトラマンの出身地のリアルを見せつけてきた……

「あ。いえいえ、謝ることでもないと思います。今のうちにお尋ねしたいんですけど、どういう目的でこの星に?」

〈観光〉

《ということですので、しばらくよろしくお願いします》

「あっはい」


とりあえず、敵対的では無さそうだ。ハンドサインを出しメリーさんと黎の戦闘態勢を解除させる。

「お2人(?)のことはどうお呼びすれば良いですか?」

〈どうする?〉

《わかりやすいように、とりあえず私のことはA、隣のコイツは1とでも呼んでください》

「AなのにBにならんのかい!! おっと失礼。ついクセでツッコミしちゃいました」

〈コレ見たかったやつ!!〉

《お付き合いありがとうございます。なんかすみません》

「いえいえ」

ボソッとこっちからしたら巻き込み事故みたいなもんだよと呟く。


あー。なんかやりづらい。

「敬語とか辞めてタメでいきません?」

〈ま?ええん?〉

《一気にギア上げすぎだよお前。では、よろしく》

「おう。ところでさ。そのUFOの中ってどうなってるの?」

《入ってみます?》

「マジ!?入るはいる!!そこの2人も乗りたいって言ったら乗せていい?」

〈3人の間違いじゃない?〉

と言って、人間だと耳がある当たりを叩く。おっと。話が聴き取りづらいと思ったら莉衣菜がわーぎゃー騒いでた。

[そろそろ車から出てそっち行きたいんだけど!! あと乗れるんだったらUFO乗せろ!!]

「へいへい。出てきていいぞ。メリーさんも黎も乗りたければいいよ」


入ってみると見た目より圧倒的に大きな体積を誇るらしい。ボタンのようなものや謎のメーターなど色々ある。

「このボタンを押すと何が出来るんですか?」

と黎が聴くと

〈わからん〉

と返ってくる。メリーさんが「これは何?」と何かを示したモニターを指さすと、やはりわからないと返ってくる。

「もしかして……」

〈なーんもわからんwwwwwwwwww〉

《何が何だか全くわからないまま色々してたら目的の星に着いたみたいです》

ズコーと叫びながらコケる莉衣菜。いつの間にそんな芸身につけ……会話聞いてたからやるんやろな。


ん……?旅行って言ったけど、これじゃ目立つ。どうするつもりなんだ?と思っていたら、

「旅行するって言ってましたけど、お2人はどうやってするつもりでいたんでした?その格好では目立ちすぎますよ……」

と黎が聞いた。

〈そう言えばそうだね。どうすればいいんだっけ?〉

《腕に付けた機械でどうにかなるらしい。こうすれば…………》

猫になった。いや莉衣菜!!『可愛い〜』じゃねぇんだよ!!相方の反応からするに大失敗じゃねぇか!!

「これどうにかする方法知ってる?期待はしてないけど」

〈知らん〉

「だろうなぁ!!」

さて。どうしたものか。とりあえず、体を見てみるだけ見てみよう。


ちょーっと失礼するよ。と言いながら、猫になった多少はまともな方を抱き上げると色々なところの毛を避けつつ何か手がかりが無いか確認する。が、どれだけ探っても見当たらない。ふむ。相方の方が持ってる同じ奴を借りて見てみるしかないか。振り返ると○ラクエのスライムみたいなものになった瞬間が見えた。頼みの綱切りやがった。日が昇ると結界の効果が無くなると同義のような状態になる。さらに状況を悪化させているのが、軽く調べただけでも検索結果の1ページ目が記事で埋まるほどネットニュースで話題にされているところだ。自分のSNSで探してコンタクト取ってくると言い出す人もちらほらいる始末。UFOをそのままにしておけば面倒な事になるしどうすべきか。


とりあえず一旦猫(まともな方のグレイ)とスライム(バカっぽいグレイ)は家に連れて帰るとしてと。UFOだけは大きさのせいもあって簡単には扱えないし…………とにかくメインコンソールらしきものを触ってみよう。ありがたいことにピクトグラムはそこそこ宇宙共通らしい。………………………………ありがたがって良いのかわからなくなってきたが、とりあえず今は助かってるしいいか。ピクトグラムを元にコンソールを操作し、他の機械にもピクトグラムを適用して自分たちでも動かせるようにした。したはいいが対応策が出てこないんだよなぁ。仲間と協力して、大きさに関係なく出入口部分に接触したら中に入って操作出来るように設定までは出来たがその先が進まない。せめて、自分たちが乗ってきたワンボックスのバンに乗る大きさに出来れば事はだいぶ好転する。そのヒントが掴めれば。


と、莉衣菜が肩を叩き言う。

「今までの流れを見るとメリーさんとか黎とか、テケテケすぁんみたいなボケ倒し展開じゃん?先輩もボケてみたら?」

「テケテケすぁんってなんだ。すぁんって」

「テケテケ『さん』かテケテケ『くん』か迷ったのよ!!」

「○グホライズンの主要キャラクターのアイドルみてぇなことになってんなアイツ。でも、いいヒントになったよ。ありがとう」

手入力で形状を変更出来るコンソールを探し、なんとか見つけるととある形にする。


「ただいまー」

「お邪魔します」

と挨拶をして莉衣菜の実家の豪邸に上がり彼女の部屋に入るとゴトンと音を鳴らして金庫を置く。ダイヤルと指紋認証のツーロックタイプで、自分の指紋を登録し黎に決めさせたダイヤルパターンを使ってるからよっぽどの事がない限り勝手にあけられることは無いだろう。宇宙すら飛べるような理不尽仕様だから、ダイヤモンドカッターを押し当てようがレーザーカッターで焼こうがバーナーで炙ろうが傷1つ付かない。豪邸の部屋に金庫があってもおかしくは無いしちょうど良かった。


事の顛末としてはこうだ。猫とスライムになったグレイ2体はこっちで確保・保護し、UFOは形状を金庫に変え莉衣菜の知り合いの金庫を一時的に預かったことにして莉衣菜家で保管する事にした。縦横高さ大体50cmで金庫としては小型なものだが、そのくらいでもなんとかなったから多少の楽が出来た。まぁ結局重たいには変わりは無いが。面倒臭いのはここからで、異形含むペット2匹をどうしていくかが問題になるが食事は要らないらしいし幾分かマシだな。


事が済んで一旦力を抜けるタイミング(グレイたちはペットのままだが)が来た時に思ったが、宇宙人とかUFOとかも怪異怪談や都市伝説の仲間の扱いだったんだな。別ジャンルに扱われること多かったしわからんなぁ……

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誰か助けて!!怪異達が自分の本領を忘れてるから!! KEIV @3u10REAPER

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