8


 噴水を行くと、レンガ造りの外周はアリの行列に満たされていた。飴だったものを分解する強い太陽が、このアリたちを溶かさないのは人と同じに扱っているからだ。そう考えると、この水たまりの消えた公園での昼下がりは、8分前の恒星で記録されて宇宙へ流れているのだ。帽子や服が剥ぎ取られ、8分後頃には宇宙へいるのだ。となってしまう。建物は氷に透かして眺めた時間のようで。


 木陰へ逃げる夏の日に、アリたちはまだ噴水の近くで餌を運んでいる。太陽が舐めた飴の熱い液が、ドロリと虫の体へ入って消えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る