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 薄らと引かれた線は、机の上と部屋の中で影を追う。綿毛の身体は花束を添えた血管の端で、喜びながら廻っている。台の位の大きさで動くのは、心臓が小さいから。光は熱くて、眩しいほどに本を崩す。帯びた胚乳の足は、それでも廻ることをやめないでいた。

 

 煙草に掻き消されてゆく机の上を、色鉛筆でなぞる心細さの正体。それは木材の記憶には悲しい家庭の話しかなかったから。紐解く方法の先にまた本があって、次は色鉛筆が崩しにゆく。

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