第2話

最初の記憶は、文化住宅でした。


文化住宅?


要は、安めのアパートでしょうが

人によっては、これを二件借りして住んでいる。ってのもあったらしいです。


寝てると、階段を誰かが、上ってくる音が分かるんですが

“ざっ、ざっ、ざっ、ざっ”

なんか軍隊の行進のように響いて聞こえ、怖かった記憶があります。


そこから、幼稚園に通ってたのか、マンションに引っ越してからなのか、

記憶は正確ではないけれど、僕は仏教系の私立の幼稚園に入りました。


よく、ミッション系とか言いますが、仏教なら、ブッション系なのかしらね…。


朝は、みんなでお経を唱え、それ以外は普通の幼稚園でしたが

幼稚園内に習い事教室があって、僕は絵を描く教室に入れられました。


まぁ、こんな年頃に選択権はないです。


そんなある日、僕の絵が、何かの展示会で展示される事になりました。

えらく家族は喜んで、祖父母も意気揚々。


先だって、母は私を自転車に乗せ展示会へ。


数時間後、母は祖父母宅に行き、解せぬ顔で言いました。


「…鯉のぼりじゃないから。原付バイクだから」


鯉のぼりの絵と言われ、小一時間、探しまくった僕の絵は、スーパーカブでした。


解せぬ顔をした母の横、ホゲッとした、この子が

後の“平成のゴッホ”になるはずもありません。




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