第6話 人生観


「人生、死ぬまでの暇つぶし」

誰かの自棄から零れ出た言葉だったか、宗教だったか、定かに記憶にはない。

まあ誰がどう云おうと自由だ。


自分の場合は、こうだ。


人生は、走り幅跳びみたいなもの。


人間は誰しも、生まれてから、ずっと、ずっと、助走をつけている。

養われている間、学んでいる間、遊んでいる間。それらはずっとずっと助走だ。


そうして、それら人生のモラトリアムもとい助走が終わった時。社会へ向けて飛び出すのだ。

今まで溜めた助走のパワーを、100%余すことなく飛距離に変換して。


人生の終わりに向かって。


そこからは、ひたすらに飛び続ける。社会という空気抵抗に抗いながら。


時に

強い風に煽られて、落ちていく者。

自ら翼を畳んで、飛ぶ事を諦める者。

自らの勢いを、他の者に渡す者。


時に

誰か別の飛翔に助けられたように、勢いを増す者。

伴侶を見つけ、勢いが揺るがない者。

別の助走を見届ける為に、落ちるわけにはいかないと必死に耐える者。


それが人生


そんな数多の飛翔体の一個体に過ぎない自分は。

この飛翔の着地点はどの辺なのかと。

多分この先飛距離を伸ばせる出会いは無いだろうなと。

早くも着地の事ばかり考えて、惰性で飛び続けている。


毎日、フライトレーダーを見る様に。

自分の飛行位置を思い浮かべては、燃料計の数値を他人事の様に眺めて、あとどれくらいで切れるかなぁ、なんてこれまた他人事の様に呟いて。

今日も眠りに就くのだった。


―やはり、人生死ぬまでの暇つぶしなのかもしれない。


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