第8話 突然の訪問者

 ——そして、夜。

 

 

 夕食とお風呂を終えた2人はリビングのソファーに腰掛けていた。



 「あ、あの……」

 

 

 紗良は隣に座る柚稀に恐る恐る声をかけた。

 

 

「なんだ」

「明日、月曜日なんですが……」

「だからなんだ。はっきり言え!」

 

 

 なかなか言わない紗良に痺れを切らした柚稀は怒鳴った。

 

 

「あ、すいません。

えっと、月曜日なので……高校に行ってもいいですか?」

「高校だと? お前は俺のなんだ」

「えっと……家政婦です」

 

 

 紗良は怯えながらも口を開いた。

 

 

「(仮の嫁でもあるけど、そんなことは口にも出したくない。高校行けないのかな?)」

 

 

 だが、心の中では強気であった。

 

 

「……とりあえず明日、明後日は休め。水曜から行けばいい」

「2日間は休まないとですか?」

「ああ、その2日間は俺が出張で秘書もいないからな。

それからは秘書に送り迎えさせる」

「へ? 送り迎えですか? 自分で行きます!」

「ダメだ。送り迎えさせる。

仮の嫁だからな。お前は俺の言うことは逆らえないんだよ。いいな」

「……」

「返事をしろ!」

「……っ! は、はい……」

 

 

 怒鳴られびくつきながらも紗良は返事をした。

 

 

「(なんで送り迎え付きなの?

借り作っちゃった私が悪いけどなんでこの人の言うこと聞かなきゃなのよ。

俺様すぎでしょ。もう嫌!)」

 

 

 

       * * *

 

 

 

 ——そして次の日。

 

 

 家政婦としての仕事をするため、早めに起きた紗良。

 

 着替えを済ませリビングに向かった。

 

 

「(よかった……。柚稀さんまだ起きてなかった)」

 

 

 現在の時刻は5時半。

 

 早速朝食作りを開始する紗良。

 

 

「(朝はパン派だっけ。フレンチトースト好きかな。好き嫌い無いって言ってたから大丈夫だよね)」

 

 

 そして出来上がったのは、フレンチトースト、サラダ、コーンスープだ。

 

 

「あ、柚稀さんおはようございます」

「ああ」

 

 

 それから数分後、柚稀が起きてきた。

 

 

「(挨拶したのになんで返事が"ああ"なの? 挨拶しないし俺様だし。

ほんと嫌! 家政婦として完璧にこなしてギャフンと言わせてやるんだから!)」

 

 

 挨拶をしてもらえなかった腹いせか、家政婦としてやる気を出した紗良だった。

 

 

「美味い。甘さちょうどだな」

「……よかったです」

 

 

 フレンチトーストの出来栄えは良かったようだ。

 

 

「じゃあ、行ってくる。勝手に家に帰ったりするなよ」

「は、はい……。わかりました。

いってらしゃい」

「(なんでバレるんだろ? 誰もいなければ帰れると思ったのにな……)」

 

 

 柚稀を玄関で見送った紗良は広いリビングを改めて見渡した。

 

 

「ほんと広いな。

今までここで1人で暮らしてたのか。なんか寂しそうだな……」

 

 

 

 ——ピンポーン

 

 

「え? 誰だろ?」

 

 

 テレビを見ているとインターフォンが鳴った。

 

 

「え……。なんで、いるの?」

 

 

 

 ドアホンを確認するとそこには——

 

 

 

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