勝星零

黒石は、宇宙の真中へ吸い込まれ、無事天元に着地した。


対局時計をゆっくり押して相手を見ると、目を丸くしていた。

丸くした後、彼は目配せし微笑んだ。

僕もつられてにやりと笑う。


微笑みながら白石が置かれた。

盤の上に交互に黒が、白が増えていく。


宇宙の中で、最初はぽつぽつと、やがて点が線になる。


僕は黒を目いっぱい広げた。

風呂敷を大きく、大きく広げる。


一年前、後ろ暗い風呂敷は、くすんだ白色だった。

今日の風呂敷は黒色だ。

白よりはるかに暗い色のはずなのに、艶々と輝いている。


不思議な気分だ。

黒い風呂敷は、盤上の宇宙の全てを飲み込むようだった。


いや、飲み込むのは当然か。


僕は高らかに叫んだんだ、石を放ったあの時。



この宇宙の中心は僕がいただいた。


だから、全部僕のものだ。



不可能だって?

やってみなくちゃ分からない。


頭を回せ。

もっと美しく、

もっとキラキラ輝く一手を、

探して、

探して、

ひたすら探せ。

ああ、楽しくて仕方がない。


そして、




白い刀がきらめいて、






黒の風呂敷を引き裂いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る