第一楽章【始まりの物語】

第1話【ヨルナミ=ユナミ】

ある日の夜の出来事だった

そこにはある少年が窓から外を覗いていた

その少年は男の子としては少し小柄だった

目は誰よりも輝いていたが、少し悲しみがあるような暗い目をしていた

少年はあることを考え、思い出していた


世界はこんなにも音が溢れている

蝋燭や木が燃える音、ペンを描く時の音や波打つ時の音。

他にも音が世界には沢山溢れているの

音が世界に溢れていると気づいたのは12の時。ある日の夕暮れ時、静かに沈む太陽を眺めながら普段しない事をしてみようと思い、耳を澄ませてみると波の音が聞こえ始めた

普段は人で賑わっていて聞こえなかった音が聞こえ始めた

ザァー……ザァー……

とても綺麗な音だ

しばらくボーッと立っていると寒くなったので焚き火を炊いてみることにしてみた

火を付けてしばらく待っていると、薪の中から紅蓮のように真っ赤な炎がパチパチと音を立てながら燃え盛る音が聞こえた

普段は意識をしてなかったが、意識をしたらこんなにも綺麗な音があるのがわかる

この音はそれぞれいい面と悪い面がある

そのふたつを合わせたらきっと、いい音が出るのだろうね


ある日の早朝。少年は不思議な所に居た

周りは雲の上の空みたいに真っ青で限りなく永遠と続く、この世のものとは思えないほど美しい景色の空間に立っていた

周りを見渡し、ふわふわと歩いているといきなり、何か大きなものが声を掛けてくる

姿は霧で包まれており見えなかったがどこか透き通っていて、聞き覚えのある優しい声で

僕に語りかけてきた

「ヨルナミ。……ヨルナミ=ユナミ……貴方はこれから険しい道になると思う。でも、決して挫けたりはしたらダメだ。いつも仲間がいると思うから……」

この声は……とても安心感のある声

昔聞いた事のあるような……懐かしいとも感じた

「僕は……何処にいるの? 」

何処にいるのか、ここはどこなのか。聞いてみることにしよう

「貴方が近い未来、来ることになるかもしれない場所。」

近い未来?なんだろう……

更に聞こう。そう思ったら霧がどんどん深くなっていき、小さい声でまた聞こえてきた

「ここは貴方の夢の中。でも、また現実になると思う。だからその時になったら……また、会いましょう……」


気づいたら僕はベットの上で寝ていた

部屋にはよく読み倒している本が何冊も落ちていて、片付けないとと思ってしまう

何故か大粒の涙を流し、その水分で頬を濡らしていた

涙を拭いて少年はベッドから出る。そして洗面台に行き、顔を洗う。目は右目が青色、左目が赤のオッドアイ。そして自分の肩ぐらいまであるとても長い青色の髪をとかし、歯磨きをして自分の部屋ってほっとしようとするといつも通りの時間帯に、細身の男が入ってくる

「ヨルナミ! 起きろ! 朝ご飯やぞ! ……ヨルナミ? 」

ヨルナミと言う少年は細身の男に引っ張れられ孤児院の下に降りて行った


僕の名前はヨルナミ。ヨルナミ=ユナミ

孤児院に住んでいるどこにでも居る子供。

生まれて気付いた時にはここに居たんだ。何故、僕がここに来たのか教えてくれない。親の唯一の手掛かりって言ったらこの首に架かっているペンダントぐらい。中には写真が1枚入るぐらいのスペースがある。最初からここには何も入ってなかった

でも、誰かの温もりは感じる。それが親のだからなのかは分からない


みんなが集まる部屋に降りていくといつも通り、朝食が用意されている

いつも食べているパンや水など質素な物ばっかり

食べているといきなり職員さんが隣に座り、話しかけてくる

「ヨルナミ、君が内気な性格なのは分かるよ。でも、君も15なんだからそろそろ体のトレーニングとか始めたらどう?16になったら徴兵が降って君もお国のために戦うのだから」

職員さんはいつも同じことを言うんだ

「もう一度言うけど、今から300年前に我が国と隣国のアクアヒルス国が覇権争いを始めたんだ。世界をひとつにするのに大切なね。

最初は負けていたんだ。でも、今の国王陛下が即位した17年前、我が国は徴兵という形で指揮を高めようとしてるんだ。分かったね?」

なんでいつも戦いなんだろう。戦いで解決することは無いと思う。犠牲や悲しみを生むのに。話し合いや世界の音を聴けば、気付けば、平和になると思うし。なのに、何故気が付かないのだろう

その後、祈りを捧げた

「今日も32人の子供たちと私たちが、タトイヒ様の御加護を受けながら過ごさせていただくことに感謝致します」

どうやらこの国の独自の文化らしく、初代国王タトイヒ・イヒ・タトの事を神として崇めているらしい

この施設は35年前に作られた施設らしく、この宗教が根付いているらしい

だが、現在の王が即位してからと言うもの、タトイヒ教は禁忌とされ、国全体から廃れて行ってしまったのだ

だが、ここの職員さんの意思によりここだけはずっと根付いているようだ

バレたらどうなるんだろう……

朝食を食べ終わったヨルナミは自室に帰る

自室のベットでいつも通りのびのびと寝転りながらボーってしていると少し頭にあるものが浮かんだ

これは……

そう思い、紙に書き写してみる

何故、こんなものがいきなり思い付いたのかは分からない。でもとてもいい物が出来そうな予感がする


素材は……木がいいかな……加工しやすいしなにより、軽い

糸は……その辺に転がってた金属の紐でいいか。6本あるし、6本全部使おう。

決まれば忘れないうちに動こう。忘れやすいから尚更

ヨルナミはノコギリや斧などの木の加工に必要な道具を持って外に出ていく

「職員さん、少し木を切ってきていいかな? 」

職員さんに一応確認を取る事にした

いきなり作り始めて怒られたら怖いから。

職員さんは少し困惑しながらも、何をするんだろうと思った顔をしつつも「いいよ」と了承してくれた

多分、トレーニングをするのかなって思ったんだろうか

孤児院の隣にある森林地帯に入り木を見てみたがどの木を観てもピンと来るものが生えていない

色々と探してみたがどれも新木みたいで、自分が探している物が見つからない

もっと綺麗な木目でとても輝いているやつはないのかな……

森を歩いているとひとつの光が現れた。

光は綺麗に自在に動いており、とてもこの世の物ではないような、そんな不思議なものだ

どうしても光がなんなのか気になり追っていく

森が深く深くなって行く

気が付くと、古い木が沢山ある領域に辿り着いた

どの木も樹齢3000年なんではないかと言わんばかりに苔が生え、立派で太い幹をしていた

そんな中一際目立つ、光が僕に語り掛けるように輝いていて綺麗な木を見つけた

この木にしようと思った。でも、幹が太すぎて到底1人では切れそうになかった。だから近くに落ちていた新木のような太さの枝を貰うことにした

原木を持ち運べるように何個かに分けて持って帰る

孤児院に着くと設計図の通りに組み立て始めてみた

最初は箱の形にしようと思ったがヨルナミはピーナッツが大好きだから、ピーナッツの形にしようと思い、木の板をを曲げてピーナッツ上にして、組み立てた。何故、こんな変わったものが思いついたかは分からないけど作ってみるといい物が出来たと満足出来た

糸を張って鳴らしてみるとド、レ、ミなどと音が聴こえることにも気づき更には糸を抑えたら特定の所で変わることにも気づく

そこにヨルナミは目印として釘の頭を取った物を打ち付けた

こうして、世の中に楽器というものが出来た

作り上げた時、ヨルナミの目は今までにないぐらいに輝いていた

孤児院の人はヨルナミが新しいものを作ったのを見つけた

「これはなんて言うの?」

孤児院の人は聞いてきた

「これは……なんだろう……名前はまだ決まってない……」

名前を考える暇はなかった

「そうなんだ。どうやって使うの?」

孤児院さんの質問に対してヨルナミは弾き始める

職員からすると初めての体験ですごく感動したのか、気付いたら拍手をしていた

「そうだ! これをみんなに聞かせてみよう 」

職員の勝手な思い付きにより、ヨルナミは大広間に引っ張られて行かれる

「皆さん! ヨルナミが新しいものを作ったから聞いて! 」

職員は孤児院の部屋の色んな人を集めたので

もう逃げられないと確信したヨルナミはとりあえずドレミファソラシドと弾いてみた

職員さんと同様みんな拍手をしてきて、恥ずかしくなったのか、ヨルナミは顔を赤くして部屋に走って帰っていった

その後もヨルナミは色んな人に引っ張り出され、その噂は街に広がって行く

最終的には国王の耳にも入ったそうだ

ある日のお昼時に兵士が孤児院を訪ねてきた。最初は徴兵関係かなって思ったがどうやら国王がヨルナミの物を聞きたいといい、呼びに来たのだった

「君がヨルナミか。国王陛下がお呼びだ。着いてこい」

ヨルナミは国王に聞かせたら少しは世界が変わるかもと思い、着いていくことにしたのだった

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