ねェ。ソのかオヲもっトみセて?

KEIV

ソのかオわタシすきナの。

唯一、私が私の意思で作った、私だけの部屋。誰にも気付かれない、誰にも見られない、私だけの部屋。


四隅の採光窓から入る光以外無い、そこかしこに血飛沫が飛んだ、ボロボロの地下室の真ん中に1つ、人の座った、正しくはイスがある。1人の男性が座らされていた。手、足、そして胸部を椅子に固定されて 。


私は、その部屋の出入口の真反対、椅子の正面に位置する、隠し窓のある部屋から男の様子をうかがいながら、手元に置いたパッドを操作して音を流す。さも隣に部屋があって、そこでこの後待ち受ける事と同じ事をされている様な雰囲気を出せる様にスピーカーを設置して。


「先に音でいたぶった事だし、そろそろ始めようかな」

そう呟いて、黒のシャツの上に黒のパーカーを羽織り、黒の二分丈のピッタリとしたデニムと厚手の黒タイツと黒スニーカーを履いて、サテンの黒色長手袋を付け、ウエストポーチを付け、古びて左下が割れて無くなり口元が半分ほど見えるようになった、おたふくの面を付け、手を袖にしまう。黒と言っても、返り血のシミが残っているから、所々赤茶色に近い色が乗っている。


道具をウエストポーチに入れ、椅子の真後ろにある扉に回る。

【ギギギ キー】

と鳴らし錆び付いた扉を開け、中に入る。正面に回ると、その顔は既に恐怖に支配されていた。あぁ。この顔がもう堪らない。ついつい口が三日月になってしまう。


袖から手を出し、スルリと首の後ろに手を回し顔を近づけて、

「ネぇ。わタしのスきナカおをミせテ?」

やや掠れた、けれどそうでなければとても綺麗だった。と言えるような声で言う。


回した腕を抜き、ウエストポーチを前に回し、中から道具を取り出す。途中、わざと使う予定の無い市販の6点セットの中で1番太い血の付いたプラスドライバーを落とす。それに気付かないフリをして、小型のカナヅチと1番太いマイナスドライバーを出す。


肘掛に乗った右手の甲の中指に繋がる骨にマイナスドライバーを当て、カナヅチを振り下ろす。骨が砕ける感触。

『い゛』

と言う声。だけに留まらず、皮膚も破れ血が出て来てしまった。力加減難しいなぁ。少し指先の方にずらしてもう1度。

『がっ』

と声を上げ苦悶の表情を浮かべる。


また1回。そしてまた1回。何回か叩いてはずらすを繰り返し、中指のつめの近くまできた頃わたしは1度手を止め、面を外しうなだれた顔を持ち上げて、光の無い目を、真っ赤な唇を近付けて

「ねェ。ソのかオヲもっトみセて?」

そう囁いて、指を変えて右手のカナヅチを振り下ろす。


『あ゛っ。がっ』

「こノかオがスきなノ。ねぇ。もッとミセて?」

そしてまた1度。そしてまた1度。そしてまた1度。そしてまた1度そしてまた1度そしてまた1度そしてまた1度そしてまた1度そしてまた1度そしてまた1度……

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ねェ。ソのかオヲもっトみセて? KEIV @3u10REAPER

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