ファルワードヒストリー

宇佐見三太郎

第1話 序

 先人の伝える所に拠れば、初めに日干し煉瓦で都を築いたのは、嵐の神ダガンと誓約をとりかわしたメシリムの人々である、と言う。

 あるとき、メシリムびとは、この世のことごとくを我が物にせんと欲っし、大地の果てに土地分けの石碑を立てんとした。

 されど、彼らが、その足が動かなくなるまで歩を進めても、大地の果てにはたどり着けなかった。

 メシリムびとは言った。ああ、なんと果てない大地よ、と。

 そのつぶやきの音を、なるべく忠実に書き記せば、ファルワードとなる。

 故に吾は、大地の上で起きた尽くを書き記すことになるこの史書を、ファルワードの史書ヒストリーと呼ぶこととする。

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