第10話 ■授業【社会・マナー、作法】2

■授業【社会・マナー、作法】2


「ようやく各グループ出来上がりましたね。では、これより20分間与えますので一人2分ずつ、自分の想いをグループのメンバーに語ってください。テーマは『男性が女性に望むものとは』ですよ。そして皆がしゃべり終わったら残りの5分でグループの意見をまとめてもらいます。この時間内に終わらなかったグループにはペナルティを与えますので。ではスタート!」

質問を与える間もなく開始の合図をすると、彼女たちは誰一人としてそれに疑問を持たず、従順に話し合いを開始した。

僕は彼女たちのグループを見て回ろうとしたが、やはり僕が見て回ると話しづらそうにする生徒もいたので、真剣にピュアな彼女たちの意見をきくためにも、あえて彼女たちの話し合いは聴かず、発表を待つことにしたのだ。


発表の時間になり、それぞれの班のリーダー達が黒板の前に立ち、グループ内で出た意見などをまとめて説明した。

一番手はリーダーの高木が率いる優等生グループの発表が始まった。

「みなさん、よろしくお願いいたします。今回私たちのグループで「男性は我々女性に何を望んでいるか?」というテーマについて話し合ったところ、様々な意見が出ました。例えば女性は積極的に社会的地位の低い仕事につくべきだという声などもありましたが、これは男性様の趣味嗜好の違いもございますので、一概には言えないということになりまして、最終的には男性様が私たち、特に若年層に望むものは胸やお尻といったような、性的な興奮では無いのかという結論に至りました。

これは生物なら誰もが持っている生殖本能によるものでもありますので、どの男性様も私たちが性器を自らお見せすることに興奮していただけるのでは無いかと考えました。また女性の中にはマゾヒスト的な性癖や性格の方も多いというデータも発見することができました。わ、私たちの発表は以上となります。」

優等生の高木は、男性の喜びそうなポイントを的確に抑えつつ素晴らしいものだった。欲を言えば、発表の際にはもっと恥じらう姿があったほうがリアリティがあって良かったが、彼女なりに、淡々と話すことによって自らにかかる羞恥を軽減させようとしているようだった。それでいて生物と絡めた思想をアピールすることによって更にエロさは無くなる。

それはテレビに映る裸族の女性のダンスをテレビで見ても興奮しないのも似た感情でもあった。しかし隠されると見たくなるのが男の心理のサガなのだろうか。


高木の発表は様々な角度から僕を深く関心させた。

次はもっとも対照的な発表を聞きたかったので今仲、加藤のいる不良グループに発表を求めた。すると加藤が立ち上がり。

「はいっ。。私たちのグループでは、、最初にあんなちゃんがパンツ見せたらいいって言って、ゆうりちゃんが男の人は痴漢をのぞんでるっていって、私もそれは同じ気持ちでした。皆からもいろいろあったんですが、私たちも高木さんたちと同じでー。男性は女性の裸を望んでいるということになりました。」

高木と加藤達の発表は月とスッポンの差だった。

こいつらはやはり男をかなり単細胞な生き物だと思ってなめてやがる、もしかしてこいつらが単細胞なのかも知れない。そこからして高木とは違う。それが同じ性器を見せることだとしてもだ。

まぁ、ここで様々な感情を持つと、この後の授業にも響くと思い、この場では余計な詮索はしないこととした。

「はい。よくわかりました。では次!」

その後も各グループごとに発表をさせたが、どいつもこいつも高木たちのグループをなぞったような言い回しだった。

高木たちのグループを最初に発表させたのは、失敗だったかも知れない。

大体の女は『身体を見せて触らせていれば、男は喜ぶもんだろう。』という単純な思考回路を持っていることがよくわかった。

その思考回路はあながち間違いでも無かったし、彼女たちの年齢を考えると、その程度の思考力しか無いのも頷けた。

最後の発表は先ほどの謝罪組によるものだった。

「私たちも、様々な意見を出し合ったのですが、前の発表にも出てたように、露出度の高い服装や、奉仕をする意識が大切だと思いました。それに付け加えて発表させていただくと・・・。男性が私たちに望むことは、愛情を向けること。なんじゃないかと思いました。私たち自身が常日頃から男性様を受け入れ、納得されるまで身を捧げられるか、それこそが奉仕の精神では無いのかと・・私たちは考えました。」

短い発表だったが、それがまた良かった。よくよく考えると彼女たちは他の女子グループにも入れなかった、もしくは入らなかった生徒たちであり。彼女たちは気が弱いだけだと思っていたが、気が弱いというよりも奉仕の精神が他者に比べて高いのかも知れない。

僕はこの発表の最後で、とんでもない原石を手に入れたような気がした。

これから、この原石がどのように輝いていくのだろう。

それは間違いなく教員の手にかかっていた。

この子たちを素敵な女性にするためにも、僕はより一層頑張ろうという晴れやかな気持ちになった。



続く

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