第1話 妖獣保護センター(4)

 その後、所長らが獣(後日アツユという人喰い妖怪であることを知った)を回収、隔離し、調書を取り、殆ど怪我はなかったが一応の治療をし、なんやかんやあって一月が過ぎた。

 張景が聞くところによると、あの二人は揃って健康状態に異常はなく、天井の修繕作業を手伝っているとの事だ。どうやらあれ以外でも、天明が所長を見つけてこちらに向かうまでに、何枚か壁を壊し、あまりに急いでいたのか屋根を伝い渡った際には 屋根にヒビが入っていたそうで、所長がちょっと泣いたとか。

 張景はというと、あのあと広成子を説得し、晴れて妖獣保護センターの研修生となった。

「景くん!今日からここで働くって?」

「は、はい。今日からよろしくお願いします。ええと……スイさん」

 張景の姿を見るや否や、スイが作業を止めて駆け寄って来た。顔や服がペンキだらけだが、その屈託のない笑顔は年相応の少年のようにも見える。

 あれから、張景はスイにまだ自分のことを打ち明けられていない。すっかりタイミングを逃してしまったというのもあるが、せめてもう少し、この小さな兄を助けられるようになってからでも遅くないと、張景は思ったのだ。聞きたいことは山のようにあるが、少なくとも今は、

「景くん?どうかしたか?」

「い、いえ何でも。そうだ!お仕事が終わったら館内を案内してくれませんか?」

「ああ、任せとけ!」

 今だけは、このままで。

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