11:大渋滞

大柄な男は言った。

「家康!! ここであったが100年目!!  今日こそ因縁の戦いに終止符を打ってやるぜー!!」

端正な顔立ちと不釣り合いな小柄な男は言った。

「一休。お前もしつこい奴だ。お前がその気なら、ケリをつけてやるぜ」

そういって、家康と呼ばれた小柄な男は、サングラスを指で押し上げると、顔の前に手をかざす。所謂、「OK」の形にした指の間に息を吹きかけると、円を通った風は小さな竜巻になると、大柄な男に襲い掛かる。

一休と呼ばれた大柄な男は、顔の前にその鍛えられた量の腕を交差させ、なんとか竜巻を耐える。

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

白いタンクトップは、あっという間にビリビリだ。

「先手必勝! お前の能力は厄介だからな!! さっさとケリをつけさせてもらうぜ!!!」

一休は、パッツパツのジーパンの尻ポケットから、なにかを取り出す。

竜巻が通り過ぎると、二人が向かい合う路地裏には再度静けさを取り戻した。

一休が取り出したもの、それは、エロ本だった。それも、素人ものだ。

「なにっ!」

「バカめ家康! 俺もいつまでもやられっぱなしとはいかないぜ!!」

「し、しかも素人モノ、だと・・・?」

「一周回ってな・・・。これが一番興奮するんだ!!」

「童貞のくせに・・・、お前も大人になったな・・・」

ぱらぱらとめくる。静寂。

息を飲む家康。2ページ、3ページとめくると、4ページ目で一休はページを閉じた。

途端に、一休の体からバキバキと音がすると、筋肉が盛り上がり、短髪が逆立つ。

「ぐおーっ!!!!!」

一休が立っている地面はその体重と、空気が振動するほどの気に耐えられず、両の足の靴跡同様に沈んだ。

「くっ! 性的に興奮している、硬い間だけ通常の数十倍の身体能力を得られる超能力!! 厄介だぜ・・・」

「説明ありがとうううううううう!!!」

一休は片手で道端に生える木を引き抜くと、家康めがけて放り投げる。まるで野球ボールでも投げるかのように、軽々と投擲した。

家康は、先ほどよりも強く息を吹き付けると、大きな突風を巻き起こし、対抗する。枝、木の皮を剥ぎながら、ギリギリのところで木を退けた。

「いないっ!?」

しかし、木の横から正面を見ると、そこには一休の姿は無い。

「こっちだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「! 声に出さなきゃいいものを! バカ正直な奴だぜ!!」

木が着地する一瞬のすきに、一休は20メートルほど上空に飛び上がっていたのだ。

緊迫する路地裏に、オネエの声が響く。

「あんたたちっ! やめなさいよ!!!!!」

「あんたは!!すぐそこのスナックのママ!?」「次から次と説明ありがとう家康!!」

この一帯の主は、たいそうご立腹だ。

「あーんたたちっ!! 路地をめちゃめちゃにしてっ!! あーんまり『お痛』すると調教しちゃうわよーっ!!?」

大の男二人は、顔を見合わせすたこらと退散した。

「「すんませんでしたー!!!」」

もちろん、一休はあっという間に元の体に戻っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サイキック!九龍町 江東浪漫 @pikachi4869

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ