それでも魔女は毒を飲む

詩一

第一話 お前が魔女なのか【透久凪】

 “禍ツ喰まがつぐい”を構えて鏡桐きょうどう透久凪すくなは目の前の少女に問う。


「こいつが反応するということは、お前が魔女なのか?」


“禍ツ喰い”の剣身に彫られた刻印から重力に反して滴り昇る水滴は、水時計のようである。その赤黒く粘度の高い水滴越しに視線を送る。


 傷だらけの顔を覆った少女は、目から大量の涙をボロボロと零して首を左右に振る。

 透久凪が前に構えていた剣身を傾けると、少女は怯えた声で「ごめんなさい」と零し、踵を返して走り出した。透久凪もそれを追うが、彼女の逃げ足がぐんと速くなり、追いつけない。

 彼女の脚には風の魔法が掛かっているようだ。


 ここで逃すわけにはいかない。しかしそんな願いも虚しく、白いブラウスは夜の色にじゅんと染まっていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る