Scenario.7


 翌日、俺は目をこすりながら起き上がる。立ち上がり、机の引き出しを開けると、そこにはちゃんと杖があった。とりあえず全てが夢だったという訳ではない。一安心だ。

 さて、今日はまた劇的な1日になるかもしれない。

 寮の食堂へ向かう。何食わぬ顔で寮生たちに混じってご飯を食べていたが、だんだん心臓が高鳴ってくる。朝食を終えて部屋に帰ってくると、8時少し前だった。

 俺は、時計の秒針を見つめる。

 ――杖の力がもし強力ならば、もしかしたら俺の父親が生き返るかもしれない。

 戦争の最中、目の前で殺された父。生きていたなんてことはない。なにせ目の前で真っ二つになって死んだのだから。

 さぁ、神の杖は奇跡を起こせるのか――

 秒針がてっぺんを指す。

 だが、室内は静寂。

 秒針はどんどん進んでいき、8時1分になる。

 ――流石に死人を生き返らせるのは“実現が不可能”か。

 正直、期待していなかったと言ったら嘘になる。だが、ちゃんとルールとして“実現が不可能なものは無理”と忠告されているのだから、仕方ない。

 それに、まだ杖が無力と決まった訳ではない。これからに期待だ。

 俺は一つ息を吐いてから、身支度を整え、杖をカバンに入れて、家を出た。

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