イベント「あなたの上達法を教えてください」に寄せて、真花の場合

真花

真花の場合

 役に立つか分かりませんが、伝えてみようと思います。

 実際にそれを始めた時系列で書きます。


1) 小説をたくさん書く

 最初は適当なお題を決めて、とにかく短編を書きまくりました。どこにも発表していません。

 このときに決めていたのが

① 必ず終わりまで書くこと

② 直しをとことんやること

 の二つです。


 ①の「必ず終わりまで書くこと」は、小説を完成させることによって初めてその小説の姿が見えることと、小説を作る作業自体の全体の流れを自分に躾けるために決めました。②に必要な客観的に自分の作品を見るためにも有効です。副産物としては、達成感があるのでモチベーションを高めてくれます。


 ②の「直しをとことんやること」は、小説の質を上げるだけでなく、書き手の質も上げてくれるようです。

 直しのときには幾つかの点に留意しながら、少なくとも五周以上は直します。多い時は数十周直します。


 留意する点としては以下のものが挙げられます。

  a) 直すときに間を開ける。

  b) アラ、バリを意識する。

  c) 書いてあるものよりも書きたいものを優先し、何千字だろうとカットするときはカットする。同様に加筆の量を制限しない。

  d) カットした部位は消す。保管しない。


a) 直すときに間を開ける。

 書き上げてすぐの状態だと恐らく書こうとした意図が自分の中に生きている状態なため、あまり文章を客観的に見られません。一回眠るか、仕事に行くかをして完全に自分とその小説が切り離された状態に置いて、久しぶり、の気分で直しをします。書いた当日には見えなかったものがものすごくよく見えます。


b) アラ、バリを意識する。

 これは専門用語でも何でもなく勝手にそう呼んでいるもので、アラはその文章のモード、緊張度、雰囲気からして意図せずにそぐわない表現やセリフがないかを見ていきます。バリは、誤字脱字や体裁の失敗などです。それを改善することだけを目的に文章を読むのは退屈で苦痛なので、普通に直しをしているときに並行してこの作業をしていると意識します。


c) 書いてあるものよりも書きたいものを優先し、何千字だろうとカットするときはカットする。同様に加筆の量を制限しない。

d) カットした部位は消す。保管しない。

 小説を完成させた段から見ると最初の方とかがかなり雰囲気が違っていたりします。そう言う時はその文章は助走だったのだと割り切って、さよならして書き直します。同じようなことが他の部位でもあり得ます。そう言う時は躊躇せずに「今の私」の方が正しいとしてガンガン添削していきます。そのときにカットしたものは永遠にさよならします。当初は取っておいたのですが、邪魔になりました。


 以上のことを繰り返ししました。

 自分でもある程度のレベルに達したと感じてから、長編を書きました。


2)長編を書く

 短編を書いていても上達はする実感がありますが、長編を書くと書いている最中でヒュンと上手くなる時があります。この場合の長編は「終わりのある」長編です。この場合も完成させてから何回も直しをしてから本当の完成という手順は踏みます。この現象は連作短編を書いていたときにも生じたので、ある程度の長さで終わりあるものを書くと言うのは上達には有用なのかも知れません。


 長編を書き、また短編を書き、の往復をしました。

 その後、カクヨムに投稿し始めました。


3)カクヨムに出す。

 ネット小説が出されているのはパブリックです。そこで知らない誰かの評価をもらうと言う緊張感とプレッシャーが作品の質を上げるための努力をよりさせると思います。


4)新しいことを毎回ひとつ以上する。

 ひと作品にひとつは新しいことをします。前回と同じものを書いても意味がないと思っているので、これは自分の作るスタイルの問題です。ですが、これをすることによって自分の技量の幅を増す事ができているように思います。具体的には、テーマ選び、技法、内容、いろいろです。


5)他の人の作品を読みまくる。

 私はカクヨムに投稿されている作品を、絨毯爆撃のように読みます。もちろん興味が全く惹かれないものは開けませんし、最初のページでさよならすることもあります。しかしそれも含めて自分ではない作品に出会うことは自分の作品をよくすると思います。とは言え、私はその目的ではなく単純に素敵な作品に出会いたいと言う趣味でたくさん読んでます。結果的に、自分の作品をよくしていると思います。それは、他者の表現を取り入れると言うことよりも、他者の表現によって自分の文章が相対化されることの方が意味があると思います。


6)自分の好きな映画が何故面白いのかを研究する。

 自分が好きな映画というのは自分の好みを反映しています。と言うことはそれが何故面白いかを読み解けば自分に適した技法が手に入るに違いない。そう考えて始めました。

 ひとつの映画から幾つもの技法が盗めます。パクリはもちろんダメですが、技に昇華したものを引き継いで、自分にカスタマイズすればそれはもう自分の技法です。

 例えば「天空の城ラピュタ」の研究から、「主人公がどんな人物かを示すための小道具として脇役を登場させる」と言うものを抽出し、自分の作品で用いてみました。物語の根幹には関わらないですが、効果は発揮して、物語の立体感が出ました。

 これは漫画でも音楽でも言えます。流すのではなく研究をすることで見えてくるものがあります。


 そして現在は、ひとつだけ上記と違うことをしています。それは、ボツ原稿を作ると言うことです。どうあってもこれはダメだと言うものを無理に完成させなくなりました。これは最初は完成が掟だったのですけど、今の自分のレベルでは書ききらないものがあると言うことに自分で分かるようになったからです。書き上げることが身に付いているのでかなり胆力を消費しますが、ボツはボツとしています。

 それ以外は、特に直しをとことんやることは、永久に必要だと思っています。


 小説の書き方ではなく、上達法なので、私の手持ちはこれくらいでからっぽです。

 ここまで読んで頂いた方の、何かの一助になりますように。


真花

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