大好きな象さん

持野キナ子

大好きな象さん

 太陽ぽかぽか、いい天気。海はザブン、ザブンと元気だね。


 しゅん君とお母さんは、海へと遊びにいきました。

「お魚も、カニもいっぱいだね」

 しゅん君が笑顔で叫びます。

「しゅん君、良かったね。魚がみれて」

 お母さんは笑顔で言います。


「あれ、なんだろー。この子」

 しゅん君は岩場で丸くなる生き物を見つけました。

 お母さんが言いました。

「アメフラシかしら、小さくてかわいいわ」


 その時です。その子が声をあげて姿を見せました。長い鼻、おおきな耳、おおきなキバ、やさしい目…。


 ぱおーん!


「あー、ゾウさんだ」

 そこには、小さな象がいたのです。てのひらに乗りそうです。

 お母さんも、しゅん君もびっくりしました! 

「なんで海に象がいるのかしら、それにしてもこの子、アミがからまってるわ」

 象の体にはアミが巻きついてました。象も嫌そうです。

「象さん、かわいそー」

 しゅん君は泣いてしまいました。象を気の毒に思ったからです。

 と、とつぜん象が長い鼻を伸ばしました。象がしゅん君の涙を拭いたのです。

 しゅん君は嬉しくなり、象をなでました。その後、直ぐに仲良くなっていました。

 お母さんはその様子を、ほほえんで見ていました。


 夕方になりました。みんな、家に帰る時間です。

「しゅん君、もう帰る時間よ」

 お母さんは象と遊ぶしゅん君に言いました。

「お母さん、ボク象さんとお別れいやだよ」

 しゅん君は悲しげな顔をします。象も、さびしそうな鳴き声をあげました。

 お母さんは困りました。でもしゅん君と、象もかわいそう。そこで名案が浮かびました。

「象さんと仲良くなったみたいだし、家に来てもらう?」

 こうしてしゅん君と、象は家族になりました。


 しゅん君の家は丘の上にあり、とても大きいです。それはロボットのような見た目をしており、とても立派です。しゅん君のお父さんが建てた家でした。お父さんは、スゴい発明家をしています。

 象も家族に加わって、しゅん君一家は笑顔でいっぱいです。


 この日は晴れ。しゅん君と、象は二人で釣りに行きました。しゅん君はタイを釣り、象に食べさせました。


 次の日、象を見たしゅん君はびっくりしました。

 象が大きくなっていたからです。昨日のタイと同じほどに、成長していたからでした。


 翌日、象は大きなマグロを食べました。するとマグロほどに成長してしまったのです。

 最初、手のひらサイズだった象は、いつのまにかしゅん君より大きくなっていました。


 しゅん君は楽しくなりました。次の日は、象に鯨をあげました。

 するとどうでしょう。次の日には、象が家よりも大きくなっていたのでした。


 ドシン、ドシン、象は家に向かってきます。しゅん君の家は、ペシャンコになりそうです。


 ガシャーン、ウィーン、ゴゴゴゴゴ!


 象が家を踏もうとした途端に、しゅん君の家から足が出ました。変形して巨大ロボットになったのです。実はしゅん君の家は、お父さんによって作られたロボットだったのです。


 お父さんがロボットに戦うように言います。象も負けじと、ロボットを見つめます。


 でもしゅん君は、悲しい気持ちでした。

 お父さんのことは大好きです。でもしゅん君と、象は大事な友達でした。


「やめてよー、皆で仲良くしようよ」


 しゅん君は泣いてしまいました。涙がポロポロこぼれます。

 ふと足元を見ると、アリがおぼれているのを発見しました。


 しゅん君は閃きました。

「鯨を食べて大きくなったなら、アリを食べたら小さくなるかな……よーし」


 しゅん君は、うずくまる象の口にアリを投げました。


 しゅる、しゅる、しゅる、しゅるー!


 象は空気が抜けた風船のように、小さくなっていきました。

 最後には、アリと同じ大きさになりました。今はしゅん君の指に乗る大きさです。

 ロボットも、いつも通りの家にもどりました。



 これにて問題は解決しました。ただしゅん君は、象が大きくなったら一緒に住めないと知りました。だからクジラもマグロも、象には与えないと決心しました。


 しゅん家族と象は、ずっとずっと仲良く暮らしました。




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大好きな象さん 持野キナ子 @Rockhirochan1206

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