第8話どっちが飼い主?



 それにまいちゃんは顔をうつむけた。

「それはそうだけど・・・・・・」

「うん」

「でも、もし私が子供を持ったら危険な目に合わせたくない」


「そうだな。外は危険がいっぱいだ。熊蜂(くまばち)もいるし、スズメバチもいるし、岡山だったらマムシもいる。完全に安全ではない」


「うん」

「そうだな。やはり保護者の意見も大切だな」


「うん」

 しかし、まいちゃんは言った。


「でも、たかくんの言わんとしていることもわかるよ」

「わかられても、わかられても実際に遊ばせれるかは次元が違うだろ?」

「そうだね」


 そして、俺たちは十字路を渡った。ここも懐かしい塩野の人とはここで分かれてたんだっけな?


「ここで塩野の人と別れたんだよな?」

「そうね」

「山をぐるっと回るか?」

「いいよ」


「ワン!」

 突如、ボアが吠え、一気に前進した。

「あ、ちょっと待ってボア!」

 それに俺は一言。


「待て」

 ボアはすぐ立ち止まる、俺はソーセージを出す。ボアは直立不動の姿勢をとっていた。

 俺はゆっくりソーセージの封を切る。ちょっとボアが動く。

「待て」

 ボアはまたピタッと動かなくなった。そんなボアに俺は・・・・

「はい、お食べ」

ソーセージを突き出した。ボアはバクバク食べる。

「よしよしいい子だね」

 俺はそんなボアの頭をわしゃわしゃ撫でてやった。

それを見ていた俺はまいちゃんに笑いかけた。


「ボア、走りたくて仕方ないらしいな。小学校のグラウンドに行こう。ボアを走らせようか?」

「うん」


 それで目的を変え、十字路をそのまま突っ切って千種小学校にやってきた。

 俺たちはグラウンドに行くとボアの手綱を離す。


「ほら、ボア走り回っていいよ」

 しかし、まいちゃんの言葉に反応せず、俺の方を見ていた。「ボア、走っておいで」


「ワン!」

 そういうとボアは思いっきり走り回った。それを見た俺たちは苦笑する。


「もう、どっちが飼い主かわからないね」

「いやいや、ちゃんとしつけられたらまいちゃんだって懐くよ」

「ちゃんとしつけることができれば、ね」

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