海にて

 友達と一緒に海水浴に来た蘭子、シーズンなのに、あまり人がいない穴場。

ワンピース水着姿の蘭子は、プロポーションの良さも相まって、

一緒いる友達、女子しかいないのであるが、その姿に魅了されていた。

 

 みんなで準備体操を済ませ


「それじゃ、行きましょうか」


そう言うと彼女は、近くにある小高い丘へと上がって行く。

丘の高さはそんなになく、飛び込み絶好の場所であった。そして蘭子は、

これまた見事なフォームで、海に飛び込んだ。

 

 そして残りの女子たちも、海に飛び込もうとしたその時、爆発音とともに

大きな水柱が立った。


「え?」


この後も、海のあちこちで、爆発音とともに、水柱が立ち続けた。


「何……何が起きてるの?」


少女たちは、茫然として海を見ていた。


 そして、一際、大きな爆発と水柱が立ったと思うと、海は静かになった。


「あれ、木之瀬さんは?」


ここで、先に飛び込んだ蘭子を思い出し、何かあったのではとざわつくが、

直ぐに水面に、蘭子が姿を見せ


「皆さん、もう大丈夫ですわよ。」


何が、大丈夫なのかは、分からなかったが、さっきの事があった所為か

海に入るものはおらず、みんな、暫くの間、砂浜で遊んでいたが、

一人だけ、優雅に、尚且つ気持ちよさそうに泳ぐ蘭子に、触発されて

残りの少女たちも次々に、海に飛び込み泳ぎ始めた。


 この後は、浜辺でスイカ割りをしたり、持ち込んだ食材でバーベキューしたりして楽しく過ごし、すっかり水柱の事は忘れ、夕方帰る際、

ゴミをかたずけながら少女の一人が


(あれは、何だっただろ?)


と思ったくらい。


 この少女は、デジカメを所有し撮影係をしていたのだが、家に帰って、

写真を確認していると


「なにこれ……」


その声は震えていた。


 後日、放課後、


「これに入れておいてください」


と蘭子は、少女にUSBメモリーを渡した


「はい……」


少女は、気まずそうにする。


「それじゃあ、お願いしますね」


そう言って立ち去っていく蘭子、残された少女は


「はあ……」


ため息をついた。


「どうしたの?」


別の少女が声をかけてきた。この少女も蘭子と一緒に海に行ったのであるが


「それが、木之瀬さんから、海水浴の時の写真が欲しいって言われたんだけど」

「何か、問題あるの?」


そう言われると彼女はデジカメを取り出し、モニターに一枚の画像を映し出した。


「撮った時は、全然、気づかなかったんだけど……」

「なっ、何なのこれ!」

「あの爆発と関係があるのかな、それより、どうしようか?この写真」


 そこに写るのは、蘭子がきれいなフォームで海に飛び込む瞬間であったが

海には、青白い無数の手が写っていた。

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