第3話 人見知りですから

「ちょっと原田君、足首冷やすよ!」


マネージャーがキャプテン原田を捕まえた。「大丈夫」と言うが、マネージャーは引かない。

少しして、用具室に戻ってきた。根負けした原田はバケツに足を入れている。


山田先生「どうかね?このノート。森さん(マネージャー)」


森「こんなに細かい分析、頼んだってできるもんじゃないですよ。びっくりしてます。」


卓「す、すみません。僕の勝手な意見とかなんで、あってるか、あの、はい。」


落ち着け、落ち着け、そう言い聞かせながら特製ドリンクを1口飲む。


森「あっていると思ったから、急いでアイシングさせてます。ありがとうございます。」


森さんが、頭を下げる。


卓「お礼なんて…きょっ、恐縮です。」


山田先生「それで、渡辺さん。明日にでも選手達にアドバイスしていただきたい。そしてできれば練習メニューの指示もお願いしたい。私は顧問ですが、名前だけでして、お恥ずかしい。」


卓「はい。いや、いいえ、はい?え。いや、無理ですよ!しゃ、しゃべれません。」


やばい。あからさまにキョドってしまった。


森「私が全力でサポートします!チームとしてもっと強くなりたいんです。だから、私からもお願いします!」


こんな可愛い女子高生にお願いされて、断るなんて、男に生まれてきた以上…できない。


卓「つ、伝えるくらいなら。あの、すみません。僕には、不安しかないのですが…」


森「大丈夫!頑張りましょうね!」


やる気MAXの森さんに、その後僕は何も言えず…


こうして次の日。

体育館には、色白でタンクトップにに短パン、首にタオル、水筒斜め掛け。

どっからどーみても気持ち悪い男が、選手の前に立つ。


「渡辺 卓、29歳です!江川卓と同じスグルです。よろしくお願いします!(よし、練習通り言えた)」



「いつもの見学の人だよな。」

「何あの格好、キモ(笑)」

「スグル?って卓?おタクじゃん(笑)」


森「はい!まぁ言いたいことは置いといて、今のチームへのアドバイスをもらいたいと思います!」


「なんで、こんなやつに?」

「意味わからん。」

「早く練習しようぜ。」


そりゃそーだ。こんな、どこのどいつかもわからん奴の言うことなんて、聞きたい訳がない…帰ろうか。


森「お願いします!」


頭を下げながら、森さんは泣いていた。

やばい、こんなに可愛い子が泣いている。


卓「あ、あの!僕は話すのもうまくないし、気持ち悪いと思います!けど、森さんを泣かせないで下さい!ぼ、僕は、オタクです!マニアです!今はこのチームのマニアなんです!」




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